午後下がりの憂鬱は
雷鳴が轟いている。
午前中きらりと晴れやかだった空はいつのまにか黒々とした大きな化け物になってぐるぐると低音の唸り声を上げてやってきた。
私は昔から、雨が好きだ。
雨に降られるのも好きだし
雨の気配を感じるのも好きだ。
雨のにおいのする夏の空気はなんだかどきどきする。
嵐の予感のような。
いつの間にか年を取って
いろんなものを憂鬱にとらえるようになってきた
つまらない大人だけれど
最近はようやく少し、冒険心を思い出せた気がする。
嵐の予感に、胸が高鳴ったり、する。
夕飯の準備のために豚肉を切った。
ステーキ用の大きなお肉なのだけれど、私はステーキでそのまま食べるより
一口大に切って味付けして食べるのが好き。
一年ほど前に買い替えた我が家の冷蔵庫はとても有能だ。
半冷凍のチルド室に入っていた豚肉は心地よく包丁で切れてゆく。
家族に、塩だれ用の長ネギと調味料の購入をお願いして
ボウルに豚肉を放り込み、レシピを見ながら下味をつける。
普段じぶんが慣れ親しんでいないレシピというのはどきどきする。
これでおいしくなるのだろうか?
この調味料で喧嘩しないのだろうか?
それでもレシピをシェアしてくださった方のドキドキわくわく感、
そして分かち合いたいという情熱の種を信じてそれを敢行する。
これって多分、未知の可能性にときめくってことなんじゃなかろうか。
おとなになっても知らないことが山ほどあるの♬
そんな風に歌いながら調味料を豚肉に揉みこんでいく。
美味しくなあれと魔法をかけながら、きっと自分の目は輝いているだろう。
毎日のお夕飯、作ること、考えることがつい面倒で
とりあえずコレ焼けばいいかーとか
面倒だから今日は各自でーとか
わたしはズボラでものぐさ人間なので、そういうことを、よくやる。
でも、ときたま、こういう
「あ、これきっと、美味しい、食べたい」
という情熱が灯ったときに
わくわくしながら作る料理はだいすきだ
食べたい!(欲求)
作ってみよう!(挑戦)
美味しそう!(期待)
いただきます!(体感)
美味しい!(無心)
ごちそうさまでした!(達成)
この全部が入っている料理は
きっと心にも体にも栄養たっぷり入っていく
そんな気がする
そんなご飯を作れる今日は
きっととてもいい日だ
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