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元気でいろとは言わないが、日常は案外面白い

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作家による日記風エッセイ
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#小説家

油淋鶏を揚げたら脳内でインフェルノが流れ始めた

料理が好きだ。 正確には、料理というより何かを生み出す行為が好きだ。 無の状態から一を作り出す。目の前に並んだ食材を見て、レシピなど見ずに新しい物を作り出すのが好きだ。だからこそ、文章を選んだのだろうけれど。 真っ白なキャンバスに美を見出すと、学校では色を塗らないキャンバスなんて言語道断だからせめて白を塗れと言われた。分かってないな、この白だから良いというのに。絵の具を塗ってしまえば質感や影、粗さなど全て意味がなくなるだろうに。 そんな感じで、昔から新しい何かを作り出

劣等感は消えないが、六花亭のチョコで自分を愛す事は出来る

自己肯定感を爆上げさせてくれそうな彼氏は、生駒達人と犬飼先輩。 自分の事が好きですか?という問いに、最近やっとマイナスがゼロになってきたと答えるだろう。書く事に関してはことさらマイナスなのだが、外見とか容姿とか。ぱっと見で分かるものに関しては、それなりに自信が持てるようになった。 子供の頃から、どうしたって自分に自信がない。 始まりがどこだか分からないが、決定的なシーンとしては、幼稚園の時まで遡る。 当時モーニング娘が最盛期で活動していた。LOVEマシーンやゴマキ、ミ

初恋は500mlのペットボトルに詰め込んだ蒼色の空気だ

思い出はいつも蒼色だ。 蒼と青の違いは色だと思う。青のイメージは海の色だ。足がつかなくなった深さの、晴れた午後四時過ぎの澄み渡った青。天の川に流れる水。青。 蒼は空に近いような色。薄い水色、けれど影が混じり儚さを抱いている。例えるなら、そう。 電気のついていない晴れた午後の教室。 忘れられない事が沢山あって。それが増える度歳を取ったと感じる。懐かしい友人と話をすると永遠に語れるような。そんな思い出が増えていく。その中に後悔と青春が同梱した。 ガラス瓶の中に詰め込んだ

マジックアワーにチャミスルは心を落ち着かせるための麻薬だ

金曜日の夜に窓を開けて外の音を聞きながらお酒を飲むのが好きだ。 どこにでもある一日が終わる瞬間、窓の外、建物の間から沈んだ夕陽が見える。青と黄色、オレンジに赤、紺に黒、様々な色が混ざり合い織りなす世界を誰かがマジックアワーと呼んだ。 なるほど、確かに魔法みたいな時間である。 晴れた日の数十分、時間と天候、全てが揃わないと見る事が出来ない景色を魔法みたいと称したが、今まで何度、名前も知らないままその景色を眺めただろう。 私にとって、それは魔法でも何でもなく。 体験した事