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妄想庭園【冬】花のない季節に/⑪花は枯れるからいい

 最近の造花は作りがとても良い。造形が細かく精巧だったり、色合いがとてもきれいだ。インテリアショップで見かけるクオリティの高い造花は、部屋を飾るオブジェとして見れば見栄えがいいだけでなく、世話する必要も無いし確かにメリットが高い。

 しかし日々悪戦苦闘をし、時には打ちのめされながら植物を育てている身としては、ちょっと考えてしまう。生きている草花と比べてしまうと全く別物としか言いようがないからだ。日々変化をし成長(場合によっては枯れるなどの退化)していくというだけでなく、やはり命、魂が宿っているということを確実に感じる。

 目に見えて成長して新しい葉を芽吹かせたりするものもあれば、衰えて枯れていくものもある。虫が湧いたら退治したいし、病気にかかっていたら何とか直してあげたいと思う。そんな風に気にかけ世話を焼くことは大変なのだが、その見返りとして、日頃鑑賞して癒やされたり、実際に部屋の空気を清浄化してくれたりというリターンがあるわけだ。

 世話をするという点では、犬や猫などのペットと同じだが、草花はそこまで手が掛からないし、存在を主張してくることもない。動いたり鳴いたりしないというのは騒がしいのが苦手な私にとっては向いている。園芸プロデューサーでよかった。大所帯の女性アイドルグループのプロデューサーだったら気がふれてしまったことだろう。草花園芸プロデューサーであれば、土が乾いていたら水をやったり、枯れ葉の掃除をしあげるくらいでよく、別のことをしたいときには、意識しなければ存在感を消してくれるし、たまには鑑賞したりすればいいのだ。

 生きた草花には命のサイクルを感じる。芽が出て茎を伸ばし、葉を茂らせ花が咲いて、実がなり葉が落ちる。そのうち地上に見えていたものは全て無くなり植物の一つのサイクルを終える。そしてまた新たに種から芽が出るものや、宿根草ならば根が生きていればまたそこから芽が生えてくる。輪廻のサイクル。枯れることで出る絶妙な色合いや美しさ、儚さもあることは花だけでなく人間にも通じる事ではないか。枯れて無くなってしまうことは悲しい事だし、その植物の個体としては一生を終えるという事だが、また別のどこかで、あるいは次の季節に、新しい芽が生き始めるということを示唆している。だから私の中で、はっきりとこう言いきれるのだ。「花や植物は枯れるからいい」。

 そして、人間も植物と同じように生きているものであれば、きっと同じ様なサイクルを辿るだろう。老いる事や傷つく事、失われる事を恐れる必要などないのだ。

20210213花の摘みガラ-1


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