TORE理論とフロー理論の親和性についての考察 ~意識が専有されるために~
以前、TORE理論のEは、フロー状態ではないか、という記事を書いた。意外と多くの方から反応いただき、特にインタープリテーションをご専門にされている方からもその可能性について前向きな反応を頂いた。
このインタープリテーションにおけるTORE理論のEが、チクセントミハイのいう「フロー状態」を指すのではないか、という考え方を前提にして、なぜTORE理論とフロー理論の親和性が高いか、TOREからフロー状態にいれるには、どういう工夫が必要なのかについて明らかにしていきたい。
知的好奇心系フロー(街歩き、歴史・文化案内、自然案内)の発生要因
知的好奇心系フローと僕が勝手に命名した状態は、実は特定の事象を指すわけではない。実は(?)フローはフローであって、フィジカル系フローも知的好奇心系フローもそれぞれが区別されているわけではない。
体を動かすスポーツにせよ、脳内だけで完結する物事にせよ、脳内の思考や問題処理をどれくらい早く、どれくらいの強度で行うか、それによって、脳が他のことを考えられなくなるか、という考え方が中心にあるだけである。
知的好奇心系フローの場合、脳内で特定のものごとを考える強度を高くするには、まずそのことに対する興味関心、不思議に思う力、など、トリガーが必要になる(これは別途また考える)。そのうえで、その物事の説明を聞いたり、インタープリテーションを受ける中で、その物事の説明に使われている言葉を知っており、理解できていて、脳内の思考回路が回る前提条件を揃えていく必要がある(逆に言えば、極端に難しい語彙や理解しがたいインタープリテーションを受ければ、脳内で思考する前の段階でとまってしまう)。
そういった前提条件を揃えると、頭の中で、思考が行われ、思考の強度が高くなり、時間感覚を司る部分に意識がまわらない状態になって、フロー状態と言われる「時間があっというまに過ぎ去るって楽しいと感じる」状態が生まれる。
TORE理論とフロー理論の親和性
TORE理論は、良いツアーにはT(Themeがあり)、Tをよりよく理解できるようにO(Organaized)されていて、顧客の興味関心R(Relevant)関連性があり、E(Enjoyable)楽しい とされているインタープリテーション界で今人気のある考え方である。
なぜフロー理論とTORE理論の親和性が高いのか、というと、RとTとOという要素が顧客がフローにはいるために重要な要素と近似、類似しているからである。
つまり、顧客の興味関心がない(Rがない)とそもそもフロートリガーは発動しない。Rが揃っていて、フロートリガーが発動したとしても、TとOが難解すぎて、顧客の思考力や語彙力、知識力を超えていると、これもまた脳内で思考できないので、フロー状態にはならない。つまり、TOREは一連の条件として、フロー状態を引き起こすには非常に重要な要素、とも言えるわけだ。
TOREとフロー理論を組み合わせて、顧客のEを作る場合、なによりも大切なのは、まず顧客の興味関心Rを合わせること、そして肝心なのは、顧客の知識レベルや語彙レベル、興味度を測定することである。これがないと、顧客がどのレベルでフロー状態に入るのかわからないので、TとOを調整することが事前にはできなくなる。(もちろん当日調整をかけるわけだが、その精度は行き当たりばったりで運も含む不確かなものになる)
こういった考え方の先にあるのが、今僕が提唱している、トータルフローデザインという考え方で、ツアーに関する情報発信からツアー、ツアー終了後まで全体を顧客がフローにはいるためというただ1つの目的のために設計しなおす、という考え方である。これについてはまた次回まとめる。
※2024年10月8日追記
Youtubeにフロー理論とインタープリテーション、TORE理論との関連性についての動画をアップしておきました。もしよければ御覧ください。
フロー理論とアクティビティの高付加価値化、楽しさや満足度の言語化についてはこちらのマガジンをご覧ください
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