未来の亡霊
私の孫は銃に撃たれて死んだらしい。本人がそう言ってる。正確には本人のお化けが。暴漢が突きつけてきた銃口の向こうには走馬灯が何重にも浮かんで極彩色になってそりゃ綺麗だったそうだ。私、まだ10代で娘も産んでないんだけど。
「エンカンテキ時間のガイネンが証明されたってわけ」と、らしい言葉を並べて得意げに話す。未来からの亡霊は物知り顔だけどどう見てもおバカ。
時間は一直線に進むと思っていたけど違ったらしい。時間は輪っかの中を進んでいる。えーごーかいきとかそういうの。
ただ、同じところから出発した時間は同じ方向に進むわけじゃなく、正反対へ進んだ時間同士が輪っかの反対側でぶつかり合う。私の部屋で壁から半身を突き出してお化けは説明する。
「到達点って呼ぶらしいよ。未来では常識。2080年の12月」
到達点の向こう側で私の孫は死んで産まれる、はずだった。
「2062年11月22日なんだよね、私の誕生日」
到達点を跨いで意識と体がある。こちら側と向こう側。すると意識だけが到達点を突き抜けてお化けになる、体は一つしかないから。「良く分からない理屈……」「ヘーキだよ、これからオバケどんどん増えるし」
半透明の10代後半の姿でフワフワ浮かんでいる孫は恐ろしいことをいう。到達点を意識だけが突き抜けるのは自然な現象らしい。見せる見せないは選択が効くんだと平然という。彼女は私より少し背が高く大人びて見える。バカだけど。
向こうでも過去からの亡霊が出始めた時は大騒ぎだったけど、こちらから行ったお化けの方は慣れたものだったらしい。意識の流れは逆だけど白黒反転しただけのようなもので意思疎通も表面上は問題ないって自信満々に話す。
じゃあ何もせずフワフワしてるだけ?と尋ねると「基本はね」とニヤニヤしてる。基本も例外もなくフワフワだけしていてほしい。
「あ、そうそう!憧れの森田先輩は私のおじいちゃんじゃありません!!」最悪のネタバレだ。【続く】
Photo by Rachael Crowe on Unsplash
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