見出し画像

うつ病のおばあちゃんと息子さんの涙の食事介助

特別養護老人ホームで、働いていた時に、泣きながら食事介助をしている人がいた。

食事介助をされていたのは、うつ病も発症していたせいか、食べることも辛い様子で、たまに、口の中に溜め込んだり、口を開けなかったりして、半分ご飯を食べてくれたらいいほうで、食事介助の難易度はちょっと高めのおばあちゃん。八重さん(仮名)だ。

そして、いつも顔は悲しそうにしている。
何かにつけて「もう、やめてください!」が口癖だ。

そんな八重さんに、面会に来ていた息子さんが、その日だけ一生懸命、食事介助もしてくれた。
泣きながら、食事介助をしてくれたのは息子さんだった。

息子さんの印象は、面会でもスーツを着ていて、真面目そうで会社役員でもしていそうな、そんな雰囲気だった。
顔は、親子だから、八重さんそっくりだった。

息子さんが、食事介助をしてくれるから、八重さんは喜ぶかなと思いきや、そうでもなかった((+_+))

職員が食事介助をするのと、同じ感じで、半分ほど食べて食べたくなくなると、「もう、やめてください!」と叫ぶ。
その時も、息子さんが食事介助をしてくれたのに、八重さんは「もう、やめてください」と叫んでいた。

もちろん、息子さんは八重さんに無理やり食べさせてたわけではない。
ただ、食の細いお母さんを目の当たりにして、悲しそうな顔で食事介助をしていた。

そして、「もう、やめてください。」と叫んだ時に、
「情けない」とつぶやきながら、泣いた。

八重さんと息子さんの涙の食事介助。
きっと、食事介助をしながら、息子さんの頭の中では、たくさんの元気だったお母さんの思い出がグルグルと回っていたのかな・・・なんて勝手に思った。
でも、目の前にいるのは、そうじゃないお母さん。


辛くて人目をはばからずに、泣いていた。
この辛さは、きっとその息子さんにしか分からない気持ち。
だれも、簡単には励ましの言葉がかけられなかった。

その時に、そばに奥さんらしき人がいて、息子さんの背中をさすってくれたのが、せめてもの救いだった。

ある程度、食事介助が終わると、息子さんは、丁寧に下膳までしてくれて、職員に深々と頭をさげて、「母をよろしくお願いいたします。大変な母を介護してくださって、本当に、いつもありがとうございます。」と言って、施設をあとにした。

八重さんに、「息子さん、立派な息子さんだね!」と誰かがそう言った。
でも、八重さんは、食事で疲れたのか、ぼんやりとしていて、「そうですか・・・」と、職員の声が届いていない様子で残念だった( ;∀;)

元気な親の姿が病気になって弱っていく姿を目の当たりにするのは、本当に辛い。
そして、いつやってくるのかわからない命のタイムリミットとも向き合う。
親御さんが、年を取って、病気になり介護が必要になると、必ず子供さんがぶち当たる壁。

私も、順番通りに行けば、必ずいつかぶち当たる壁。
やっぱり、病気になると、一番辛いのは、ご飯がちゃんと食べられないこと。

ご飯は、命の源。
私も、自分の親が、ご飯を食べられなくなると、この息子さんのように、「なんで・・・食べてくれないの?」と泣いてしまうかもしれない。

八重さんと息子さんの涙の食事介助を見て、自分もいつか通る道かなと思った。
介護は、自分がいつか通る道を、他人を通して見てしまう。
この時の食事介助も、そんな一コマだった。

ただ、いまは、コロナで多くの介護施設が、面会も難しくなってる。

コロナで、家族様も面会に来られない日々。
また、当たり前のように、施設に気軽に家族様が、面会にこれる日が、早くくるといいな。

お年寄りは、いつどうなるか、分からない。
だからこそ、早くコロナが終わって、前みたいに親御さんと子供さんが自由に面会できる日が早く来てほしい。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?