『マリリン・トールド・ミー』を読んで
「友達なし、恋人なし、お金なし。上京直後にコロナ禍に見舞われた大学生・瀬戸杏奈。孤独を募らせる彼女のもとに、ある夜、伝説の大女優から電話がかかってきて――。運命突破系青春小説!」(河出書房新社HP内容紹介より)
瀬戸杏奈が遭遇した不思議な現象。それはきっかけに過ぎなかった。この作品の面白いところは不思議な現象の謎解きではなく、マリリン・モンローについて知っていく大切な学生生活を描いているところ。コロナ禍で一番身動きできなかった学年、だからこそ何かが見えてきて考えて進んでいくこともできたのではないだろうか。
瀬戸杏奈が卒論にマリリンを選び彼女について知っていくほど性被害がいかに軽く扱われていたのか、世間の常識が年代によって変化してきているのか、過去に若い女性として生きてきた私にもとてもわかりやすかった。今放送されている朝ドラ『虎に翼』とも似通っている描写が多く、観ている私のモヤモヤした気持ちを的確に文章で表現されていて共感とともに感動した。この嬉しさは作中の「一九五二年のイットガール」の中の雑誌へ投稿された一般女性の投稿を読んでいる時の瀬戸杏奈と一緒だと思う。マリリンが嫌な目にあった時ちゃんと声をあげているということがとても心強かった。あの時代、黙っている方がやり過ごせると思っていた人も多い。そしてそれはつい最近まで根強く浸透していた。マリリンが声をあげていたことはテレビなどでも特集で取り上げられたりしていたため知っていたこともあった。しかしこの作品を読んで、違うマリリンの顔があったのではと考えると私たちにはまだまだ考える余地があると思った。せっかく後世にも彼女が伝えてくれた気持ち、無駄にせずこれからの若い人たちも性や立場にとらわれず楽しく生きていける世の中になって欲しいと願ってやまない。
今だからこそ読んで欲しい作品。とても、今っぽいなと思いました。
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