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フロー理論から考える「ガイドに求められるスキル」の本質

ラフティングにおけるフロー理論の援用については、先日書いたとおり。で、ラフティングガイドに求められる究極のスキルについてちょっと考えたので、メモ。

顧客が楽しい/満足した/充実していたと感じる心理的な状態はフローで説明できる、ということは以前説明したとおり。お客様が「楽しさ」にお金を払っていると仮定するなら(逆説的に「楽しくない」ツアーにお金を払うとはなかなか考えにくい)、ガイドの役割はお客様をフロー状態にいれること、となる。

顧客がフローにはいるためには、そもそも顧客の過去の経験やスキル、怖さ(水への怖さ、高さへの怖さ)、チャレンジする気持ちやモチベーション、体調、など様々な条件を事前に把握しておく必要がある。結局フロー状態は個々人それぞれ違うものなので、画一的なツアーを提供するとフローに入りにくい顧客もいる(実際は難しいのは承知の上だけど、理論上は、フローは個々人別々に現れるということは根本的な考え方で、そこは変えられない。)
結局のところ、顧客のフローの状態を正しくコントロールできることがラフティングガイドに求められる能力なんだろうと思う。

・顧客ごとにフローの状態が違うからそれを把握すること
・そのフローの状態に合う難易度設定にすること
・(顧客が子供なら)子供のフロー状態の把握、そして親の最大の希望(子供が楽しんでいる姿を見たい、写真をとってほしい、成長してほしい)を正しく理解すること。

こういった、調整能力と引き出し、再現性、引き出しの多さが、アクティビティガイドの能力の本質的な部分であると思う。

それを実現するためには、川をただ下るだけではなく、どう下るかを常に考えて、その環境を作り出す操船技術が必要になる。そこにラフティングガイドのスキルが必要になる。そういう意味では、高等レベルのラフティングガイドに求められる能力は、実は極めて高い。1ボート8名の顧客それぞれにフロー状態を提供するというのは、かなり難しい。

顧客がフローの状態にはいるというのは、顧客自身は気がついておらず、概ね顧客の主たるニーズは、友達とリフレッシュしたい、仲良くなりたい、楽しく時間を過ごしたい、暑いから涼しみたい、などになる。

このニーズを叶え、かつフローの状態をコントロールできると、帰るときに「ああ、楽しかった」になる。

フローブロッカー(フロー阻害要因)として、経営側を含めガイドが顧客にフローに入ることを阻止する要因を除去する必要がある。
これもまた人によって、フローブロッカーの内容は違う。
トイレが絶対的にきれい、メイクが直せる、ドライヤーがある、ウェットが臭くない、など衛生的に「嫌!」ってならないことは女性にとっては重要なことなんだろうと思う。

フローはマーケティング的には、いわゆるSMOTに相当する。つまり、参加したあとに得る評価にダイレクトに影響するのが「フローに入ったかどうか」ということである。もちろん、ZMOTもFMOTもあるわけで、初めてラフティングに参加する顧客が参加する理由を見つけ、考え、提供することも重要。ただ同じ位重要なのは、やはり「SMOTからのZMOT」をどう形成するか、ということのように思う。「誰かのSMOTは誰かのZMOTになる」わけで、ここに「ルネ・ジラールの模倣の法則」も作用するように思う。

究極的には、上記に書いたことが、ぜーんぶわかっていて、実現できていると、「よいラフティング会社」ということができるのだと思う。


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