ゲームとはなにか。Ingressはゲームなのか #ingadv2021
これは Ingress & Wayfarer(その1) Advent Calendar 2021 の19日目の記事です。
毎年恒例のIngressのアドベントカレンダー。数年前からWayfarerの要素も(自分が勝手に)追加して他のNianticゲームも参加しやすくしました。今年も同じ場を設けられたことに感謝します。
最近は自分のブログもおろそかですし、IngressのWikiっぽいものをつくるという話も中途になっています。こういう場に毎年参加することで書き手としての感性をギリギリ保っているような状況です。なのでだいぶ推敲がメチャクチャな部分もあると思いますが、ご容赦ください。
あ、それと来年子供が生まれます
ゲームの定義
難しいテーマのようですが、なんのことはなく気にいってる記事の紹介+アルファというスカスカの内容です。背伸びせず書いてます。
ゲームという言葉は非常に難しい用語です。それ自体にも複数の意味が重なり、人によってゲームによって見え方が異なります。ゲーム理論を元にする人や、古くからのビデオゲーム、TCGやボードゲームといったテーブルトップのゲーム。今の主流であるケータイ端末やPC上でのゲーム。あるいは鬼ごっこといった原始的な遊び。こういうものからどれをチョイスするかでも随分変わるでしょう。
Ingressの考察を大量に書いてきた吉方さんの記事には、ゲームは現実である、と書かれています。
この記事がかかれた同人誌は当時のIngress界隈の事情が盛り込まれていて非常に読みごたえあるのですが、その紹介は別の機会に。
Mark Rosewaterによるゲームの定義
今回紹介したいのは、マジック・ザ・ギャザリングの開発部門にいる人の記事です。マークはマジック・ザ・ギャザリングという世界最古のTCGの開発部門において、ゲームデザインの定義を作ったそうです。
ここで重要なのは、この定義は決して万人に対して受け入れられるべきものというわけではなく、あくまでもマークの中で作られた定義に過ぎないということです。
マークはゲームというものをざっくりと
目標がある(ゲームで勝利する方法などのプレイヤーがすべきこと)
制限がある(プレイヤーを阻む妨害。色や形、性能や時間制限などの予め決められているもの)
行為者性がある(プレイヤーの行動によってゲームに何らかの影響がでること。プレイヤーがミスをするとクリアできないなど)
現実的意味がない(あくまでもゲームはプレイの体験を行うもので、現実に結びつくものではない)
という4つを満たすものとしています。詳しくは「Making Magic -マジック開発秘話- ゲームとは何か」を参照してみてください。とてもおもしろいです。
玩具、活動、出来事、生活
マークは4つの要素のうち、1つを欠いたものを例示しています。
玩具:レゴブロックには目標がない
例えばレゴは何をどうすればクリアかも勝利かも決まっておらず、目標のない行為をしなければいけません。
活動:ジョギングには制限がない
例えばジョギング自体に制限はなく、外部から何らかの妨害を受けたりルールを課せられるわけではありません。
出来事:映画には行為者性がない
わかりづらいですが、映画には行為者性がありません。自分の目の前で映画が上映されていても、その内容を自分が改変したり結末を変えたりすることはできないからです。
生活:スーツケースの荷造りは現実的意味がある
生活は割とシンプルで、旅行をする際にスーツケースに衣類などを詰める行為は目標も制限も行為者性も現実的意味もあります。これをゲームと言う人はあまりいないのではないでしょうか
同じゲームでも、マークの定義に必ずしも当てはまるとは限りません。例えば「マインクラフト」におけるサバイバルモードとクリエイティブモードでは、前者はゲームだけど後者は玩具である、としています。
サバイバルモードは生き残り死なないという明確な目標があるのに対して、クリエイティブモードではそういうものなく、目標を与えられずに作りたいものを作るだけだからです。
もちろん、同じものでも人によっては違う解釈も存在するでしょう。例えばレゴには制限があるかどうかは人によります。
Ingressをマークの定義に当てはめる
ではIngressをこのマークの定義に照らしてみます。
Ingressには目標がある
Ingressには目標があります。相手の陣地を妨害しつつ自分の陣地を広げる、というのがこのゲームの最もわかりやすい目標です。
ミッションならばミッションを完成させることですし、アノマリーでは陣営の勝利という大きな目標があります。
Ingressには制限がある?
これは非常に難しいのですが、原則Ingressには制限があると思っています。ポータルは1プレイヤーが好きに配置することはできませんし、インベントリーも個数制限があります。なにより地理的・物理的な制限というものがゲームに大きな影響を及ぼすのがIngressなどの位置情報ゲームの特徴です。
もしくは、人間の行動範囲でいけるならどこまでも制限がない、という意味ならばIngressの地理的・物理的制限は存在しないとも解釈は可能です。
Ingressには行為者性がある
これは明白なことですが、Ingressはプレイヤーの行動であらゆることが左右されます。映画や小説をみてもそれ自体の結末に影響しないのと対象的に、Ingressはエージェントの行動で物語も勝敗も変わります。
Ingressには現実的な意味がない
当たり前ですが、XM(エクゾティックマター)という物質は存在せず、青と緑の陣営のどちらが勝利を収めようと、それが現実世界に影響することは決してありません。
例えばアノマリーで緑陣営が勝つことで大統領選挙が動いたり、温暖化が収まったり、会社の株価に影響したりもしません。せいぜい、アノマリー後の深酒で次の日の仕事に影響する程度でしょう。
以上を鑑みるに、マークの定義を使用した場合にはIngressとはゲームである、と考えられます。
エージェントはIngressをゲームと思っていないのはなぜ?
Ingressはゲームに擬態したコミュニケーションツールである
先程の結論に反して、Ingressをしていれば「これはゲームなのか」と思う場面は多々あります。実際、多くのエージェントはIngressをゲームとは思っていないでしょう。自分もそうです。
その考えはポケモンGoトレーナーの間でも有名らしく、「エージェントは決まって、Ingressはゲームじゃない、と言っている」と伝わっているようです。
自分にとってのIngressはコミュニケーションツールであり、現実を探索する一つの手段です。ゲームというカテゴリーには含まれないようにみえます。
そもそも、Ingressというゲームの成り立ち自体が「これはゲームであってゲームではない」という考えから始まっています。物語としては、XMという物質を可視化するスキャナーという装置をゲームに偽装して世界中に広がったのがIngressです。原理主義的に言えばIngressはゲームではなくあくまでもスキャナーを通した世界の見え方の一つでしかありません。
また、自分の中にはある「願望」が存在します。Ingressははっきり言えば既存のどのゲームにも共通しない要素が多く、また現実に近すぎる存在です。そしてあまりに稚拙。他のあらゆるゲームに比べれば単純すぎ、ゲームのルールだけでは解決ができないことが多々あり、その他の完成されたゲームと比肩させたいと思えない要素が多々ある未熟なゲームだからです。こんなにも人間関係に左右されやすく、こんなにも現実との接点を気にする必要があるものを他に知りません。それはポケモンGoやテクテクライフやドラクエウォークなどが登場してなお、変わらない考えです。
だから「Ingressはゲームではない」というのは、「ゲームであってほしくない」「こんなものをゲームといいたくない」という願望が含まれています。
もちろんそう思っていない人もいるでしょう。
そしてIngressだけをコミュニケーションツールであると考えるわけではありません。むしろ多くのゲームはコミュニケーションツールと思っていますし、その考えは広く理解されているものだと感じます。
例えばモンスターハンターやFFなどのオンラインゲームを通じて知り合ったカップルが結婚した話などは枚挙にいとまがありません。ポケモンGoもIngressも同様です。現実的にゲームを通じて知り合い、仕事仲間になったり結婚したりすることはもはや珍しいことじゃない。
世間一般でどうかはわかりませんが、少なくともゲームを楽しんでいる人達にとって、ゲームがコミュニケーションツールであることは常識となっているはずです。
エージェントが大規模作戦を好きな理由
大規模作戦とは、日本を覆ったりハイパーノヴァをしたりフィールドアートをすることを意味します。また、MissionDayを企画したり、アノマリーで勝利をおさめることに全力になる人もいます。
しかし大規模作戦というのは実は不毛です。仮に日本を覆ったり関東地方に巨大な多重CFを作っても、それが陣営戦に貢献するかは運ですし、個人の実績としてカウントされるとも限らないからです。例えばリーダーになった人が巨大なCF作りで大きく貢献しても、スキャナーを立ち上げていなければ一つの実績にもなりません。
また、他に似たようなCFが近くにあって注目されないことも珍しくありません。
作戦は規模の大小によらず多くの場合は不毛です。Ingressとしてそれをやる意味は必ずしもないでしょう。しかしエージェントはこういうのが大好きです。これは自分の考えですが、大規模作戦はIngressとしては意味がないかもしれないが、位置情報ゲームとしての楽しみが存分に味わえるからです。
遠距離の都市間のポータルを結ぶとしたら
仮に「東京と中国の上海と札幌を結ぶ三角形を作ったら」と考えてください。その3点を地図上で結ぶことは容易です。またその3点を旅行することは現実でも問題ありません。
ではIngressにおいてこの3つをリンクさせることはどれだけ大変かわかりますか?
それぞれの都市に住む3人が協力すればいいだけの話ではありません。東京と札幌2点を結ぶだけでも、その間を通る無数のポータルとリンクをすべてすり抜ける必要があります。リンクは数十mから数百キロにもおよぶでしょうから、これらのすべてを切り分けなければいけません。しかも片方の都市からリンクするにはもう片方の都市のポータルキーを事前に入手する必要もあります。途中の妨害や立ち入れない場所などはどうすべきかなども考慮しなければなりません。これを3都市で行うのです。しかも中国と日本なら言語の壁も存在します。
何人、何十人、何百人のエージェントが実際に現地に行って活動しなければこの作戦が実るのか。想像するだけで恐ろしい。しかも大量の人員とお金と時間と手間をかけても得られる成果はフィールド1つだけ。それも限られた人の実績になり大多数の人は小さな実績しか得られません。失敗すれば全て無意味ですし、作戦を報告しなければ誰もわからないで終わるかもしれません。
もっといえば、そのフィールドを作るだけならば大量のbotによる位置偽装を駆使すれば数人でも作れてしまいます。
この仮の作戦は少々大げさではありますが、エージェントがそういった作戦を過去に行ってきたのは事実です。自分も何度も参加しましたが、こういった作戦の仮定が大好きです。
自分たちで目標を立て、人員や日程の調整あるいは必要な資料を集め、決して外部にもれないように隠密に行動しつつ、決行日にはヒャッハーして、最後はSitrepで締めくくる。決して報われることばかりではなく、罵詈雑言を浴びることも多いです。また作戦の規模は1日でできるものから数ヶ月かかるものまで様々です。ですけど、どの作戦も不思議と楽しい。特に朝と同時に成果が全世界に知れ渡ったときなど最高です。
不正をするならいくらでもできる。自分の実績稼ぎのためなら複垢だろうが位置偽装だろうがなんだって可能。だけどIngressは単にレベル高い人を集めれて誰かが指揮を取ればなんとかなるわけではありません。キーの受け渡しをする人、現地に行ってリンクカットする人、妨害のためにデコイとなる人、離島に行って防御のためのリンクを張るだけの人、立ち入りが制限されている場所に特別に入ってリンクを張る人、IntelMapを注視して支持を出す人、運転する人、根回しする人、宴会を整える人、最後にレポートを出す人。それぞれでやることは簡単かもしれません。でもこういった作戦は「その場に行かなければ達成できない」という壁があるから面白さが生まれます。
やればわかりますがこういうのは既に、個人の実績でも陣営の勝利でもIngressとしてのゲーム目的でもありません。
できるからやってみた
やってみたいと思ったからやってみた
作戦後の集まりが楽しいからやってみた
そんな程度です
こういった作戦において、Ingressのゲームとしての意味は限りなく薄いものです。もちろん普段の活動を否定はしませんが、こういったものを通してみると、Ingressがコミュニケーションの媒介として成り立っているだけで実際は世界を使って遊びつくそうという環こそが面白いと感じています。
ここまで来たら、もはやスキャナーを開くことがIngressをすることとはあまり思えてきません。エージェント同士でだべることも全然IN活に思えます。
Ingressはゲームですが、そのゲーム部分はスキャナーをもって歩き回るという活動だけのもので、本当はもっと大きいなにかの一部と自分は考えています。
Ingressは実はちょっとずつ変わってきている
スキャナーがPrimeになってから触っていない人も多いと思いますが、実は少しずつIngressも変化してきています。
例えば、ドローン機能というポータルを渡っていく機能、訪れたことのあるポータルを可視化する機能、そして最近実装されたNianticSocialというゲーム内のSNS機能です。
NianticSocialは他のゲームとの連動を前提にしている上にスキャナー上でしかアクセスできませんが、なんとなくワクワクさせる存在です。
かつてのGoogle+とは言わないまでも、機能のアップデートとゲームから切り離して単体で動作してくれると嬉しい限りですね。
それと、ポツポツとエドガー・アランメダルという、Ingressに貢献した人々にだけ配られる限定メダルも配布され始めています。
献血とIngress
最後に取って付けたようになってしまいましたが、お知らせをしておきます。
今年もRedFactionの季節がやってきました。Ingressから引退しても献血だけは続けているという人は多くいるでしょう。2014年頃からやっているIngressの献血イベントRedFaction in関東甲信越2021-2022が今年も開催されます。
期間
第1期 令和3年12月25日(土)~令和4年1月31日(月)
第2期 令和4年3月19日(土)~令和4年4月30日(土)
開催場所
関東甲信越ブロック内各献血ルーム
参加方法
受付にて「RedFaction」に参加の旨、お申しつけいただき、献血又は寄付にご協力ください
特典
第1期では東京のご当地けんけつちゃんデザインのBIOカードを新たにご用意いたしました。
新バイオカードデザインを踏襲したものなので、コレクターの人はぜひ集めてください。
毎年のことですが献血を実際にしなくともアンケートなどの形でも参加可能です。全血・成分献血のどちらでも対象になりますが、献血ルーム以外では配布できないのでぜひ関東甲信越地方の献血ルームに起こしください。
自分はなんだかんだいってRedFactionを通じて毎年献血をするようになりました。目標は全県制覇。コロナで血液が逼迫しているため、エージェントの力をあわせていきましょう。
Ingressはゲームですがゲームとはあんまり思えません。こんな不思議なものは今後絶対に作られることはありません。そんなものを今でも楽しむ人たちとこれからも楽しめたらいいな