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競技用シューズのデザイン

はじめまして、UXデザイナーのKamataです。note初投稿でどぎまぎしてますが、少しでも興味を持って頂けましたら駄文お付き合い頂ければ幸いです。

生まれ変わったら何になりたい?

先日、三女の小学校の「10歳を祝う会」に参加しました。(以前は「1/2成人式」と呼ばれていたイベントですね。)
子どもたちが一人ひとり将来の夢を語るのですが、あーうちの子もこんなに成長したんだんだなぁ、と実感できる大好きなイベントです。
その中で三女は「美容師なりたい!」と叫んでいました。
最近は「助産師」や「ネイリスト」も良いかなぁーと話しており、手に職つける系なんだね〜と再確認。
で、お父さんは?と聞かれて、生まれ変わったら「プロ野球選手」か「医者」になりたいと答えた自分がなんか銭ゲバで恥ずかしく。。
でも仕事のやりがい的にはやっぱり「デザイナー」、天職なんですかね。
但しアイテムとしては競技用シューズやウェアのデザインをしてみたい!と夢みてます。

競技用シューズに興味を持ったきっかけ

中学3年の次女が陸上部で中距離種目を始めたのがきっかけなんですが、もともと人間工学とか身体とデザインの関係性に興味があって、アスリートの能力を極限まで引き出すデザインとか面白そうだなーと。
また、陸上素人の私の中で陸上競技といえば短距離種目(100m)またはフルマラソンのイメージでしたが、昨年の東京オリンピックで田中希美選手が1,500mで日本人として初めて決勝進出・8位入賞を果たして注目が集まりましたね〜。
メディアを通して垣間見る田中希美選手の人柄も素晴らしく、中距離種目を志す子どもたちに夢を与えてくれているなぁ、と感心しています。。
ちょっと前置きが長くなりましたが、陸上初心者の私が子どもの中距離用シューズを独断と偏見込み込みで、、デザインレビューしてみる企画になります!

中距離種目について

800m、1,500mを中距離種目、3,000m以上を長距離種目と言い、次女は中距離を専門としています。(駅伝大会などでは3,000m走ることもあります。)
娘のシューズですが、練習用、800m用、1,500m用を使い分けています。
私は学生時代野球部で、アップシューズ、練習用スパイク、試合用スパイクと分けていましたし、グローブもポジションによって使い分けるので、ある程度は理解できるものの、800mと1,500mというわずか700mの差でシューズを使い分けるのは驚きでした。

競技用スパイク

今回レビューする800m用シューズは、ASICS「COSMORACER MD」という400m〜1,500mをターゲットにした競技用スパイクです。
1,500mも使用範囲ですが、後述する高反発機能が1,500mの長さだと筋力的にキツいということで、1,500m用は屈曲性やクッション性がありロードレースなどにも使える汎用性が高いシューズを使っています。
「COSMORACER MD」を触ってみた第一印象は「とにかく軽い」「裏面がごつい」といった感じでした。

アッパー

upper

鮮やかなブルーのアッパーは見た目ゴワゴワしてる印象ですが、触れてみるととても柔らかでサラッとした感触でした。
ASICSと東レが共同開発した「HL-0メッシュ」というポリエステル素材で、ポリエステル繊維に弾力性の高い繊維を織り込むことで、軽量でありながら高いフィット感が得られるとのこと。
伸縮性があるわけではないですが、靴紐で締めればピタッとフィットしそうです。ちなみに「HL-0メッシュ」はスプリントスーツ・ウェアにも採用されているそうです。
また、足の甲部分には「DYNAWRAP」という靴紐のループ兼バンドが搭載されており、靴紐をしめることでバンドが足の甲をガッチリホールドする構造になっています。こちらはASICSのテニスシューズなどにも採用されているのでASICS独自機能なのかもしれません。
また靴紐(シューレース)は「パワーホールドシューレース」を採用、紐の部位によって圧縮率を変えているのが特徴です。
足の甲を通る部分は高圧縮なので細く通しやすく強く締まる、蝶々結びをする部分は編み上げが緩いので紐同士が結び合いやすく解けにくくなっています。

アウトソール

outsole

全面の凹凸テクスチャとビビッドオレンジが相まってごつい印象のアウトソールですが、高反発の樹脂製プレートが採用された高機能部材になります。
踏み込んだ際のパワーを高反発プレートが弾き返すので、アスリートの前方への推進力を最大化します。
屈曲部が非常に硬いので、素人がこのスパイクで走ったら肉離れでも起こしてしまいそうな印象がありますが、普段からトレーニングを重ねているアスリートだからこそ使いこなせるのだと想像しています。
前方から後方に流れ立つリブは、軽量化と高強度を実現する意味合いがありますが、前方は少し低めで屈曲性を与え、中央は高めで剛性を与えるなど、部位によって求められる機能を果たすために微細なデザイン変化を与えています。
また、全面に施されているハニカム構造(六角形の充填構造)は、航空機の翼などにも採用される構造体で、軽量化・薄型化と高強度を両立するものです。
スパイクピンは短め5mmを装着。
一般的に中長距離は7〜8mmのピンを使うようですが、長めのピンはタータン(ゴム製競技場トラック)を凹ませてその反発力を利用できる一方、筋力がないと食い込ませることができないので逆効果とのアドバイスがあり、短めのピンを使用しています。

ミッドソール

midsole

アウトソールと同系色なので分かりにくいですが、アウトソールとアッパーの間にあるミッドソールは指で押すと適度な反発力があるクッション性素材です。
「FLYTEFOAM」という機能性素材ですが、クッション性・耐久性・軽量化という相反する要素を満たすために日々素材研究・開発をした結果生み出されたそうです。
一般的なシューズやサンダルのソールに使われるEVA素材に対して高機能化を図るために、EVAとは異なるポリマーにファイバー(繊維)を添加することでEVAと比べて約55%の軽量化を実現すると共に、ファイバーの機能特性によって耐久性とクッション性も実現したとのこと。
素材開発者のこだわりを感じますね〜。

デザインレビューの所感

競技用シューズのデザインを深堀してみて、
1. 質実剛健で実直なデザイン
2. 素材開発=デザイン
3. デザインの細部全てに機能的な意味がある
ことを実感・再確認しました〜。
興味本位で調べ始めた競技用シューズのデザインですが、知れば知るほど奥が深い!
おそらくデザインの現場では、素材開発と先行デザイン開発が並行して行われており、動作解析や運動解析を繰り返しながらPDCAを回していると想像します。
また、アスリートの身体能力も日々進化しているので、バイオメカニクスやエルゴノミクス、医療分野の情報をキャッチアップしながら研究・開発を進めていることと想像します。
そんなアスリート(ユーザー)ファーストなデザイン開発によって生まれるプロダクトなので、「質実剛健で実直なデザイン」に見えるのかな〜、と考えたりしています。

#プロダクトデザイン #デザインレビュー #陸上競技 #陸上中距離


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