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すべてのゲーマーには名前がある

「ゲームで決着つけようや」の合意ができるまでに 2 桁の犠牲者が出た。地下に急造された配信スタジオのゲーミング PC の前に 2 人、それを囲むように10人の人気ゲーム実況者がこのくだらない抗争の結末を見届けようと集まった。

アリゾナの配信者・Miss Cinder の最期の言葉は「何の騒ぎだってんだ、クソ野郎共!」だった。続いた発砲音、押し入る警官たちの様子と合わせて1万人の視聴者がそれを聞いた。

彼女の自宅兼スタジオに強盗が立てこもったと虚偽の通報をしたのはカナダのハイティーンだった。敵味方問わず口汚く罵る彼女の配信は過激なアンチを抱えていた。

犯人はメキシコの人気ストリーマー・Glorious Oven の熱烈なファンだった。事件以前、Ovenは彼のファンコミュニティで Cinder についてコメントしていた。「画面の向こうの相手にしか強気に出ない負け犬」「誰かが痛い目にあわせないといけない」と。この発言が火種となり、Ovenは自宅へ届いた三角コーンに付いていたプラスチック爆弾で左脚を失ってチャリティ配信者としての人生をスタートした。

配信者はコメント欄に溢れる「何故 Cinder は死ななければならなかったのか」の質問に頭を抱えた。送りつけられた宅配ピザに恐怖し引っ越しを余儀なくされたストリーマーは数えるまでもない。

そこら中で彼らの過去の言動が燃えていた。互いが互いを、或いは互いのファンについて誹謗し続けた。マフィアが運営する賭博サイトとの繋がりも明るみに出た。企業は配信者へのスポンサーを縮小した。ゲーミングチームはお抱えの配信者の自宅やスタジオの警備を強化した。個人で活動するストリーマーも信頼する者同士で共同生活を始め、自己防衛に努めた。まるでギャングだった。

とあるゲームイベントがベガスで開催された際には彼らが滞在するホテルの前で小競り合いが起き、遂に死傷者が出た。あとはもう止まらなかった。【続く】

Photo by sebastiaan stam on Unsplash

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