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長編小説『becase』 5

 彼は昨日の夜、目覚ましをセットしたのだ。いつも七時に鳴っている目覚まし時計が、九時にセットされているという事でそれは分かった。彼は間違いなく、昨日、この目覚まし時計が九時に鳴るように時間を合わせた。彼は今日、九時に起きようとしていたのだ。でも、彼の睡眠を何かが邪魔をして、九時前に起き上がった彼は突然姿を消してしまおうと思ったに違いない。どうしたって、彼が今コンビニやパチンコ店に行っているとは思えない。彼は間違いなく姿を消したのだから。

 そもそも、彼と私の関係って何だったんだろう。彼は私の事をどう思っていて、私は彼をどう思っていたのだろう。

 ただ、とても寂しい。彼がいなくなったこの部屋は私一人にはどうしても広すぎるから。

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