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学芸大学で道案内してくれたお姉さんへ

11/7(土)
am9:58
学芸大学駅から徒歩2分の美容室に辿り着けずに、私は焦っていた。

頼りのGoogle mapはiPhone充電切れで(正式には電源落ちてからの充電中)見ることができず、美容室の予約はam10:00。担当の方に遅れる連絡もできない。このままさまよい続けたら、お店に迷惑がかかる上に、バックレだと思われるだろう。ウンともスンとも言わない真っ黒な画面のiPhoneの中身でラインが来まくっているかもしれない。

前日まだ正常だったiPhoneで事前に確認した地図の記憶を頼りに商店街を歩いてみる。
スターバックス、サーティワンアイスクリーム、ドトールコーヒー、居酒屋や塾などさまざまな看板がギッチギチに並んでいる。

こんなところに本当に美容室があるんだろうか??

大体の位置しか確認していなかった私はだんだんと、絶対にこの場所じゃない、と思うようになった。

なんとなく、人気が落ち着いた一本違う通りに出てみる。
別の美容室を見つける。ここで聞いてみようか?でも違うお店の場所を聞くのは失礼かな…
とか思って勇気が出ない。
こうなったら最後の手段。
道ゆく人に聞いてみるしか無い。
出来るだけ地元民っぽい、きっと今家を出て駅へ向かっているであろう人を狙う。30代女性。

この人だっ!!

思わず後ろから声をかけてしまった。自分がされたら嫌なことリストに絶対入ってる
「急に後ろから声をかけられる」
の加害者になってしまった…

「あの、すみません」

最悪な第一コンタクトがもろに影響してか、お姉さんの対応はやっぱり「町で遭遇する迷惑な人」に対してのそれだ。確かに私は今迷惑な人だ。でも決して怪しい人ではない。宗教の勧誘でも無いし、情報商材売り付けビジネスの目の色が変わった末端構成員でも無い。

セリフなんかだとよく出てくる
「決して、怪しいものじゃありません」
なんて言葉はこの現実世界では全く無意味だろう。このままでは怪しまれて逃げられてしまう。

なので必死に今の状況を説明する。


美容室YARDに行きたい
携帯の電池が切れてマップが見れない

この二つを必死に伝えた。

するとお姉さんはまだ迷惑な人に対する態度だったけど
「私も急いでるので、歩きながらでよければいいですよ」
と言ってくれたのだ。

「ありがとうございます」

今までこんなに重いありがとうを、自分の口から発した事がない。
わたし、こんなふうにありがとうを言えるんだな。

お姉さんのマップを頼りに、もと来た道へ戻る。そうか、探していた美容室は、やっぱりこのダンジョンの中だったのか。

お姉さんが時計を気にしながら
「この時間って事は…10時の予約って事ですよね…」
と、私の時間まで気遣いはじめてくれた…!

まじか
優しい
東京の人、優しい〜!
最初の迷惑そうな表情からうって変わって、マジで親切なエンジェルお姉さんに変身している!人間讃歌!

さらに
「でも、大丈夫ですよ!美容室までもうすぐだし、遅れても1.2分ですから!」
とまで言ってくれる。
まじで。
優しすぎないか?

エンジェルになったお姉さんのサポートで地図上の場所まで来るも、美容室の看板がない。
でも地図ではここだ。

「この建物のところなんですけど…」

しかし美容室の看板は見つからず、私もこれ以上はお姉さんに申し訳なくなってきて、ここで十分です、あとは自分でなんとかします!と伝えるも、
お姉さんはいやいや、と一緒に探してくれる。
お姉さん!!お姉さんも急いでるのに!!!まじかよ!!!お姉さんーー!

ここでもうこの方になんらかのお礼をしなければと思うも、連絡先を聞くのも怪しいし(聞いてもiPhoneなしじゃメモもできない)SNSを検索してフォローしても良いかと聞こうにもこれまたメモできない。どうしたら良いのかと頭がパンクしそうになっていた時

YARD

の文字が
建物の間からひょっこり顔を出していた。

「あったーーー!!!」

と、2人で大喜びして、
私は最大限の感謝の言葉を述べ、お姉さんは笑顔で颯爽と駅の方へと去って行った。

こんな事あるんだ…

美容室に数分の遅れで到着した私は(多分5分くらい?)まだこのスリリングでバンザイな状況からぼーっとなっており、なんだかおかしな挙動をとっていたかもしれない。

髪を切ってもらいながら思った。

親切なお姉さんに、
自分が名乗ればよかったのだ

と。

うわあ〜

もうテンパってて全然頭が回らなかった………

お姉さんをもし発見できたら、スタバのドリンクチケットを送りたいです。

いつか改めて、お礼ができるんだろうか。できますように。

あなたのおかげで生きているのかもしれません。