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【10話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

唯ちゃんと梨紗ちゃんは、近所のお店の鯛焼きが、小さい頃から大好きです。高校生になっても、このお店の鯛焼きは、生地も美味しくあんこが尻尾まで入っていて最高のようで、時々小腹が空いたときに買っていました。
今回は、その鯛焼きに関する、どうでもいいような話です。

鯛焼き

「梨紗ちゃーん 唯・だ・よ・・・」
「唯 いらっしゃい」
「あーー 梨紗ちゃん 手に持っているの なあに」
「これ 見て分らない」
「た 鯛焼きだけど・・それどこの」
「そんなの決まってるでしょ」
「き 近所のだけど・・で それどうするの」
「食べるに決まってるわよ」
「梨紗ちゃんが」
「そうよ」

「それって 熱々 美味しい」
「熱々よ 熱々が美味しいって しってるでしょう」
「知ってるけど・・あー 梨紗ちゃん そこの袋に入ってるのは なあに」
「鯛焼きよ」
「もしかして 梨紗ちゃんが食べるの」
「そうよ 何か問題でも」
「だって梨紗ちゃん いつも1つしか食べないよ」
「いいじゃない たまに2つ食べても」
「でもそれ 熱々じゃなくなっちゃうよ 冷めちゃうよ」
「そこのは 冷めても冷やしても美味しいって 知ってるでしょう」
「し 知ってるけど・・そういえば唯も 少しお腹が空いてきたなあ」
「じゃあ 下でママにおやつでも貰ってきたら」
「そーだなー 唯も鯛焼きがいいかなー」

「じゃあ 買ってくれば すぐそこなんだし」
「それはそうなんだけど チョット問題があるんだよ」
「何が問題なのよ」
「唯 今月お小遣いがピンチなんだよ」
「鯛焼きぐらい買えるでしょう」
「それがね 梨紗ちゃん 買えないんだよ もーないんだよ」
「そんなの知らないわよ 無駄遣いするからよ どうせまた エッチなこと書いてある情報誌二冊も買ったんでしょ 一冊にしなさいって 私言ったわよね」
「そんなエッチなことばっかり書いてないよ ファッションとか ガジェットとか デートコースとか 気の利いたお店とか そんなんだよ」
「じゃあ エッチなところは読まないのね」
「それは読むよ 穴が空くほど 読まないと勿体ないじゃない」
「まあ いいわよ どっちにしても お小遣い無いんだったら 買えないんだから」

「り 梨紗ちゃん お願いだよ 梨紗ちゃーん お願いだよ 唯に もう一つの鯛焼き譲って欲しいんだよー 鯛焼きが食べたくて食べたくて どうしようもないんだよー お願いだよ梨紗ちゃーん」
「しょうがないわね 唯 はい 鯛焼きよ」
「梨紗ちゃん いいの 梨紗ちゃんの鯛焼き貰えるの」
「唯 必死なんだもの 食べなさいよ 少し冷めてるけど」
「いいよ いいよ 冷めてても美味しいから それで十分だよ いただきますだよ」

「唯 美味しい」
「美味しいよ 梨紗ちゃん 美味しいよ 美味しいよ・・・」
「ゆ 唯 美味しそうに嬉しそうに食べるのはいいけど 何も泣かなくても・・・これ本当は唯の分なのよ 唯の分も買ってきたのよ チョットからかってみただけなのよ 素直に渡せばよかったわね 唯 ごめんなさいね」
「いいんだよ いいんだよ 梨紗ちゃん 食べれるだけで十分だよ ありがとうだよ 梨紗ちゃん」
「だから唯 何も泣かなくても 笑顔でよく泣けるわね もう 唯ったら本当に可愛いんだから 唯 見てると本当に飽きないわね またそうしようかしら」

梨紗ちゃんも、たまには唯ちゃんを、からかうことがあったようです。
唯ちゃんは、結局食べれたにしても、からかわれたことを、気にもしてなくて、少しも怒ることなく、少しもすねることなく、「いいんだよ」、「ありがとう」、と言うくらいですから、心が純粋なんだと思いますねえ。
それは梨紗ちゃんだから、と言うわけでは、なさそうです。
唯ちゃんが、怒ったり、声を荒げたりすることなんて、あるのでしょうか。
その様な話は、聞いたことがありません、また想像もできません。

どうでしたでしょうか。
どうでもいいような話と言いましたけど、どうでもいい中に、唯ちゃんの人柄が垣間見えた話でした。

では、また次回に、お会いしましょう。

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