外資系企業では退職時にパワハラ被害者への口封じがされている? アメリカでは労働関係委員会が違法判断
セールスフォース事件で障害者差別と退職強要で裁判を起こした発達障害のある元社員は「退職合意書に過度な秘密保持義務などが入っており、サインした場合、セラピストに相談することも許されません。裁判を受けることもできません。英文主体のあんな恐ろしい契約にとてもサインすることはできませんでした」と語っていた。「会社側が、どんなにひどいことをされても黙っていろ、と口封じをしている」印象を受けたという。元社員は、契約書にサインする場合には気を付けてほしい、と呼びかけている。
複数のセールスフォース日本法人の元社員によると、同社の退職合意書にあった文面(日本語訳)は「貴方は、いかなる形式であっても、会社またはそのサービス、取締役、役員、株主、および従業員を一切誹謗しないことに同意します。更に、貴方は、貴方の会社からの退職に関するいかなる情報も第三者に対して開示しないことを同意します。」。
これは日本の企業における一般的な守秘義務とは異なるのだろうか。
そうしたなか、アメリカでNLRB (National Labor Relations Board:全米労働関係委員会)が、米国内の病院で起きた事案について、退職合意書に含まれる過度に広範な秘密保持条項および誹謗中傷行為禁止条項は、従業員のNLRA (National Labor Relations Act: 全米労働関係法)第7条の権利に対する違法な制限である、と判断した。国際法律事務所Pillsburyが3月29日のニュースレターで伝えた。
アメリカで企業活動の弁護実績のある奈良房永弁護士のリンクトインによると、アメリカでは、退職の際に秘密保持義務や誹謗中傷行為を禁止する条項が入った退職合意書 (severance agreement) に署名しなければならない場合が多いという。だが、連邦行政機関である労働関係を管轄するNLRBは、このような条項の適用範囲が広範である場合は、従業員の権利を侵害するという判断を示した。奈良弁護士は、「この決定は多くの議論を呼んでおり今後の展開は不透明ですが、雇用者は現存の退職合意書を見直す良い機会でしょう」と述べた。
アメリカでは、広範囲の秘密保持義務・誹謗中傷禁止条項と合わせて、労働者が民事裁判を通しての請求権を放棄する、とする「強制仲裁条項」が、セクハラやパワハラなどの隠蔽に濫用されてきた、という批判がある。
アメリカのバイデン政権は強制仲裁条項の撤廃を求めていく方向。現在地はどこなのか。独立行政法人労働政策研究・研修機構の国別労働トピックで調べた。アメリカの2022年4月の記事。
日本に進出している外資系企業で、このような退職合意書が当たり前に存在する実態があるのか。仮にあったとして、社員・元社員は声をあげられない可能性もある。
退職合意書について、セールスフォース日本法人に問い合わせ中。
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