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毎日超短話95「恋という穴」

何事にも動じない隣の席の男をどうにかして動じさせたい。

突然、ワッ! と言ってみたり、消しゴムを渡すふりをして豆腐を渡してみたり、嫌いな虫の動画を見せたり、彼の好きなアイドルのスキャンダル(ウソ)を話してみたりしたが、彼はやはり、何事にも動じなかった。

落とし穴にでも落としてやろうと考えたが、さすがにそんなことは、と思い直した。

観念して、彼に「どうしたら動じるの?」と素直に聞いてみると、「きみがぼくを好きじゃなかったら」と答えた。

落ちていたのはわたしのほうだったみたい。

恋という穴に。

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