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サマーバケーション、ソー・ロング

夏が終わらないので夏休みが終わらない。1週間の予定のはずが1ヶ月以上休んでいる。

「まぁ暑いし仕事にならないからね」とは上司のセリフ。適当に休んでなよと電話口で呑気なものだ。ひっきりなしに取引先から連絡が来るので俺が必要とされていないわけではない、多分。在宅では限界がある。

異常気象にかこつけて「猛暑が途切れるまで休みますよ」と宣言したらこのザマだ。法の改正で猛暑休暇制度が誕生した。内勤・現場問わず、ここ最近の猛暑は通勤でさえ命がけのものにした。導入したウチの会社でも初の利用事例になる。取得時に社内でも話題になってしまった分、適当に切り上げるわけにもいかない。

休暇は1週間で満喫しきってしまった感がある。海水浴に登山、あとは毎朝の天気予報を見ながらヤキモキする日々。

そのうちに猛暑休暇を連続で取得している人がいるとSNSで話題になってしまった。俺は在宅でなんとかやりくりしているのに。けしからんだの利権ゴロだの制度が悪いだの喧々諤々の議論に俺は置いてきぼりだ。

遂にはテレビの取材がやってきた。当然断った。「働き方改革の先行事例となりましたが……」と切り出されても困る。俺はただ休んでいるだけなのに。いや働いてるが。こっそり。

オフィスが懐かしい。働いていた頃よりも少し早く家を抜け出して、散歩しながらそう思う。陽炎のように今では記憶もおぼろげだ。デスクの資料も確認できない。

「もしかして猛暑休暇の方?私も取ってみたいなぁ」と突然話しかけられて飛び上がってしまう。3週間を超えたあたりで顔や名前が世間に漏れたらしい。適当な返事で誤魔化した。コンビニをハシゴしたあと家に戻る。

人事に相談すると「いやー、なにせ前例がないからね。3週間なら一般的な休暇の範囲でしょ」とやる気のない答えが返ってきた。「出社を命じちゃうとそれはそれで話題になっちゃうし」なんていうが仕事を持ち帰っていることは良いんだろうか。【続く】

Photo by Anete Lūsiņa on Unsplash

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