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陣形の話(後編)

皆さまこんばんは、弓削彼方です。
今日は前回の陣形の話の続きで、基本八陣の残り二陣の解説と、現在での陣形の意義のお話となります。


■雁行の陣
(がんこう)

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鳥の雁が飛ぶ時に、斜めに並ぶのと同じ形をした陣形です。
敵との当たり方が二通りあり、右側のように一番前に出ている部隊がまず敵に当たり、随時入れ替わって二番手・三番手と次々に味方の新手が敵に当たるようにして敵を消耗させる戦い方。
もう一つは左側のように中央の部隊がまず敵に当たり、左右の部隊が包囲して殲滅する戦い方です。


■偃月の陣(えんげつ)

偃月

あえて前方に大将と直属の精鋭部隊を集め、後ろに続く新兵を先導しながら突撃する陣形です。
士気と練度の低い部隊を率いて止む得ず敵と戦う場合に、敵将を討つか中央突破をして逃げ切らないと、どの道全滅と言う時に使います。


■現代における陣形の無意味さ
散々陣形の説明をした後で申し訳ないのですが、現在の戦いにおいて陣形は殆ど意味を成しません
理由は大きく二つあります。

一つは目は小火器や重火器の威力が著しく増大したことです。
この結果下手にまとまって居ると、一気に全滅する危険性だけが大きくなりました。
ですので、陣形を整えて密集していると格好の的になってしまいます。

二つ目は航空兵器の台頭です。
かつては平面の戦いでしたので、大将の前に二重三重に防衛線を敷けば、指揮官である大将の安全は確保でき、戦闘を継続することができました。
しかし、航空兵器で防衛線を容易にすり抜けられるようになり、直接大将を狙えるようになった今は陣形の価値は著しく低下しました。

以上の理由により、陣形の意味が失われて行きました。


■現代にも残る陣形の意義
上記で説明した通り、現代ではかつてのように全軍で大規模に陣形を整える意味は無くなりました。
しかし、陣形の意義が失われた訳ではありません

例えば映画でこんなシーンを見た事はないでしょうか?
大量のゾンビに襲われた部隊の隊長が、「ジョンとヘンリーは左を、カレンとマイクは右を、残りは俺と一緒だ。正面から来るぞ!」みたいなシーンです。
図にするとこんな感じになります。

シュワちゃん

隊長のアーノルド・シュワルツェネッガーが部下達と共にゾンビの大軍を迎え撃つわけですが、これでシュワちゃんと一緒にいる部下達がゾンビ達を正面から押さえ、左右に分かれた二人組が左右から砲火を浴びせます。
これは前回説明した、正面が耐えている間に両翼が敵を包み込んで包囲殲滅する鶴翼の陣とやっていることが同じです。
陣形と言うよりは小部隊の戦闘隊形と言うべきでしょうが、その中に陣形の理論や考え方がしっかりと受け継がれているのです。

ですので、陣形の形やその意義を知ることは現代でも有効です。
その知識をどのように現代に合わせて使っていくかが重要と言えるでしょう。


以上、前回と合わせて基本八陣の説明と、その陣形の理論や考え方は現代でも応用して使うことができると言うお話を終わります。
次からは「人心を得る」と言うお話を、数回に分けて行います。
それでは、また次回の講義でお会い致しましょう。

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