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「みにおかみ」千乃ちゃん

 みなさまこんにちは!2020年の最後の1日を、いかがお過ごしでしょうか?今日は、結のはじまりに半年間働きに来てくれている、私の元に舞い降りた天使のような中窪千乃ちゃんについて、出会いから今日までのいきさつを書かせてください。(天使などと書くと、「やめてくださいよー!」と嫌そうに言う千乃ちゃんの顔が目に浮かびます。)

折り目正しい。

 初めて出会ったのは約2年前。私は楢葉町でルームシェアを始めていて、その空き部屋を活用して、住み込み短期アルバイトを募集していました。当時、この町に「震災・復興」の文脈で視察に来る大学生がたくさんいて、彼らのうち、もっと入り込んで知ってみたいと思ってくれる人には、ぜひ結のはじまりのカウンターの中に立ってお客様と話をしてみて欲しいと思っていました。そうすることで感じられることがたくさんあるから。

 そんなとき知人の紹介でやってきたのは、高校を卒業したばかりの女の子で、これから海外に留学するから、その前に日本のことを自分の言葉で語れるようになっておきたいとのこと。この短期住み込みアルバイトを有効活用してくれました。

 彼女が旅立つときにSNSに滞在時の感想を書いてくれたところ、それを見て私に連絡をくれたのが、当時大学一年生だった中窪千乃ちゃんでした。当時の彼女の動機は、千乃ちゃんのnoteの言葉を借りると「住み込みバイトというのが良かったのと、暇だったから。」だそうなのですが、私の記憶では、「地域を、食と場の力で掘り起こそうとするような活動に興味がある。」というような動機を、きちんと私に示していたはずです。チノちゃんと言う人は、「誰かと比べて私なんて」「私の動機なんて大したもんじゃないんで」というような謙遜を強く持つような人だと感じています。

 ルームシェアをして一泊でも共に暮らすと、相手のことがよくわかるものだなと常々思うのですが、千乃ちゃんが最初の滞在を終えて旅立った後、彼女の部屋を片付けようとドアを開けると、床は隅々まで掃除されて、布団はカバーと本体が分けられて、パシッと畳まれてベッドの上に整えられていました。「折り目正しく育てられた人」そう感じました。その後の彼女との付き合いを通じて、「折り目正しくあらねばと、自分を律している人」かもしれないとも思います。

はっきり否定する。

 それから千乃ちゃんは、暇を見つけては1泊や2泊の単位で手伝いに来てくれるようになりました。彼女の面白いのは、「わたし復興とかに興味があって来たわけじゃないんで。」「わたし移住するつもりとかは無いんで。」と、過度な期待の言葉がかけられるたびにキチンと否定するところです。
 こんなふうに謙虚さと主張の両方を持ち合わせた賢い彼女が、なぜわざわざ楢葉町の、私のようなよくわからない女将のところに通ってくれるのかが、さっぱり分からず。ただ来てくれることが嬉しくて、毎回楽しく過ごしていました。

正確に期待する。

 そんな千乃ちゃんが大学3年生になったこの秋に、海外留学を目的として休学を決めていたのですが、コロナの影響で断念せざるを得なくなり、海外に行く代わりに結のはじまりのインターンとして半年間働きに来てくれることになりました。彼女の、せっかくの休学期間を有意義な時間にしたいという確固たる思いと、では結のはじまりで何を経験できるか、という可能性の模索がはじまりました。

 コロナ禍での東京からの移動だったので、最初の2週間は楢葉の家で引きこもっていただき、その間は在宅でできるような領収書入力などの雑務をお願いしていました。インターンがはじまる当初から、「自分で一から最後まで何かをやり遂げてみたい。」という思いを伝えてくれていたものの、具体的な目標までは定まらないまま月日が過ぎて行きました。

 すると彼女から、だんだんと力強い要望が出されるように。

「かおりさんの仕事を他の人でもできるように『みにおかみ』制度を確立させたい。」

「週に一回はかおりさんとしっかり話す時間が欲しい。」

「投げられた仕事を表面的にではなくコンセプトからしっかり考えて完成させたい。」

などなど。今までこんなことを言われたことが無かったので、じりじりと詰め寄られるような感覚と共に「この人を受け入れるということはこちらも本気で挑まなければならないぞ。」と心構えが正されるような気持ちになりました。

同時に湧いてくるのが、これまで店を手伝ってくれた人たちのことを、私はちゃんと見れていたのだろうか、という反省です

 私の元に舞い降りた天使は、人を育てながら育てられるということを、毎日容赦無く教えてくれます。半年のインターンも今折り返し地点を迎え、残りの期間で彼女と私がどこまで成長できるか、お互いに確認しあっていけたらと思います。

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(先日大掃除した際の写真。撮影:市川さん)

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