ネット通販隆盛 物流施設建設ラッシュで変わる田園都市

ネット通販隆盛 物流施設建設ラッシュで変わる田園都市 (産経新聞)
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田園風景が多く残る大阪府北東部地域が、第二京阪道路の開通10年を経て、大きく変わろうとしている。高齢化や農業離れなどの課題が山積する中、交野市の星田北エリアでは地元住民と市、企業が一体となって広大な土地区画整理事業を進めている。インターネット通販隆盛の時代に欠かせない巨大な物流施設も姿を現した。江戸時代、淀川の水運で栄えた大阪北東部は今、第二京阪によって再び物と人が行き交うまちとして成長しようとしている。(守田順一)


■第2国土軸構想にも合致  
交野市域を東西に貫く第二京阪を車で走ると、田園地帯に建設中の巨大な建物が迫ってくる。日本生命保険が7月の完成を目指す地上5階建て(延べ約9万2千平方メートル)の大型物流施設、ニッセイロジスティクスセンター大阪交野だ。
隣では三井不動産が9月完成を目指す地上4階建て(延べ約7万2千平方メートル)の物流施設建設も進む。  
京都と大阪を結んで平成22年に開通した第二京阪の沿道では、物流の総合管理を意味する「ロジスティック」などの名前がついた施設が次々と稼働している。
多くはらせん状の通路を持ち、トラックが各階に乗り入れられる大型倉庫だ。  経済産業省によると、令和元年の電子商取引(物販系)の市場規模は10兆515億円で、前年比8・09%増。ネット通販による物量が増えるにつれ、商品を保管、発送する物流施設の需要は高まっている。  
日本生命は大型物流施設への投資について「ネット通販市場の拡大で継続的な需要があり、オフィスと比較して高い利回りが期待できる」とする。
府内では3件目、最大規模となる交野市の物流施設については「第二京阪の交野南と寝屋川北のインターチェンジ(IC)に近い物流適地。
JR星田駅から徒歩11分と働き手も確保しやすい」と評価する。  交野市都市計画部の竹内一生部長も「大阪にはまとまった土地が少ないが、交野市にはまだ開発できる土地が残っている」と強調。「第二京阪沿線の活用は、震災に備えて内陸部の高速道路などの活用を進める国の第2国土軸構想にも合致する」と歓迎する。

 ■住民と自治体、企業によるまちづくり  

生駒山地の北端に位置する交野市は、緑豊かな田園都市のイメージが強い。第二京阪沿道の多くは市街化を抑制する調整区域だが、小規模な乱開発が問題となっていた。星田北エリアでは、市と地権者や企業が長年、土地の活用法を協議。地権者が土地を提供しあって2つの組合を作り、それぞれ土地区画整理事業を行うことになった。総事業費は計約180億円で、市が約23億円、府が約8億5千万円、国が約22億円を補助する大プロジェクトだ。  2つの事業のうち、第二京阪に近い星田北地区(通称・星北、約20・1ヘクタール)は工業系地域となる。
組合の業務代行者は大林組で、令和5年3月の事業完了を目指す。日本生命などの大型物流施設はその中心施設となる。星北組合の中井喜代治理事長は「農業の担い手が減り、田んぼが次々と資材置き場や駐車場に変わっていく様子に悩まされてきた。地権者が13年をかけて地域をどうするか話し合い、ようやく形がみえてきた」と話す。  

一方、JR学研都市線星田駅周辺の星田駅北地区(通称・駅北、約26・4ヘクタール)は、市の新たな玄関口と期待され、住宅・商業系地域として6年3月の事業完了を目指して造成中。
業務代行者の戸田建設によると、関電不動産開発(大阪市北区)の15階建て分譲マンション2棟(計約400戸分)や約200戸の戸建て住宅、商業施設、企業の本社・工場の整備が予定され、約2200人の居住、約千人の雇用が見込まれる。
国が郊外地域の新定住と活性化を目指す「コンパクトシティ」の先例になることが期待されている。  

■新陳代謝が必要  
「星田駅は快速が停車して利便性も高いが、駅前は数十年前と変わらず、地権者も多くが高齢化している。
住みやすい、新しいまちをつくって次の世代に引き継ぐには今しかないという思い」。駅北組合の和久田泰弘理事長はこう語る。  
取り組みは隣接する地域も刺激している。枚方市の茄子作(なすづくり)・高田(こうだ)地区と寝屋川市の寝屋2丁目地区でも、地権者が近く団体を作り、区画整理事業でまちづくりを進める計画がある。
 いずれの地域も、地権者の高齢化や代替わりによる農業離れ、無秩序な開発への懸念があり、物流やマンションなどの土地需要の高まりに期待をかける。第二京阪という大動脈が、郊外地域に新陳代謝を促しているのは確かだ。  
星北組合の中井理事長は「星田北エリアがどんなまちになるのか、楽しみにしている。星北と駅北のまちづくりを成功させ、周辺地域を刺激して引っ張っていけるよう盛り上げていきたい」と話している。




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