見出し画像

妄想庭園【春】植物を育てわかったこと/⑮マイ・ドリーム・ガーデン

 狭いベランダで園芸をやっていると、気がついたらあっという間に鉢でいっぱいになるのだが、もう置き場がないのにまた別の植物が欲しくなるというジレンマが起こる。今私が執筆している背後、床やラックには、夜の寒さを凌ぐため部屋に取り込まれた鉢たちでいっぱいだ。

 こんな場所は植物や鉢にとっても良くない環境ということはわかりきっている。資産があり土地や戸建ての家でも購入できれば良かったが、叶わぬ夢だ。いつか自分の家を持って、いろいろな植物を庭で育ててみたい! 二十代位の若者が言う分には夢があっていいが、(そもそも二十代の若さでそんな渋い夢を持った若者なんていないだろうけど)人生の折返し地点をとうに過ぎた中年が言うのはイタすぎる。人生には諦めなければいけない物があるし、手に入れられない物のほうが多い。

 しかし、所有にこだわらず、近い形で実践できる方法もあるのではないか? 調べてみると、市で市民農園のようなスペースを貸し出しているようなサービスもあり、農地の一区画を借りて園芸などができそうだ。ただこれはどちらかというと、想像だが園芸というよりは農作物を育てる方なのだろうか? それもいいが、現段階では趣味で草花を育てるガーデニングが望ましい。フラワーパークのような施設を小規模にプロデュースするイメージだ。

 もし好きなように園芸をしていいとしたら、と夢想する。そんなに広大な土地では逆に管理するのが大変なので、ちょっと広いな、という位の大きさがいい。その土地には家なんて最悪なくても構わない。植物たちのための庭だ。ただ、道具類を管理する小屋のようなものはあったほうがいいだろう。管理人である私が、ちょっと休憩したり、雨をしのげる位のスペースだ。

 ベランダでは諦めざるを得ない、憧れのバラや果樹などの樹木。管理にあまり手がかからないのに毎年花を咲かせてくれる優等生、宿根草。グランドカバーになるリーフ系の葉など。もちろん球根の花も楽しみたい。強健で荒れ地にも強いハーブは植え放題だ。植栽や配置、育て方のセンスが問われそうだし、病害虫の対策などの作業は大変そうだが、それだけの価値や、やりがいがある場所になるだろう。

 ベランダ園芸ではオーナーとうそぶき、さんざん鉢を枯らせてしまう偉そうなポンコツガーデナーだが、そこでは植物達のために全てを捧げる下僕と成り下がるのだ。夢を叶えてくれた植物達から、毎日美しさと癒やしのエネルギーをもらえたなら、喜んで奴隷となって奉仕するだけの価値はあるだろう。

20211008霧吹きre


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?