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アウトドア(体験)ツアーにおけるフロー理論(ラフティングにおけるフローの概念)

割引あり

この記事が「フロー理論 アウトドア」で検索すると一番上に来ているので、加筆訂正することにしました。アウトドアガイドやインストラクターはもちろん、街歩きガイドやアドベンチャーツアーのスルーガイド、アドベンチャーガイドの方々も、ツアーの楽しさの本質の一部がフローで成り立っていることを知っていただくと、今後のツアーにも大いに生きてくることと思います。


フロー理論に関連した講座、セミナー、アドバイスなど、最近高評価をいただいております。特に所属ガイド全員に対するフロー理論の講習によって、ツアーの価値が格段に向上するなど、「今までふわっとしていたことが、言語化されすっきり理解できるようになった。みなで「楽しさ」を言語化し、共有して、議論できるようになった」など、感想をたくさんいただいております。

お問い合わせは、noteのメッセージか、Facebook、Twitterでも大丈夫です。ご連絡はお気軽にどうぞ! yuji.kimura@ativityresearch.jp

フロー理論とは ~おさらい~

シカゴ大学の心理学部教授、故チクセントミハイさんが提唱した概念で、元々「フロー体験」と呼ばれています。ものすごく簡単に言えば、「ある特定の物事に意識が集中した結果、時間感覚が歪む」という事象で、人間の日常生活のあらゆる部分に見え隠れするのはもちろん、人間の幸福とは「フロー状態にあることだ」という人すらいます。

たとえば、スポーツ、室内体験(陶芸、アート、創作、料理)、友達とおしゃべりを楽しむこと、居酒屋で飲んだくれて上機嫌になること。どうですかね?時間があっという間に感じたことないですか?特に居酒屋とか、「あ、もうこんな時間だ」って思うこと、人生に何度かないでしょうか?

こういう状況に陥った人はほぼフロー状態にあると言えると思っています。つまり人間活動の様々な部分の満足度、楽しさ、充実感、達成感などは、フロー状態に人間が陥ったときに、体験している、と言い換えることができるのではないでしょうか?

あらゆるスポーツを行って、「すっきりする、達成感を得る、楽しかった、リフレッシュできた」という感情が発生するのは、ほぼフロー状態にあったことが要因だと思っています。もちろん、重要なのであえて言及しておきますが、フロー理論だけで全て成り立っているわけではなく、様々な要素が組み合わさってその感情が生まれるのはもちろんですが、その中核にはフロー理論があると思っています。(例えば、彼女とスポーツを楽しんで「楽しい」と思うのは、フロー状態にあったこと+彼女と思い出を作れたことである、など、複数の要因と結びつくと考えています。※とはいえ、「彼女と楽しい思い出を作れたこと」ということも、意識レベルで考えれば、気を使ったり、気を使われたり、常に意識する時間を過ごしたことであると置き換えれば、意識を占有していたことになるので、結局フロー状態であった、と言い換えられる気もします。)

チクセントミハイのフロー理論

フロー理論を示す図はいくつかあり、2チャネル、3チャネル、8チャネルと進化してきていますが、現在は下記の図をもとに説明されることがもっともオーソドックスです。

フローの概念

横軸を本人のスキルレベル、縦軸をアクティビティの挑戦レベルと規定したとき、本人のスキルレベルと挑戦レベルがちょうどよいバランスになったときに、人間は時間感覚を忘れてフローにはいる、とされています。

例えば、スキーで急斜面を滑るとき、初心者のスキルレベルは著しく低いので、横軸でいえば、左側になりますが、挑戦レベルは高いので、縦軸は上側になり、本人の心理状態は「不安」という領域になります。これはわりと理解されやすいのではないのでしょうか。

この考え方は初期の段階のフロー理論の説明なのですが、フィジカルツアーにおいては、今でも有効に説明できる内容だと思います。

ラフティングが楽しい のではない。

大事なのは、フロー状態はフロー状態単体で存在しているということで、「ラフティングが楽しい」とか「テニスが楽しい」など、「特定の物事だから楽しい」という構造では無い、ということです。これはまたどこかで詳しく話しますね。

ツアーの高付加価値化とか、高品質なツアーを探すとか、巷ではいろんな言葉が飛び交いますが、顧客目線で考えたときに、もし顧客が「楽しさやリフレッシュ」を第一に求めていた場合、フロー状態に顧客を入れられるツアーが「高付加価値なツアーであり、高品質なツアー」となります。

アウトドアガイド/インストラクターのスキルの本質

アウトドアガイドの仕事には様々あると思います。例えば、アウトドアガイドのうち山岳ガイドさんは、主にお客様が行きたい場所(急峻な岩場、高峰など)に安全に案内することが価値の中核という場合もあると思います。ラフティングやカヤックのガイドは、お客様にリフレッシュしてもらう、楽しんでもらうことが価値の中核の場合が多いと思います。(他にもシュノーケリングガイド、ダイビングガイド、パラグライダーの商業フライトなど様々あります)

どちらのガイドにせよ、最終的に求められる能力は、「顧客をフローにいれる技術」だとほぼ核心をしています。リフレッシュ系のツアーは言うまでもないですが、山岳ガイドも、「顧客が急峻な岩場を乗り越えるときにフロー状態に入るのをサポート」しているから、と考えています。

【著者個人の仮説】フロー状態という言葉を用いず、意識の占有がおきたという概念で考える ~アドベンチャーツーリズムやアドベンチャートラベル/外国人向けの街歩きガイドやインタープリテーション系ツアーに対する応用~

このフロー理論の核心部は、本人のスキルレベルや挑戦レベルといった表面的な話ではなく、その状況に陥った時に、脳内の意識がどうなるかに思い至る、というところだと思っています。フロー理論を語るとき、常に、スキルと難易度のマトリクスがでてきますが、このマトリクスがそもそもどういうことかを突き詰めて考えると、最終的に人間の意識をどうコントロールし、あるいはコントロールされているか、ということに行き着きます。この考え方が、この理論をインドアツアーやアドベンチャーツアー、街歩きツアー(ストーリー系ツアー)など、スポーツ以外にも応用が効く考え方にし、最終的に観光全体がフローで成り立っていると考える下地を作ってくれた考え方になります。

フロー理論とアクティビティの高付加価値化、楽しさや満足度の言語化についてはこちらのマガジンをご覧ください


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