ポケストの申請/審査とIngressとの不一致

本日、日本時間の2019年11月14日に日本でのポケスト申請とWayfarerがTL40以上に解禁されました。

これは遅かれ早かれそうなることだったので別に驚かないのです。意外なことに、申請に関しては誰でも行えるようにしたほうがいい、という考えなのですよ。Ingressの頃からそうなんですが、申請にレベルが必要ということに違和感がありました。確かに低レベルから申請できてしまえば審査機構は大量の申請投稿に押し潰されます。ただ、自分の見たものがゲームに反映されるという感覚はこういったゲームでは何にも替えがたい特別なものです。単なる記録としても機能します。


そういうこともあって私は、ポケストをポケモンGoから申請できるようになったことは素直に良いことだと思います。ただし違和感は拭えない。


1.ポケモンGoは「ポケモン」と「位置ゲー」が微妙に噛み合っていない
2.ポケモンGoにはポケストに関する背景がない
3.ポケストが増えても地域格差は減らない


まず、ポケモンGoをしている人にちょっとだけ考えて欲しいのですが「なぜポケストは現実に存在するオブジェや建物が基準になっている」のでしょうか?ドラクエウォークを見てください。別に既存のオブジェクトが回復スポットになっているわけではないですよね。試練の扉が重要な歴史的な建物に一致しているわけでもありませんよね。
DQウォークをしていれば、補給地点がわざわざ現実になぞらえる理由はありません。確かにポケモンGo登場初期のポケストは地蔵や公園がポケストになっているなど面白がられました。でも現在、それを楽しむ人がいるでしょうか。
ポケストやそうなっている理由は、それがポータル由来だからです。


ポータルもポケストもそれぞれがゲーム上で重要な役割を担っているのは確か。ただし、Ingressはポータルに直接アクセスする一方で、ポケモンGoはあくまでもポケモンの蒐集・育成・バトルを中心です。


Ingressには日常で過ごされがちな面白いポイントを発見することがゲームの根底にあり、ほぼ全ての行動がポータルを基準にしています。ポケモンのようなキャラクタを集めたり、ドラクエのパーティ育成機能はありません。純粋な位置情報ゲームです。
そして、記憶のポータルという例外を除き、ポータルは実際に存在するオブジェを基本にしています。Ingressの基本は、現実のモノを探し歩くことであり、背景ストーリーにおける「XMが湧き出るのは場所」としてゲーム上は存在するからです。ポータルは現実とゲームの中に存在するもう一つの世界を繋ぐ存在であり、現実もゲームも同一なことが要求されます。例えばミッションで現実と不一致のポータルを使ったらおかしいですよね。ポータルにはゲーム上のドット以上の価値を与えられているのです。


一方のポケモンGoは、ポケモンをするゲームなのでポケストの存在が非常に薄い。Ingressというまったく違うゲームからその地点の情報だけを抜き取っているので、ポケストに関する背景や理由がありません。見えるのはあくまでもゲーム的なドット。現実のオブジェクトと異なったり、説明文が間違っていようと、ポケモンGoの中で修正が行われることはありません。面白さやユニークさを求められているわけでもありません。極端な話、ゲームの効率性だけでいえばまとまった数存在しさえすればいいのです。ポケストに質は求められません。

同じゲーム上のPOI(興味深い特定の地点)でも、IngressとポケモンGoではその価値観が全然違います。例えばIngressでは、補給地点、リンクアンカー(三角の起点)、ミッション等の経由地点、など同じポータルでも役割が異なります。補給にはある程度密集していた方がいいのは確かです。しかし三角を作るのなら密集しすぎが必ずしも有利にはなりません。むしろ離島や半島の先端など、特殊な場所にあるポータルが役に立つ場面すらある。またミッションではポータルの由来や歴史が重要なのはいうまでもない。MDではそれを前面にアピールするのですから。こういった、物理的要素との親和性がポータルの特徴でもあります。


逆に虚偽のポータルはIngressにとって興醒めでしかありません。


そうかんがえると、Wayfarerでは基準がしつこく問われ、場所が現実に即しているかを細かく考えさせられる理由が分かります。

Ingressにおけるポータルは現実との結びつきに強いこだわりを持つ一方、ポケモンGoではあくまでも補給やポケモンを呼び出す装置。ジムという存在は少し意味合いが違いますが、これも現実の要素と結びついている必要は特にありません。

これらを踏まえた上で、ポケストやジムがDQウォークのように街中にランダムに均一に存在していた場合を想像してみてください。別に違和感はないはずです。味気ない代わりに補給に困ることはなく、ジムの不均衡も解消されれば大きな不満はないでしょう。まあ今は歩行によってアイテムが手に入るので、補給の面はそこそこ改善されてはいますが。

しかしポケモンGoはあくまでもIngress由来のポータルに拘っています。蒐集・育成・バトルといった要素が中心のゲームなのですから、トレーナーはそれらを効率よくプレイした方が気持ちがいいでしょう。でもポータルは決してトレーナーの有利には配置されていません。ポケモンを楽しみたいのに別のゲームの大事な要素が邪魔をしているわけです。これはポケモンが悪いのでも、Ingressが悪いわけでもありません。相性の悪いものを混ぜたのが駄目だったのです。ポケモンGoをしてからDQウォークをすれば、ドラクエと位置ゲーの親和性の高さを感じられると思います。なのにポケモンGoは、ポケモンという要素とIngressという要素が、まるで砂と粘土のように混ざっています。


これが1つ目と2つ目。


3つ目ですが、この申請・審査システムは必ずしもポケモンGoの地域格差貢献につながらないと言うことです。第1に申請から審査を経てもそれがポケストになるかどうかはわからないということ。第2にポケスト候補の多くは既に掘り尽くされていること。第3に申請過剰だったり不正な投稿が続けば停止される可能性があること。第4にポケストを増やしたところで効率の面では都会には敵わないということ。

第1。Wayfarerはポータルやポケスト(および魔法同盟の砦等)になることを前提にしています。しかしポータルとポケストが発生する基準は異なるため、ポケストを作りたくてもポータルしか発生しないか、仮にポケストになってもジムに昇格できないことも多々あります。あと、意外と申請から審査を経て発生するには時間がかかります。

第2。Ingressが先日7周年を迎えました。ということは申請の空白期間を除けばおよそ5年近くエージェントの申請や審査が行われていることに相当するでしょう。そもそもポケストが必要な地域の大部分はあらかた申請が済んでいるはずですし、これ以上増える要素があるかは疑問です。仮に増えるとしても都会とは密集度や総数の格差はあまり埋まりません。地域でアイテムの供出量を調整するらしいのですが、それが功をそうするのでしょうか。

第3。そもそもIngressで申請が一時停止したのはiOSの申請解禁に伴う過剰申請からです。審査をアウトソーシングしたとはいえ、現状の審査の中であきらかな不正手段をとった投稿が続いて精度が低くなるか、過剰な申請が続いてパンクすれば、Nianticもこの制度を見直すでしょう。実際、既に不正と思われる投稿もあります。


第4。これは単純な話ですが、田舎でポケストを一つ増やす手間よりは、都会に出た方が楽です。ぶっちゃけ地方で快適な位置ゲーをするならDQウォークをした方がいい。


ポケモンGoの視点からWayPointを探す試みは非常に興味深いのですが、そもそもポケモンGoには位置ゲーとしてのポケストの役割が薄い、というか邪魔。本来のポケモンとして楽しみ方に、Ingress的価値観を導入するのは無理があります。ポケモンGoとしてはポケストが増えればいいのでしょうが、Ingress的には数もそうですが質の方が重要です。


この不一致さを抱えたままでいいのでしょうか。

もしNianticがIngressと同じようにポケストをみて欲しいのであれば、ポケモンGoの中にポケストをより深く組み込まなければなりません。ストーリーとしてもっと重要な役割を担い、ミッションのようにポケストを個人発進でアピールできるようにしたり。


私が思うに、ポータルなどのPOIはIngress的な遊び方が一番楽しい。ポケモンGoはドラクエ的の方が楽しい。両方のいいとこ取りをしたいならば、全く新しいゲームを作ってしまうべきかと。まあ、魔法同盟は失敗ですよね。期待するならカタンでしょうか。

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