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妄想庭園 あとがきにかえて

 このエッセイ集のようなものは、ある友人より託された原稿を本にし、出版したものです。事情があり、友人に代わりあとがきを記す事になりました。この本を手にとっていただいたこと、お礼申し上げます。

 ある時友人より「最近園芸にハマっていて、ベランダでいくつかの草花を育てているので見に来ませんか?」という連絡があり、訪れました。しかし友人は不在で、部屋はもぬけの殻だったのです。もちろん鉢植えや植物の様なものも見当たりません。

 その代わり、部屋の床にはプリンターで印刷された本の校正ゲラと、USBのデータが封筒に入り残されていました。それを印刷し形にしたのがこの本となります。友人が趣味で自主出版の冊子の様なものを作っていて、制作物を見せてもらったりしていたので、園芸をテーマにした新作ができたのだということ、そしてこれを印刷して出版してほしいということなのだろうな、と察しました。冊子だけに。

 友人とは連絡が取れなくなってしまい、残ったものはこの本しかありません。今となっては、友人は本当にガーデニングをしていたのか? そもそも、本当にそんな人物は存在していたのかすら怪しいのです。

 いったいどこに行ってしまったのか? その後も会っていません。けれどどこかで、麦わら帽子をかぶり痩せているけど日焼けして、手を泥だらけにしている人物を見かけたらきっとそれがその人です。道端の草をじっと見つめ、何かを話かけていたら、温かい目でそっと見守ってあげてください。

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