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【23話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

今回は、唯未さんと梨乃さんの、想いで話です。
幼馴染みの、唯未さんと梨乃さん、孫どころか、曾孫にまで恵まれました。

生涯幼馴染みの、唯未さんと梨乃さん

ある日、唯未さんと梨乃さんは、東雲家で一緒に暮らし始めました。
唯ちゃんと梨紗ちゃんは、職場はそれぞれ退職及び退官しました。
芽唯ちゃんと梨奈ちゃんは、職場で第一線で活躍しています。
芽美ちゃんと梨華ちゃんは、希望の大学に合格しました。

その様なこともあってか、今は唯未さんが一人+α?で暮らしている、東雲家で、幼馴染みと静かにのんびりと、暮らすことにしたそうです。
唯未さんと梨乃さんは、もう90歳を越え、それでもボケることもなく、身体も年相応に健康で、足腰も比較的しっかりして、誰の補助も必要とせず、生活はできたそうです。

そして、毎日、想いで話をしながら、仲良く楽しく暮らしていました。

ある日の日曜日の午後、春の暖かい日差しの入る縁側で、二人は想いで話を楽しみました。

春の日差しの中で

「縁側暖かいよ おざぶ敷いたから、こっちに来るんだよ 梨乃」
「あら 唯未にしては気の利いたことするわね」
「たまにはね」
「じゃあ 私はお茶とお菓子を用意するわよ」
「お願いだよ」

唯未さんと梨乃さんの言い回しは、唯ちゃんと梨紗ちゃんと、よく似ていますが、それは逆で、唯ちゃんと梨紗ちゃんの言い回しが、唯未さんと梨乃さんに似ているのです。当り前のことですけど。

「唯未 二人とも意外と長く生きて来られたわね」
「本当だね 梨乃 曾孫まで見られるとは 思わなかったよ」
「そうね その芽美ちゃんも梨華ちゃんも もう大学生よ」
「そうだね 鷹崎家も 小鳥遊家も安泰だね」
「何言ってるのよ 東雲家だって そうでしょう」
「そっか そっか そうだった 芽唯ちゃんには感謝しかないよ」

「芽唯ちゃんって 本当にいい子ね 頼もしいわね」
「ほんとだよ 今は芽唯ちゃん中心に みんな協力してるね ほんとに凄い孫だよ でも・・・・」
「でも どうしたのよ」
「芽唯ちゃんを産んだのは唯だから 唯が一番凄いのかなーって」
「それを言うんだったら 唯ちゃんより もっと凄い人がいるわよ」
「ん・・・誰だろ・・・遙君?」
「遙君は種まいただけよ」
「アハハ じゃあ 誰だろ・・・・?」
「もう 唯未よ 唯未」
「わっ わたし・・・どうしてなの」
「だって その唯ちゃんを産んだのは唯未でしょう 生きている人の中では 唯未が一番凄いのよ」
「そっ そうかなー でも 梨乃がそう言ってくれるんだったら 嬉しいよ 梨乃がそう思ってくれるだけで十分だよ」 

唯ちゃんと梨紗ちゃんへの想い

「唯は 梨紗ちゃんの お役に立った 梨乃」
「もう 唯未は相変わらず 唯ちゃんのこと そんな風に言うんだから・・・役に立って頂いたわよ 本当に もう十二分によ」
「そっか それならいいんだよ 安心したよ」
「唯ちゃんいなかったら 今の梨紗はないわよ 赤ちゃんの時 ほんと弱かったから まともに育ったかどうかも」
「私はね 前から思っていたんだよ 梨紗ちゃんが産まれるから 唯が産まれたんだって 唯は梨紗ちゃんの生きる糧になるためにって だから
唯は・・・梨紗ちゃんを・・だよ」

「私は 違うように思っているわよ 唯ちゃんが産まれるから 梨紗が産まれて来られたんだって 助けてくれる唯ちゃんがいるからよ きっと唯ちゃんは神様に託されたのよ 梨紗のことを」
「そんないいもんじゃないよ 唯は」
「そんなことないわよ 二人とも赤ちゃんの時から育ててきたんだから 分るわよ でなければ 唯ちゃんの梨紗への行動が説明できないのよ 特に赤ちゃんの時の」

「今でも唯のこと 可愛い」
「当り前よ 唯ちゃんが幾つになっても 可愛いわよ 赤ちゃんの頃から変わらないわよ」
「そっか 唯のこと すーーごく可愛がってくれてたね ありがとうだよ」
「娘なんだから当然よ 唯未はどうなのよ 梨紗のこと」
「梨乃と一緒だよ 梨紗ちゃんのことは ずーーーーっと可愛いよ」
「こちらこそ ありがとうよ 梨紗は唯未には 色んなこと気軽に話せていたから 唯未と話した後 いつもスッキリした顔してたのよ 梨紗って精神的にそう強くないのに 頑張りすぎるから ほんとに助かっていたのよ」
「そーお 私はそんなこと気にせず 話していただけだよ」
「唯未も 唯ちゃんも 梨紗の心の休息の場だったのよ 私だって唯未には力を貰っていたのよ」
「それは 買い被りすぎだよ 梨乃」

これからのこと

「唯未 これからどうしたい 何かしたいこと ある」
「もうないよ もう十分生きたよ 寿命まで のんびりだよ 梨乃は」
「私も そうよ 芽唯ちゃん 梨奈ちゃん 芽美ちゃん 梨華ちゃん 
がいるから もう何も心配もないわ 変に迷惑かけないように 静かに生きたいわよ」

「チョット疲れたなー ポカポカ気持ちいいから 少し眠くなって来たよ」
「私もよ 唯未 肩借りていい 頭乗せさせてよ」
「どうぞだよ 貸した肩 もう返さなくていいよ」
「唯未ったら そんな冗談 相変わらずね」
「じゃあ 私は 肩に乗ってる 梨乃の頭借りるね 頭乗っけるよ」
「いいわよ 貸した頭 もう返さなくていいわよ」

「眠いね」
「そうね 少し寝ましょう このまま」
「そうだね もう動くの 面倒くさいから」
「じゃあ このまま」
「そうだね このまま」
「唯未 ありがとう」
「ありがとうだよ 梨乃」
「唯未・・・・」
「梨乃・・・・」

唯未さんと梨乃さんは、気持ちよさそうに、春の暖かい日差しの中で、眠ってしまいました。
両手を繋いで、嬉しそうに笑みを零して、そして永遠に。

その年老いた身体から、唯未さんと梨乃さんは、手を繋いで嬉しそうに、ゆっくりと空へと昇っていきました。
二人の姿は、年老いた姿ではなく、唯ちゃんと梨紗ちゃんが、まだ赤ちゃんだった頃の姿でした。

ママのような幼馴染み

唯ちゃんと梨紗ちゃんは、ママ達とお茶でもと思って、東雲家に来ました。
二人は、唯未さんと梨乃さんが縁側にいるのを見つけ、声をかけましたが、ただ二人が寄り添って、手を繋いで、笑みを零しているだけでした。

唯ちゃんと梨紗ちゃんは、全てを察しました。
その時、悲しみはなく、その姿を嬉しく、また羨ましく思ったそうです。

「ママ よかったね」
「よかったんだよ ママ」
「唯未ママ 今まで ありがとう」
「ありがとうだよ 梨乃ママ」

と、お互いにママに、優しくお礼を言ったのです。

「唯 私達も ママ達のように なれるかしら」
「ママ達のように なりたいんだよ 梨紗ちゃん」

唯未さんと梨乃さんは、生涯仲の良い幼馴染みでした。
同年同月同日に産まれ、そして、同時に生涯を終えたのでした。

唯未さんと梨乃さんは、亡くなりましたが、これは想いで話です。
二人に関わる想いで話は、これからも続きます。

では、また次回に、お会いしましょう。

【索引】 【登場人物】

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