老後の会話は、認定調査の結果報告
10年前に、訪問介護の仕事で、掃除の生活援助で、訪問したおばあちゃんの家の話。そのおばあちゃんは、要支援2の人だった。
その前に、要支援の人とは、どんな状態かと言うと
・要支援1とは?
日常生活は、一人で生活出来るけど、部分的に介助が必要な人。
家事も、基本一人で出来るけど、部分的な見守りや手助けが必要となってくる。
トイレ・食事は一人で出来る。
・要支援2
日常生活は、一人で生活出来るけど、全体的に介助が必要な人。
家事は、全体的に見守り・手助けが必要となってくる人。
トイレ・食事は一人で出来る。
65才過ぎると、介護認定を受けることができる。
膝が痛くて、家事をするのも大変な人は、介護申請をして、要支援をもらえると、ホームヘルパーさんに来てもらって、お掃除や家事をお願いすることができる。
要支援のおばあちゃんは、すらっとした細身のおばあちゃん。髪の毛は、ショートヘアーで大泉洋のような、天然パーマがかったヘアースタイル。
いつだれが来ても、恥ずかしくないように、きちんとお化粧されていて、丁寧にヘルパーを迎えてくれる上品なおばあちゃんだった。
このおばあちゃんの悩みは、膝の痛みだった。
掃除が辛いから、ヘルパーさんが来てくれて、掃除を手伝ってくれると、助かる。
特に、お風呂の掃除は、立ったりしゃがんだりするから、最近辛いということで、訪問介護を使っていた。
ある日、そのおばあちゃんの家に訪問した時、私を迎えた後に、「ちょっと、電話してくるね」と言って、電話のある部屋へ姿を消した。
「私は、要支援1だったの!あなたは、えっ、要介護1!大変ね。
あと、私、最近膝が痛くて、歩いたりが本当に大変で・・・あなたは?
えっ!歩行器!もっと、大変ね」と、が、友達の家に電話して、お互いの介護認定の結果を報告しあって、体の不調を伝え合うという井戸端会議をしていたのが、衝撃的だった。
そして、電話越しのおばあちゃんは、私の方が介護認定が上で、歩くのも大変と健康自慢ではなく、体の辛さを嘆く逆マウントをしている様子だった。
特に、盗み聞きをするつもりは、一切なかったが、大きな声で楽しく話していたので、勝手に私の耳がおばあちゃんの話をキャッチしていった。
その会話を聞いたときは、28才の時だった。いま、42才なので、14年前の話。
その頃の、私が友達と話す話題は、
「恋人できた?」「私、まだ・・・」「えぇ~早く作りなよ~恋愛はいいよ」
「今度、結婚するの!」「いいな~私も早く結婚したいなぁ」「そうだよ!私たち、もうすぐ30になるんだから、あなたも焦らないと」
「子供ができた!育児が大変で~うちの子、いい子過ぎて心配なの」
そんな話で、盛り上がる。
当時は、マウントという言葉はなく、純粋に相手の話を延々と聞いていたけど、振り返るとあれってマウントだったなぁと気づく。
最近は、自慢と言うマウントの山を、「うん、うん」と聞き続けていたら、どこまで、この人は登っていくんだろうという興味がわいて「それで?それで?」
と聞くことが多い。
そういう風に、他人と会話すると、腹も立たずに楽しいなぁと気づいた。
年を取ると、結婚・子育ても終わって会話のネタは、
要支援?要介護?で、盛り上がる。
あと、体のあそこが痛い!こんな持病がある!という話に変わってくるんだなと、衝撃的だった。
そして、つい、最近昼下がりに、イオンのフードコートへ行くと、
4人のご老人の女子会で盛り上がっていた。
これまた、声が大きいので、会話の内容が勝手に耳に入ってきた。
内容は、介護認定の結果と、体の辛い話だった。
一瞬、なんか、この光景、前にも、見たなぁ~と思いながら、要支援2のおばあちゃんの電話の井戸端会議を思い出す。
年を取ると、みんな逆マウントをする傾向にあるらしい。
内容は、介護認定の結果と、体のあそこが痛い・夜寝られないとか、で
明るい話題でもないけど、楽しそうに盛り上がっているご老人の女子会は、楽しそうで、人付き合いが苦手な私は、少し羨ましいなぁ、なんて思った。
きっと、そんな中には、マウントや自虐に見せた自慢話もあるけど、寝たきりになって、人と関わることが減ると、そんな日々も懐かしくなるのかな・・・
あの人は、マウントをとって、嫌な人だったけど、そう思いながら、人と普通に話できたあの頃が懐かしく思ったりするのかなと思う。
介護の仕事をしていると、おじいちゃん・おばあちゃんを見ると、未来の自分もこうなるのかな~と、よくも悪くもそう思う。
介護認定して、結果が出たら友達と言いあうんだろうなぁとも思う。
30年後、私は何して、誰といるんだろう。
ものすごく幸せじゃなくてもいいけど、不幸でもなく、ただ穏やかに、このおばあちゃんたちみたいに、介護認定の調査結果や、体の辛いを楽しくわいわい言い合ってたら、いいなぁと思う。
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