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たけのこ

ぼくは、たけのこ。
おかあさんは、たけ。
おとうさんも、たけ。

おかあさんもおとうさんも、とってもおおきい。
もうすこしでおそらにとどきそうなくらい。
どんなけしきがみえているのかな。

いろは、ぼくとちがう。
ぼくは、ちゃいろいいろ。
ぼくがはえているこのじめんとおんなじようないろ。

でも、
おかあさんとおとうさんは
とってもきれいなみどりいろ。

風が吹くと「さわさわ」ってやさしいおとがして、
きらきらおひさまのひかりがさしてくる。

ぼくは、おとうさんとおかあさんが届けてくれる
きらきらしたおひさまのひかりがだいすきなんだ。
とってもしあわせなきもちになる。

すこし寒い季節になると
ぼくのまわりはとてもにぎやかになる。

「ざくっざくっ」
そんなおとがたくさん聞こえてくる。

今年もにぎやかな寒い季節がやってきた。

「これはおおきいぞ」
ぼくのちかくで、そんなこえが聞こえてきた。

「ざくっざくっ」「ざくっざくっ」

気が付くとぼくは宙に浮いたみたいに高い場所にいた。
今まででいちばん高い場所から見る景色。
でも、
おとうさんとおかあさんにはまだまだ届かない景色。

「ぐらぐら」「ぐらぐら」
揺れているのかな。
はじめてみる景色ばかりがぼくの目の前に広がっている。

おとうさんとおかあさんが、どんどんはなれていく。

「ばしゃばしゃ」「ばしゃばしゃ」
なんだか冷たい。
雨でぬれた時みたいにたくさんおみずをかけられているみたい。

「べりべり」「べりべり」
ぼくのからだをつつんんでいたちゃいろいのが
どんどんなくなっていく。

あれ?
ぼくのいろ、ちゃいろじゃなくなっている。
とってもきれいなしろっぽいいろ。
まるでぼくじゃないみたい。

「さくっ」「さくっ」
「ぐつぐつ」「ぐつぐつ」
すごくあったかいおみずの中にいれられて
どれくらい時間がたったかな。

なんだかとってもいいにおい。

あったかいおみずからでたぼくは
もくもくした雲みたいなしろいのにつつまれていた。

まわりを見てみると、ぼくの目の前には
にっこりとしたおんなのこがいた。
あかいワンピースを着たおんなのこ。

おんなのこはぼくをみて、こう言った。
「いただきます!」

「もぐもぐ」「もぐもぐ」

「おいしい!」

おんなのこは、しあわせそうなきらきらした笑顔で笑っていた。
ぼくはおんなのこを見て、とても嬉しくなった。

ぼくは、たけのこ。

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