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「ガラスの手」


「ガラスの手」に
触ろうとした手を、
マオはそっと引いて、
「キレイね。」
と言った。

ガラスの手はライトを煌々と受けて、
キラキラ光っていた。

「うん。」

「私の手もこんなに綺麗だったらいいのに。」

マオは、キラキラ光るその手ではなく、
その形状を言っていたらしい。
節がない細く伸びた指。
確かに綺麗だ。
でもそれは、
人間としての手ではなくて、
オブジェとしての美しさだ。

「こんなに綺麗な手だったら、どんな指輪も似合うのになぁ。……。」

そんなマオの言葉を聞きながら…。

これを作ったのも人間の手だ。
人間の手は、色んなモノを生み出せる。
こんなオブジェだって、音楽だって、絵画だって、料理だって…と、考えていた。

「ねぇ、聞いてるの?」

「聞いてるよ。そうだね。」

「そうだねって、私の手は綺麗じゃないってこと?」

「そう言う事じゃなくて。
ボクはマオの可愛らしい手が好きだってこと。」

マオは、少し嬉しそうにはにかんだ。
それなのに、

「それじゃだめなの。
私は、こんな風に綺麗な手になりたいの。」

と言う。

「分かったよ。じゃあさぁ、毎晩ボクがマオの手にクリームを塗ってマッサージしてやるよ^_^」

「えー! なんかキモい。」

キモいって?

「なんでだよ! ボクが毎晩マッサージしたら、絶対キレイな手になるよ。」

「だからぁ。それがキモい。」

まぁ、キモくってもいいけどさ、そんなに綺麗なモノを装備しなくても、人生、楽しくやってけるってボクは知ってるから、任せとけって。

ガラスの手の中の光を見ていたら、
金星が見たくなった。


「#シロクマ文芸部」@komaki_kousuke #note

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