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小さいおじさん〜その8〜




お寺巡りが趣味となった20歳


あれ以来、僕はお寺や神社、仏像というものに夢中になっていた。
小さいおじさんが話してくれた話がとても残っていた。

「ありがとうございます。」
その気持ちをいろんなところで伝えて回っていた。

なぜかわからないけれど、気持ちが安らいで不思議とイライラや不安が薄れていた。

自分のことだけを考えているから不安になるのかな?
ちょっとだけど自分以外の誰かや何かを考える時間が増えそんなことすら考え始めていた。
スロットばかりだったギャンブラーの時の自分にはなかった感情だった。

そして、そんな自分がちょっと好きだった。笑


でも、現実の僕は、まだまだ職業はサプライザー。
”頼まれごとは試されごと“
それをひたすら繰り返していた。
まだまだ目に見えてなんて何も変わっていない。
変わってることといえば、貯金の残高が目に見えて減ることくらい。

悔しいし情けないけれど、貯金の数字時が減ることと、自分の心のゆとりがなくなること、不安が大きくなることは比例していた。

だからこそ、そんな自分から逃げるために、忘れるために夢中になってお寺や神社をめぐり、ありがとうございますと言っていたのかもしれない。。

矛盾ばかり。
それが当時の僕だった。




2発の爆弾



いつもと同じように誰かのお願い事を終わらせて帰る時にそれは起こった。

車へ戻ろうとコインパークへ歩いていると、人が二人並んで歩くのすら狭い細い歩道の正面から自転車に乗ったおばちゃんが来た。

全然スピードを緩めない。

10メートル
5メートル

これだけ近くなってもスピードを緩める気配はない。。

こんな狭い道なのに。絶対譲らない。歩行者のこと考えろよ。
そう思ったところで相手はおばちゃん。

日本一メンタルが強くブレない生き物。

メンタルはグラグラ。生き方もフラフラ。
そんな僕が敵うはずもない。

僕は、細く狭い道で置いてあった自販機の横にグググっと体を横に細め道を譲った。

勝者、おばちゃん。

すれ違いざま、ありがとうすら言わないこのおばちゃんの心はどうなってんだ?と心から思った。

そして、自販機横から道に出た瞬間、左の腕に生暖かさとヌルッとした感触を感じた。

・・鳥の糞だ。

クソが!!!
上を見上げたけれど鳥はどこにもいない。

急いで車に戻りティッシュで拭い取った。
でもなかなか綺麗にならない。

仕方なしに自販機で水を買い流してまたティッシュで拭く。

なんとも言えない気持ちで家へと向かった。


40分ほど車を走らせ家に着いた。
僕の実家は家と車庫が少しばかり離れている。

車庫に車を入れ、家の玄関までは約50メートル。

歩くや否や、左肩に何かあたたかさを感じる。

本日2発目。鳥の糞。

驚きと悲しさと怒りで僕はその時着ていたTシャツを剥いでゴミ箱に捨てた。
こんな1日に二回も鳥のフンをかけられた服なんて縁起が悪い。運が悪くなる。
なんの迷いもなくゴミ箱に入れた。

おばちゃんにも鳥にも敗北の1日。




運のいい人ってしってるか?


この日、僕はまた小さいおじさんとご飯を食べていた。
先日のおばちゃんと鳥の糞の日のことを僕は話した。


小さいおじさん
「ぬはははは!なにそれ?めちゃおもろいやん!いや〜ほんま持ってるよな!」


小さいおじさんは楽しそうだ。
僕は、本当にツイていない、運がなかったことを伝えたかった。


小さいおじさん
「いやいや、付いてるやん。糞(うん○)。ほんま持ってるわ〜ずるい!」

笑い飛ばす小さいおじさん。
だまって睨む僕。


小さいおじさん
「いやごめんな。ほんまにウケてん。でもな、絶対お前は持ってるよ。運なんて悪くない。お前、運の良い人の定義たぶん間違ってるで?
宝くじに当たった人の事、運の良い人って定義してへん?」


まさにその通りだった。
というか、それしか思い浮かばなかった。


小さいおじさん
「いや、わかるで?俺も最初そうやったもん。俺やっていっつも思ってたんやで。なんで俺には運がないんやろ?なんで俺はツイてないんやろ?ってな。
でもな、俺もいまでも尊敬してる人に教えてもらったんよ。
運がいい人がやってること。
なんやと思う?」

なんだろう?
そう思いながらも頭に浮かんだことを答えた。


「ん〜、神様仏様事を欠かさず大切にしている人ですか?」


小さいおじさん
「それも正解。でもな、それは当たり前の事やねん。神様仏様ご先祖様。ここを大切にするってのは当たり前のベースやねん。

あんな、“運が良い”。この字をジ〜っと見てみな。
シャレちゃうからな!」


字を見る??
小学校の時に習った字だから見慣れてはいるんだけどさっぱり解らなかった。


小さいおじさん
「難しくないで。シンプルやねん。
運って字は、運ぶとか運動って言葉でならったやろ?
その通りやねん。動きとセットやねん。
静でなく動。

つまりな、動いてるから運は良くなるし運がやってくんねん

お前がいくら、勉強したって運はやってこうへんで?
動いたからこそ運はよくなんねん。

人のお願い事を頑張ってこなして、サプライズでグミを配る。
その帰り道、鳥の糞が2発直撃。確かに疲れてる時なら嫌になるよな?
でもな、ちょっとだけ考え方変えてみ?
もしお前がその人のお願いごとやってへんかったら鳥の糞はつかへんかったやん?そしたらお前は疲れて帰っただけ。

でも、鳥の糞がついた。それも二発。これ、とびきり運がいいねんで?
今度、その時にお願い事をしてくれ手伝った人に話してみ?

帰り道に2発も鳥の糞あびたんでっすって。人生で絶対にわすれらない出来事になりました!あざっす!って。
もうな、その人の記憶にずっと残るで?なんてポジティブなやつなんだって、なんならその人が笑い話として、この間手伝ってくれた子がね〜って、お前のことをたくさんの人に話してくれるかも知れん。これめちゃくちゃお前はラッキーやん?」

そんなこと考えもしなかった。
僕の中で最悪だった出来事が一瞬でなんだか最高な出来事になった気がした。




究極の考え方の伝授




小さいおじさん
「俺な、お前の気持ちめっちゃわかるよ。だって俺も全く同じやったから。
いろんなセミナー行って、いろんな人に会って話を聞いて、いろんな本を読んでめちゃくちゃ知識量増やして自分に自信を持たせて、成長させようとしまくってた。

でもな、ある時に気づいてん。
あれ?俺、頭でっかちのカッチカチの頭になってしまってるって。

なにかをしようとすると、得た知識でこれは無理とか効率が悪いとか瞬時に考えて辞めてしまってんねん。失敗せんように。
人から何か言われても知識から考えて否定的な理屈ばっかり返す。

そんな時に俺な、師匠と思ってる尊敬してる人に言われてん。

“お前は知識は増えたけど人生でいうとレベルアップしてない”って。

まぁ〜悔しかったよな、あん時は。

でもな、その人が話してくれたことに真実があって俺、ほんまその通りや!って気持ち改めて、頭ん中もリセットしてん。」


この小さいおじさんでもそんな時があったの?
なんだか不思議な気持ちだった。



「その人が話してくれたことってなんですか?」

小さいおじさんを買えたという言葉を聞きたかった僕は素直に聞いてみた。

小さいおじさん
「聞きたい?」


ニヤ〜っと笑っている。

そして話出してくれた。

小さいおじさん
「あんなやっぱホンマにシンプルやってん全て。

間違えたくないとか、失敗したくないって思って知識を蓄えてきた俺に、その人は何にも俺の真実じゃないって言ってくれたんよ。

人に聞いてその人の成功体験や失敗談を聞いて、俺は安心してたわけ。
本を読んで俺はそれを見たつもりになったり、賢くなったつもりになってたわけ。

でもな、どれも俺の真実じゃなかってん。

だって俺自身が経験してへんから。

俺が話すことは誰かや何かの言葉や、誰かや何かの体験ばかりで、俺の経験とそんときの気持ちが何一つないから。

その人にな、“人の人生、現実でない人生を生きてて何が楽しいの?“

そう言われて、衝撃が走ってん。

あかん、俺、経験値ゼロやって。
例えばワンピースのルフィに俺自身がならなあかんのに、ルフィの友達がルフィの武勇伝や経験を語るみたいな、そんな感じ。俺は命をかけて死闘してきたわけでも、自分の目で見てきたわけでも、何もリアルがないのに自分事にしてしまっててん。

あんな、これ覚えとき。俺がもらった自分が変わった言葉。

ともかくうごこう

これが極意やってん。」




ん??
ちょっと待ってよ。
途中までめちゃいい話だったのに極意が、
とにかくうごこう?
とにかく動こう??

なんじゃそりゃ!!!

頭の中がチンプンカンプンだった。

すると何やら紙に書いて説明をしてくれた。

そこにはこう書いてあった。

ともかくうごこう
◎知  覚  動  考
× 知  覚  考  動


小さいおじさん

「この字見てみ?な?その通りやろ?

普通の人ってな、俺もそうやったけど下の方やねん。
知覚考動。

でも、ほんまに大事なのってな上やってん。

ともかくうごこう。
知覚動考。

知って覚えて考えてから動くんでなく、
知って覚えて動いて、いや動きながら考える。

これが大事やねん。ほんまに。

時間。命の時間。
これがホンマは一番儚く大切やねん。
戻ってこうへんで、今のこの瞬間は二度と。

失敗したっていいんよ。まずやってみろ。
やりながら考えろ。
動いて動いて動いて
失敗してもお前は死なへんねん。
失敗してたら一個成功事例と事実、体験と経験が残るねん。

動いて失敗してもな、それが悪いことちゃうし、
運が悪いじゃないねん。

動いた分、着実に夢や目標には近ずいてる。

動いて動いて失敗してもポジティブに捉えていけば、運は自分でいくらでもあげられるねん。

全部自分で経験せんと。
その経験が全て。お前の真実。

お前はワンピースを読んで人の冒険で気分高らかになりたいのか?
それとも、お前の冒険を楽しんで経験を積んでいくのか?
どっちになりたい?

それが俺が変われた言葉だよ。」

初めて小さいおじさんの師匠の話を聞いた。

大切なことって本当に本当にシンプルなんだ。

今までは話を聞いて泣いていたけれど、
この日の小さいおじさんの話はなんだか勇気が出た。


小さいおじさんの教え〜その8〜
ともかくうごこう。運は自分で動かせる。









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