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バレンタインデーのお返しが来た。

時計を見ると、19時。
「また、無償残業。
こんな時間だ。」
そそくさと帰り支度をして、
ドアノブに手を伸ばした瞬間、
ドアがノックされた。
スタッフの若者二人が立っている。

「なんか届け物が来ました。」

頭の中がクェスチョンマークで
イッパイ。
私がホエ〜って、
顔になったいると、
若者二人は、
持っていたゴディバの紙の袋を勝手に開けて、
中身を見た。

「バレンタインとか、
誰かにあげましたか?」

バレンタイン?

「自転車で
今届けに来たんですよ。」

袋の中身を見ると、
やっぱりゴディバで、
メモが入っていた。
お礼と、送り主の名前。

そうか!!
今日はホワイトデーだった。

って言うか、
君たち、
勝手にメッセージ、
私より先に読むなよ。

思い出すと…。


その人は、
月1回しかここに来ないから、
バレンタインでもない日に、
「賄賂です。」
と言って、
チョコレートをお渡ししたんだった。
うちの上司は、
非常識な要求を平気でする。
だから、今までも、これからも、
その人に無理難題を聞いてもらわないと、
私の仕事は達行かなくなってしまう。
なので、
いつも申し訳ありません…、
と言うチョコレートだった。



「思い出した!!
賄賂です。って、渡したヤツだ。」

若者二人は、
興味津々に私とゴディバを見ていて、
なかなか私に渡してくれない。

なんか、この会社の人って非常識だ。
この二人も、
自分の興味が先に立ってるんだろう。

「どうも、ありがとう。」
そう言いながら、
袋を奪い去るように受け取って、
廊下を歩き出した。


玄関を出ると真っ暗で、
昼間とは全然違って凍てつく風が吹き荒れていた。

こんな中、自転車で来たの?
しかも、この時間だと、
仕事を中断して来たんだと思う。
私が帰るであろう時間を見計らって…。
そこまでして、
ホワイトデーにちゃんと、
お返しを届けてくれるなんて…。

義理チョコのお返しなのに、
とてつもなく嬉しくなったけど、
強風の中、自転車を漕ぐ姿を想像したら、
とてつもなく申し訳ない感じがした。
でもやっぱり、
嬉しかった。

申し訳ないより、
嬉しい気持ちと、
ありがとう…を、優先しよう。


次、会う時は、
その人が好きなキャンプネタをたくさん仕込んで、
たくさん笑顔になってもらおう…、
そう想像したら、
知らぬ間に笑顔になっていた。



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