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読書感想文『お手紙』

子どもの小学校の国語の教科書に載っている『お手紙』という話が、私は大好きだ。
私が小学生だった頃の教科書にも載っていたのだから、絵本としては古典の部類に入るのかもしれない。
それでも、キャラクター、語り口、ストーリー、全てが今読んでも可愛らしくて暖かい気持ちになる。

低学年の単元に入るだけあってお話はとても短い。
今までお手紙を誰からももらったことがないがまがえるくんのために、かえるくんがお手紙を書く。
ストーリーは以上だ。

人間はいつ死ぬのだろうか。

唐突にすごいことを聞いたけれど、『お手紙』を読むと私はそれについてよく考える。
漫画『ONE PIECE』の中では、人が死ぬのは身体を弾丸で撃ち抜かれた時でも心臓が止まった時でもなく、「人に忘れられた時」だという。
肉体が死んだとしても、誰かが思い出してくれる限り、その人の心の中で人は生き続ける。

誰かにお手紙を書く時、人はその誰かのことを思う。
今まで誰からもお手紙をもらったことがないがまくんは、自分が生きている実感を感じられなかったのではないだろうか。

この単元を今勉強している息子に私はひとつ質問をした。

「お話の中でがまくんは、かえるくんがお手紙を書いたと聞いてから、とても幸せそうになったね。まだお手紙は受け取っていないのにどうして幸せな気分になったのかな?」

私は、がまくんが本当に欲しかったのはお手紙ではなく、誰かが自分のことを思ってくれていること。ひいては生きている実感なんだと思う。
かえるくんの気持ちを受け取って、たった1人でも自分のことを大切に思ってくれる人がいること、かえるくんの心の中に自分が生きていることを感じて、とても温かいしあわせな気持ちになったのではないか。

大人になって自分の承認欲求を認めたり、社会の中で生きる自分を感じたりするようになったからこそ、『お手紙』のがまくんの不幸せな気持ちや幸福感が刺さる。

子どもの頃に見たり読んだりしたものを大人になってから読み返すと、あの時気付かなかった違った発見ができて面白い。
子どもに読み聞かせ、自分のためにも続けていこうと思う。

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