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妄想庭園【秋】実りなき秋/⑧支配からの逃亡〜ミント

 勝手に増えていく植物、病気から復活する強健な植物とは別に、我が家では何度育ててもどうしても枯れてしまう植物がある。ハーブ系ではお馴染みのミントだ。大体ハーブは、荒地のような過酷な環境にも適応して生えているものが多いイメージだ。園芸クラスタの方々は、育成がラク、料理にも使えて楽しみが広がる、葉がいい香りがするから、などの理由で育てている方も多いだろう。しかし、我がプロダクションにスカウトしたミントはどういうわけか元気がなくなる。

 初代ミントは明るいグリーンの葉色が美しいスペアミントだった。アイスクリームやパフェの上にちょこんと乗っているあれだ。この子を増殖させて、夏の暑い日には、モヒート(※)として飲んでやろうと企んでいた。いわば食われる前提の飼育だ。しかしそんな雇い主の思惑を察したのか、葉にだんだん元気がなくなり、次第に茎が徒長していった。

 スペアミントは初期メンバーだったため、オーナーでありマネージャーでもある私のスキル、育成センスも全くないのが原因と言ってもいいだろう。元気がないのは分かっていたが、特に対策をしなかったのだ。今思うにハダニにやられていたのではないかとか、無意味に鉢を変える植え替えをしたりだとか、ミントにしてみればストレスでしかないような事ばかりしていたので、最終的には枯らしてしまった。

 このままでは夏が終わってしまい、モヒートを美味しく飲めるシーズンが過ぎてしまう。私は焦った。そこで今度は「オーデコロンミント」という葉が立性の香りがとても強いミントを見つけてきて、リベンジをもくろんだのだ。スペアミントの跡を継いで無念を晴らしてくれ…。

 しかし、そんな思いとも裏腹にオーデコロンミントも元気をなくしていく。ハダニにやられ、小さいながらもこんもりと茂っていた葉も無くなっていった。この頃には、観賞用トウガラシ、ブラックパールで得たハダニ対策として、葉に天然素材の防虫スプレーをかけるという知識があったので、折を見てスプレーしてあげるが、あまり効果がない。ミント自身は、ランナーと呼ばれる匍匐茎を伸ばし、鉢の外に根を下ろそうとしている。この狭く環境の悪い鉢から別の大地に逃れようとしているかのようだが、そんなものは無い。

 育てている環境がミントに向いていないのか、育て方のコツが掴み切れていないからなのかはっきりせず、どうしても上手くいかないミントの栽培。いつかプランターいっぱいにモジャモジャに茂ったミントを山のように摘んで、夏の暑い日に浴びるようにモヒートを飲んでみたい。

※モヒート…キューバ・ハバナ発祥のカクテル。ラム酒をベースにミントの葉、ライム、砂糖を加えすりこぎ棒で軽く潰し、炭酸水で割る。ミントの清涼感やライムの酸味、ほどよい甘さが夏の暑い気候にマッチする。


20201027オーデコロンミント-10


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