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ゆいにしおの『mid-20s的生活』- #2 mid-20sとパーソナルカラー診断 -

性格診断・相性診断・姓名判断。
「診断」はどの時代にも存在し続けている。

今mid-20sにホットな診断もいくつかある。
骨格診断・顔タイプ診断・MBTI診断、などなど。

今回はその中でも「パーソナルカラー診断」とmid-20sについて紹介したい。




パーソナルカラー診断は、ここ数年でめちゃくちゃ浸透している。

先日、筋トレが好きな職場の先輩に「パーソナル行ってきたんですよ〜(パーソナルトレーニングをしてくれるジムに行ってきたつもりで)」と話した。
すると先輩は「え!イエベ春?ブルベ夏?(パーソナルカラー診断だと思っている)」と答え、私たちは規模の小すぎるアンジャッシュをやってしまったことがあった。
それほど診断は浸透しているのだ。

そんなパーソナルカラー診断を、女友達4人で受けに行くことになった。最初は「似合う色がわかれば便利だな〜」くらいの軽い気持ちで。
ところが、パーソナルカラー診断は、女たちを狂わせることになるのだった。

「パーソナルカラー診断」は、顔の近くにいろんな色の布をあてて、ペラペラとめくるよく見る方法で行われた。「アンタに似合う色は赤!」という単純な話でもなく、ただの赤にも濃淡や彩度の違いでさまざまな色があり、自分に似合う赤を探してくれる。

パーソナルカラー診断を女友達と受けるのは楽しいし、やりがいがあった。自分だけだと、診断をする先生に「この色だと肌がくすむわね〜」と言われても、「そうですね(本当か?)」としか言えない。でも、長年の友達がいたおかげで「先生はこう言ってはいるけどこの色似合ってるよ!」とか「これはマジで似合ってない」とガンガン野次を飛ばしてくれるのがありがたかった。

ペラペラと布をめくられ、あらゆる野次を受け、私のパーソナルカラーはイエベ春だということが判明した。友人たちもそれぞれのパーソナルカラーが判明した。
その場では、「私は絶対ブルベ夏だと思ってたのに〜!」「アットコスメ行ってアイシャドウ全部買い替えよ〜!」と賑わった。
そして、自分自身のパーソナルカラーを受け入れてからというもの、私たちは静かに狂っていった。

日を跨いでパーソナルカラー診断を受けた友人と会った時、「恋人変わったんかな」というほど服やメイクが変化していた。
全身をブラックコーデで固めてスタイリッシュな印象の友人は、イエベ春と診断されてから、淡色の服を着て、淡色のメイクをするようになった。めちゃくちゃ淡色女子になっていた。

私は私で、明らかに顔をくすませたネイビーや濃いグレーの服はほぼ売り払ったり処分したりしてしまったのである。その服たちを毎日のように愛用していたのに。
パーソナルカラーを一緒に受けた友人と双子コーデをするときにも、「あ、これ私が事故る色だからそっちと交換してほし〜」などと相手の希望も考えず言ってしまうようになった。
出会って数時間しか経たない人からの診断で、今までのアイデンティティは崩壊し、色に狂った。

だけど、こんなふうに何度もアイデンティティを崩壊させられ、「狂う」時期を通ってきたmid-20sも多いのではないだろうか。
好きな人の好きそうな服が好きになれないけれど、どうにか袖を通したとき。就活スーツを着てみんなと同じ服装になり、自分のスタイルの悪さに絶望するとき。好きじゃない服を着て望まない好意を向けられるよりは、好きな服を着て好きな人たちといるのがいいはずなのに、どこかで血迷って万人受けになろうとしてしまうとき。

こういう道を通って、自分に似合うものと似合わないものを見極め、似合わないけれど身につけるとテンションが上がるものを大事にし、何度も何度も鎧や武器を選び直してきた。
mid-20sになっても、まだまだ進化できる余地があるとは思ってもみなかった。
というわけで、パーソナルカラー診断を受けた私たちの「狂い」も、人生に必要なものなのでした。

診断を愛し、診断に呪われ、診断と生きていく。
それもmid-20sの生き様でしょう。

※OKMusicで連載していたものに、一部修正・加筆を加えています。

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