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そろばん少女ユイカ

そろばんを5歳から15歳まで習っていた。他に何も続かなかったし興味も持てなかったのに、そろばんだけは飽きずに楽しくやっていた。

そろばんを習っていたと言うと、よく、「暗算が早くなるから良いよね!」とか「頭が良くなるんだよね?」など言われるが、別にそれが目的ではなかった。単純に楽しかった。野球少年は足を鍛えるために野球をしているのではないのだと思う。結果的に足は速くなると思うけど。たぶんそれと同じ。

実力が上がるのが楽しかった

何が楽しいのかと思われるのかもしれないが、級が10級から9級、8級と上がっていくのは、自分の実力が上がったことが目に見えて分かるので楽しかった。(ちなみに、級が上がるとシールがもらえて、そろばんに貼ることになっていたので、シールをいっぱい貼っているのが強さの証みたいになっていた(笑))

また、内容も最初は「足し算と引き算」だけだったのが、「かけ算」「わり算」「暗算」が増えていき、最終的には、伝票と呼ばれる冊子をペラペラめくりながら計算する「伝票算」や、算数の文章題のような「応用算」、√74529=? のような計算をする「開法」と呼ばれるものまで出てきて、種目も面白かった。

(※ちなみに、√74529=? の答えは、74529=273×273と計算できるので、「273」。こんなのが電卓を使わずにそろばんで計算できるのは本当にすごいと思う。)

競技大会での読み上げ算

全く知られていないと思うが、そろばんには競技大会がある。同じ都道府県のそろばん教室の生徒たちが集まり、同じ問題を解き、正答数で競う。個人戦と団体戦があった。

競技の中に「読み上げ算」というものがある。「願いましては~」から始まり、数字が10~20個読み上げられていくのでそれを足していく。そろばんで計算するものと暗算で計算するものがある。競技大会での読み上げ算は格別に緊張するがそれが面白かった。

規模にもよるが、数百人も集まっている広い会場内で、最初は全員で参加する。「願いましては~」の声で数百人が一斉にパチパチとそろばんを弾き始める。「~では」の読み上げ終了の声でその音が一気になくなり、次は一気に鉛筆を走らせる音に変わる。そして、10問を終えたら隣の人に採点をしてもらい(すごいシステムだ(笑))、成績上位者だけが引き続き参加する。上位に入らなかった人はその場で競技の行方を見守る。

何百人ものそろばんの音が数十人の音に変わる。そして最後は一騎打ちの2人だけの音に変わる。相手のそろばんの音が乱れてないかどうかも気になるあの雰囲気を思い出すと今も緊張するが楽しかった。

人との関わりが楽しかった

他には、教室に通っていたおかげで隣の小学校の人や他学年の人と仲良くなったり、先生にも優しくしてもらった。高校生の生徒がアルバイトとして『先生』もやっていて、そのお姉さんにも優しくしてもらった。

競技大会でいろいろな場所にも連れて行ってもらった。(小学生だったのでどこに行ったのかはあまり覚えていないが…。)電車に乗っていき、昼食はみんなでお弁当を食べて、遠足気分だった。

そろばんは役立つのかどうか

高校生のときにあった宿泊行事中のこと。たしか食事が終わった後だったと思う。みんなで旅館を移動していたとき、一人の男の子が廊下にあったピアノをおもむろに弾きだした。「おー上手いやん」などの声が上がって周りはわっと盛り上がった。それを見て思ってしまった。「もし私が得意だったのがピアノだったら周りの人を盛り上げられたのに。そろばんは楽しいけど役に立たないな」って。

大人になって、仕事を一旦やめて無職になった時があった。何かやりたいことをしようと考えたとき、そろばんの検定に挑戦することを考えた。(1級より上の)段位を取得したのだが、また頑張ればもっと上の段位を取れるのではないかと考えた。

しかし、やらなかった。「就職に役立たないし、そんなことする時間があったら別の資格の勉強した方が良いだろう」と思ったからだ。

今後の挑戦

今になってやっと思う。役立つかどうかなんて関係なくやればよかったなと。今思い返すと、そのとき役立つと思ってやった資格の勉強は、資格も取れてそのときには役立ったが、今はそうでもなくなってしまった。結局、役立つかどうかなんてそんなものだ。

だから、今は思わないのでしないが、もし今後、またそろばんに挑戦したいと思ったときにはやろうと思う。