見出し画像

【20話】幼馴染みの想いで話(唯と梨紗ちゃん)

さて今回は【9話】で、唯未さんの含みのある、この言葉のことです。

「でも 梨乃 これからうるさくなるよ」
「いいじゃない 可愛いいから」
「・・・それならいいけど じゃあねだよ」

これです ・・・それならいいけど この帰り際の言葉です。

唯未さんは、梨紗ちゃんに、何かを感じていたようです。

不機嫌な梨紗ちゃん

赤ちゃんの時の梨紗ちゃんは、身体が弱くて、熱を出したり、お腹を壊したり、それで吐いたりすることが度々でした。そのせいで、毎日何度も愚図ったり泣いたりしてました。食も細いうえに、吐くことが多いので、体重も余り増えていきません。唯ちゃんと比べると、一回りは小さかったそうで、唯ちゃんは育ちが早かったので、なおさら小さく見えました。
寝返り、おすわり、はいはい、つかまり立ち、たっち、これらの成長も、唯ちゃんより遅かったのは、言うまでもありません。寝付きや目覚めも悪く、いつも不機嫌で、梨乃さんの子育ては非常に大変でした。

ご機嫌な唯ちゃん

赤ちゃんの時の唯ちゃんは、丈夫で元気一杯で、病気一つしませんでした。
面白いことに、背中を叩かなくても、放っておけば自分でゲップをします。いつも笑顔で、あまり愚図ったり泣いたりせず、ただお腹が空くと、徐々に愚図りだし、そのうち向こう三軒両隣に聞こえる大声で、ギャーギャー泣きわめく位です。眠くなると、アッという間に爆睡、朝までグッスリ、目覚めもスッキリで毎日ご機嫌です。お腹さえ満たしておけば、放っておいてもスクスク育ってくれたので、唯未さんの子育ては非常に楽でした。

愚図り泣く梨紗ちゃん

次の日の、夜のことでした。
梨紗ちゃんに、母乳を飲ませて、ゲップをさせるために、ポンポンと背中を叩くと、ゲップと一緒に、飲んだ母乳も吐いてしまいました。

そして、梨紗ちゃん、吐いた気持ち悪さに、愚図り出します。
それも「ウーイー ウーイー」と言いながらです。
そしてそのうち「ウーイー ウーイー」と言いながら泣き出します
いつまでもいつまでも、そう言いながら愚図り泣くのです。
困った梨乃さん、夜遅くても、もう打つ手は一つしかありません。

愚図り泣く梨紗ちゃんを抱っこして、唯未さん家に駆け込みます。

「ゆみー ゆみー ちょっとお願いがあるのよー」
「あら梨乃 どうしたんだよ 梨紗ちゃん連れて」
「唯ちゃんいる 唯ちゃん」
「そりゃあ 唯は まだ一人ではどこへも行けないから いるよ」

「そんなの分っているわよ」
「じゃあ なあに」
「梨紗が 愚図るは泣くわで ウーイー ウーイー ってうるさいのよ」
「だから言ったじゃない これからうるさくなるよ って」

「唯未 あれって そういう意味だったの どうして分ったのよ」
「そんなの梨紗ちゃん見てれば分るよ 梨紗ちゃんは頭がいいんだよ 名前呼ぶこと覚えたら 当然そうするよ」
「唯未って 梨紗のこと ほんとよく分ってるのね」
「何言ってるんだよ 梨乃も唯のこと よく分ってるじゃない」

「はあ~い 梨紗ちゃ~ん 抱っこするから こっちのママの所へ 来るんだよ~ 唯の所に行くんだよ~」
「唯未 でも 唯ちゃん もう寝てるんじゃないの」
「寝てるよ でも 起すよ」
「そっ それじゃ唯ちゃんが・・・・」
「大丈夫だよ 梨紗ちゃん来たら 唯 すぐ起きるよ 喜ぶよ」
「唯未 ありがとうね」
「ありがとうは 私じゃなくて 唯に 言うんだよ 冗談だけど」

唯未さん、唯ちゃんが爆睡してるところへ 梨紗ちゃんを連れて行って、

「お待たせ梨紗ちゃん ほら 唯だよ 寝てるけど 梨紗ちゃんが唯って呼ぶとすぐ起きるよ 呼んでみるんだよ~」

「ウーイー ウーイー」(梨紗)
「・・・・・・」(唯)
「もう一度だよ」
「ウーイー ウーイー」(梨紗)

そうすると、唯ちゃん、いきなりパチッと、大きな目が開きました。
そして、唯未さんに抱っこされている、梨紗ちゃんを見つけ、
満面の笑みで、

「リーチャ リーチャ」(唯)

と、今まで爆睡してたと思えない、唯ちゃんでした。
ここからは、お約束の展開です。

「ウーイー ウーイー」(梨紗)
「リーチャ リーチャ」(唯)
「ウーイー ウーイー」(梨紗)
「リーチャ リーチャ」(唯)  

と、呼び合います。
それから、

「あうあう」(梨紗)
「うあうあ」(唯)

と、喃語で何かを、会話をしているようにしていました。
きっと間違いなく、二人は会話をしていたのでしょう。
言っていることも、きっと通じ合っていたのでしょう。

この日、梨紗ちゃんは、唯ちゃんと一緒に寝ました。
不思議なことに、愚図りもせず、アッという間に爆睡、夜泣きもせずに、
朝までグッスリ寝たのでした。
唯ちゃんと同じように大の字で、片足は唯ちゃんの上に乗っけていました。

朝、目覚めた梨紗ちゃん、身体も頭もスッキリで、もうご機嫌です。
まだ、爆睡している唯ちゃんを起そうと、唯ちゃんに上に乗っかったり、「ウーイー ウーイー」と呼びかけたりして、起そうとしてます。
楽しそうに、嬉しそうに。
そして、その日は一日中、梨紗ちゃんは笑顔でした。

唯ちゃんと梨紗ちゃんが、赤ちゃんの時の話は、まだあります。
それは、またの機会に。

また、次回、お会いしましょう。

#幼馴染み   #想いで話 #思いで話   #小説   #ショートショート  
#東雲 #しののめ #小鳥遊 #たかなし #愚図る #泣く





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?