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人として、柔道家として、忘れてはいけない人、忘れてはいけないこと。

先日、私が幼少期からお世話になった先生が亡くなりました。先生は私の中学生時代に所属していた部活動の顧問だった先生の父親であり、私が小学生の頃は、先生の道場にも通わせて頂きました。先生と過ごした時間を思い返してみると、誰と話す時も常に明るく笑顔だった姿を思い出します。

先生は、私が小学6年生になる前、それまで所属していた道場を辞めて、練習する場所がなかった私を快く受け入れてくださいました。さらに、それだけではなく、家から道場までの送迎もして頂いていました。先生のおかげで約1年間、練習場所に困ることなく柔道を続けることができました。そして私が小学校を卒業する時には、道場の卒業生を送る会に出席させてもらい、他の同級生と同じように送り出してくださいました。

しかし、私は何ひとつ先生に恩返しすることができないままでした。お世話になったのにも関わらず、先生の道場に顔を出すこともしていないし、柔道の成績で先生の耳に届くような成績を残したわけでもありません。でも、先生に胸を張って報告できることがあるとすれば、今もまだ柔道に関わり続けていること、そしてもうひとつはあの頃よりも柔道が好きなことです。

指導者としての先生は、それまで私の所属していた道場の先生の指導方針とは全く異なりました。私がそれまで所属していた道場では、全体的にみんなが強くて、大会でも上位が常連の道場で、「楽しく」というよりは「強くなるために」というような感覚でした。しかし、先生の道場では逆で、「楽しく」を目的とした指導方針でした。中には「強くなるために」と思って通っている人もいたと思いますが、道場の雰囲気としては「楽しい」感じだったことをよく覚えています。そして1番驚いたことは、習っている生徒の多さでした。毎週毎週新しい生徒が体験にやってくるような感覚で、その当時の私は柔道が人気であることにとても驚き、前にいた道場とのギャップになかなか頭が追いつかないような感覚だったことを覚えています。

最近では、行きすぎた勝利至上主義や親のマナーなどの理由で、小学生の全国大会が廃止になり話題になりました。振り返ってみると、私のいた道場も勝利至上主義に近かったと思うし、そのことに対して何の疑問も抱かずに過ごしてきました。しかし、先生の道場では勝ち負けよりももっと先のことを見ていて、まずは柔道を好きになってもらう、勝つことは重要ではないという考え方だったと思います。今になって、ようやく先生が目指していた道場の方向性を理解できるようになりました。

先生からすれば柔道を好きなってほしい1人の少年としてしか感じていなかったのかもしれないけど、私にとっては柔道の価値観が大きく変わる転換点にいてくれた人だと感じています。先生から教わったことやお世話になったことはたくさんあるし、一緒に過ごさせていただいた時間に思い出もたくさんあるけど、過去は振り返らず、先をみて歩んで行こうと思います。

これからも柔道を好きでい続けることが1番の恩返しになると信じて。ありがとうございました。

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