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妄想庭園【秋】実りなき秋/⑤不死鳥伝説〜ブラックパール

アロマティカスのように、放って置いても逞しく育ってくれる植物はむしろ例外だろう。大抵は、ベランダ園芸という劣悪な栽培環境のハンディキャップ、ガーデナーである私のズボラな性格、そしてもちろん、育成の難易度が高く環境に適していない植物など様々な条件により、植物は枯れたり病気になる。その可能性の方がよっぽど高いといえる。

 真っ黒な葉と丸くて赤い実がシックな植物、観賞用とうがらし「ブラックパール」も「食べられない観賞用だから」という理由によって、かなりグレーな疑惑を持たれつつ我が家にスカウトされた。余談だが、我が家では新しく植物を招き入れることを「スカウト」といい、栽培される植物は「メンバー」と呼ばれる。プロデューサーでありオーナーでもある私が主催する劣悪園芸プロダクションだ。

 そもそも、とうがらしはナス科の植物であり、思いっきり野菜のジャンルである。夏には紫色の小さい花をつけ、見覚えがある形だとおもったら、ナスの花そっくりなのだった。ある時気がつくと、葉にクモの巣のようなものが見え、葉が枯れて、びっしりとハダニが付いていた。ネットで調べると葉水をかけてやるとよいということなのだが、一向に改善されない。秋になり寒くなってきて葉が落ち始めてだいぶ見栄えが悪くなってきたこともあり、思い切ってハダニにやられた部分、根本に残っていたまだ緑色の新芽以外はほとんどカットした。

 よくよく調べると、観賞用とうがらしは、一年草ということだ。つまり、冬越しが出来ずに、長くは楽しめない植物ということになる。一年草、多年草、宿根草など、いろいろな周期をもつ植物があることをブラックパールに初めて教えてもらったのだった。

 その後もハダニはしつこくブラックパールにまとわりつき、葉先に巣食っているため、ある日ハダニに効果がある天然素材の殺虫スプレーを買ってきて定期的に処置をした。そうやって地道に世話をしてあげていたら、徐々に緑色の葉が復活してきて、また花をつけて、小さいながらも黒い実を付け始めた。最初は黒くだんだん赤くなるらしい。

 多少先祖返りしたのか、以前の様な漆黒の葉色ではなくなったが、このまま枯れてしまうんだろうな、と諦めていただけに復活してくれた喜びはひとしおだ。ブラックパールはその驚異的な生命力・回復力から「不死鳥」と呼ばれ、オーナーである私や周りの鉢たちからも一目置かている。しかし彼女の伝説はこんなものではなかった。後にさらなる活躍をすることとなる。

20200806ブラックパールの花-1


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