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制作裏話:'op.4 Siblings of the Netherd' / 'op.4 "rearrange" Sisters of the Netherd'

――「大切な家族がいる。前に進む理由なんて、それだけで十分だから」――

かざりゆい

こんばんは。かざりゆいです。
制作裏話の2本目ということで、
'op.4 Siblings of the Netherd'
と、そのリアレンジ版
'op.4 "rearrange" Sisters of the Netherd'
について整理していきたいと思います。



制作過程の話

コンセプト

前回の記事で書いたop.3と同様、ボイスドラマコンテストに合わせて制作した2曲で、「悲しい曲」として依頼されていたもの。

  • 作中中盤でヒロイン姉妹の境遇について語られるシーン(BGM4)

  • 彼女たちが迎える壮絶なクライマックスシーン(BGM6)

――に用いられる予定でオーダーを頂いていました。

原作を読んだ段階で、この作品で繰り広げられる人間ドラマに於いて、ヒロイン姉妹が占めるウェイトは非常に大きいものだと判明していました。なので、「(ヒーローとは別に)ヒロインそれぞれのテーマ曲を作ろう」というのが最初の思いつき。
そしてテーマは「妹を想う愛」「姉から妹へと継承される意思」。
姉と妹、2人分のメロディと、2人分の楽器を設定して、それらが絡み合う曲にしていきたいなー、と考えていたようです。

↓構想を練り始めた頃のメモ

4.悲しい曲:がらっと雰囲気を変える。「姉のテーマ」のアレンジ。後半少しだけ「妹のテーマ」。

6.悲しい曲:フィナーレ。4のアレンジ版、より豪華に。
リズムが消え、一瞬の静寂。ストリングスが次第に本数を増やしていく。――そして。再びの静寂と、ピアノが奏でる「姉のテーマ」。終盤、「妹のテーマ」が小さな音でリズムが再び刻まれていく)
そして最後、旋律が終わりかけるところでスローテンポになり――

構想通りにならなかった部分もありますが、2種類のリフを姉妹に準えて使う、という部分は踏襲できました。
'op.4 Siblings of the Netherd'で、前半と後半で雰囲気を大きく変えているのがそれですね。


メロディとコード

ヒロインのテーマとして印象づけるため、この曲はメロディを最初に作り、それに合うコードを見つける形で作っていきました。
なので、後は適当なベースラインを考えて、リズムをつけて、副旋律や対旋律を足して、と作っていく流れになるのですが…………。
この曲、現在公開している6曲の中で一番難産でした。
「何が」と言いますと、コードです……。

↓コンテスト使用曲の制作期間(納期は2週間)

戦闘曲(op.2) →依頼1時間後にデモ曲提出、納品はop.4と同様のショート版。
EDテーマ(op.3) →1週間で完成し納品。
悲しい曲(op.4) →2週間後の〆切直前にコンテスト用のショート版として納品。フル版は4週間後……。
〆切を1日延ばして頂いた上でギリギリでした……。

幸い、メロディは比較的すぐ(最初の1週間中)に、気に入るものができていました。
ただ、それに合うコードがなかなか見つからなかった……。
ダイアトニックコードのどれを使っても、うまく嵌らない。
その原因は――「終止部分のメロディで、臨時記号のつく音を使っていた」こと。
工夫自体は、自分も気に入っていて、良い雰囲気だと思っています。ただ問題だったのは、私自身が、「臨時記号を使ったことでハーモニーがどのように変化したのか、理解できていなかった」ことでした。
(※因みに今も理解しきれていません。どなたか分かる方がいたら教えてください……)

近そうなコードを片っ端から試してもピンとこず。結局、メロディを流しながら合いそうな音を一つ一つ並べていって、それらを3つ分重ねてコードにする――というなんとも地道な方法で探り当てました。
この作業にかなりの時間を費やすことになってしまい、解決するまで悶々とする日々を送ることになったのでした。
結果生まれたコード進行がこちら。

「姉のテーマ」
Dm, Am/E, F, Am/E,
Dm7, Gadd9, Dsus4, D

Dm, Am/E, F, Am/E,
Gm, C, F, Am/E,

Dm, Am/E, F, Am/E,
Dm7, Gadd9, Dsus4, D

Dm, Am/E, F, Am/E,
Am7, Dadd9, Asus4, A,

コードを探り当ててようやく、「自分は同主調転調したのか……?」と思い当たったようです。本当にそうなのかは自信無いのですが……。
尚、曲の後半は「妹のテーマ」として別のメロディになっているのですが、こちらは意図的に同主調転調(Key=Dm→D)をさせています。作品の展開に合わせて、暗い→明るい感じにしたかった。

如何せん、「良い感じの響きを思いついたのに、その構造を説明できない」というのが、悔しかった……。
まだまだ勉強が必要ですね。


タイトルと楽器

先に書いたように、コンテスト用の提出時は未完成でした。収録済みのボイスに合わせて、イントロや繋ぎ部分を作り込まず、最低限必要な「姉のテーマ」「妹のテーマ」をくっつけて渡した状態ですね。
実際のボイスドラマでは、編集を担当されたらぴ様の技量により、クライマックスを巧みに盛り上げる演出となっておりました。(鳥肌が立ちました)

その上で、私としては楽曲単体での鑑賞に耐えうるものを作りたかったので、コンテスト後に2週間確保して作ってみることにしました。
その結果が、'op.4 Siblings of the Netherd'と、そのリアレンジ版'op.4 "rearrange" Sisters of the Netherd'です。

ここで、キャラクターそれぞれに割り当てていた楽器を紹介したいと思います。

姉 →「悲壮な覚悟と家族愛を示す、頼れる姉御」クラリネット(サブでピアノ)
妹 →「儚く強く」フルート
兄貴分 →「カッコ良くキメる」エレキギター
弟分 →「小柄で跳ね回る」グロッケンシュピール

コンテスト用に制作した3曲全てでこの設定を使っているんですが、特に'op.4 Siblings of the Netherd'では、原作の展開を意識して各楽器の登場タイミングを決めています。
"siblings"は、「兄弟姉妹」を意味する単語の複数形。メロディこそ「姉」と「妹」ですが、「兄貴分」や「弟分」の音色が聴こえてくるでしょうか? 
妹達のために奔走する「姉」。口に出せないながらに姉を慕う「妹」と、いつも兄を信頼している「弟分」が、語らっている。「兄貴分」は、彼らを少し離れたところから見守っている。やがて、彼らに転機が訪れて……。
とある「姉妹」と「兄弟」のドラマが交錯する一幕。四者四様の「想う愛」を少しでも表現できていれば幸いです。
気になった方はぜひ原作やボイスドラマに触れてみてください。

そして、リアレンジ版は「姉妹水入らずバージョン」。ふと思いついてピアノで弾いてみたら良い感じになったので、そのままifの物語として仕上げました。
ピアノメインから、クラリネット&フルートへ。いつかどこかであったかもしれない二人の協奏、どうぞお楽しみください。


出来上がった曲と振り返り

ドラマティックさについては、サビの半音転調と後半の同主調転調とで、結構強引にやってしまった様に思います。
技巧として便利なものではありますし、有効性も実感できたのですが、それらのインパクトに頼り切ってしまった感じですね。他の構成要素を作り込む余地があったかなと。

一方で、楽器の分散、移り変わり、重ね合わせといった要素を実践する良い機会になりました。木管楽器でありつつ音色が明確に違うもの同士なので、絡み合いを考えやすかったですね。


――それにしても、今回の記事、苦労話からの原作愛語りと……随分と熱がこもったようです。
ドラマティックな劇伴を書いてみたい」という熱意の現れなのでしょうね。
キャラクターたちを想像しながら原作を読み込むのも、それらをどんな形で楽曲に落とし込んでいくのか模索するのも、とても楽しかったです。今後もドラマありきの制作をしたいですね。

というわけで今回はこの辺で。
それでは、また。

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