Fool’s journey①

0愚者

正位置
はじまり 自然体 開放的 一見愚かに見える
純粋 視野を広げる 心配しない 流れのままに生きる

逆位置
衝動性 非常識 遠ざかる 型にはまる
思いがけないアクシデント 従う ひねくれる 終わり


若者はひとり、崖に立っていた。
目の前には広がる絶景、しかし足元は絶壁。
若者はそこで手を広げ、陽の光を浴びていた。
「ああ、なんて心地がいいんだろう!」
若者は太陽の方を向き、吠える犬に目もくれずに進む。
背後の犬が「危ないよ!」と吠えても、彼は気付きもしない。

天にまでそびえたつ山々と
晴わたる空に赤々と燃え盛る太陽。
どこまでも続く流れる大河。
その自然のすべてが、若者を包んでいた。

自然を感じながらふと、若者は考えた。
「なんだろう。胸のあたりがあったかい」
若者は、「心で感じる」ことを知らなかった。
「なぜこのあったかいものがあるんだろう」
若者は、「感情」は知っていても「心」を知らなかった。
「僕は、いつからここにいたんだろう」
若者は、「この場所にいること」すら気づかなかった。
「知らないことがいっぱいだ」

しばらく考えていると、そばにいる犬がわんわんと吠えた。
鳴き声に気づいた若者は、改めてこの大自然を見渡した。
そして若者は決意した。
「僕は、いろんなことを知りたい。いろんなものをみたい。」
若者は、旅に出る決心をした。
「『みえるもの全部』を、この目でみるんだ!」

少しの荷物を背負って、若者は歩き出した。
進む場所は、絶壁の先。
背後で犬が吠えても、若者はもう、気にしない。
ひときわ大きな声で犬が吠えた時、若者の右足は宙に浮いていた。

こうして若者ーーー『愚者』の旅物語が幕を開けた。

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