見出し画像

黄昏に沈む : essay


昨日から、雲が空を覆い、大気の熱が何処かに行った。
あれほど熱をはらんでいたのに、一体あの熱は何処に行ったのだろう?
風が吹くと、寒ささえ感じる。
そうは言っても、長袖ではまだ暑い。
秋分だと言うのに、過ごしやすくなったけど、大気の熱は冷めやらぬ。

雲が多いせいか、日が暮れだすと、世界は黄金の黄昏色になった。

夕暮れを寂しいと感じる人もいるけれど、黄昏はなんとも落ち着く。
黄昏に沈んで行くようだ。
未来も過去もなく、黄昏の中に沈んで、ただ黄金が広がる中で、
「たれそかれ」
と、道ゆく人全てが影法師のようになる。
誰もが、所在不明、身元不明の異邦人になる。
世界の人全てが、何者でもなくて、何者でもない私は、ひどく安心出来るのだ。

「秋の日は釣瓶落とし」
黄昏は、あっという間に去ってしまう。
それは、寂しいのだけど、
「秋の日は釣瓶落とし」
と言う言葉が好きだ。
だって、秋の夕暮れになんてぴったりだろうと、世界と言葉が融合していて嬉しくなる。
からからから…と、夕日が音を立てて落ちていく感じも、特別で楽しい。

夏が去るのは、胸がぎゅっとするけれど、次の季節が綺麗だから、そんなのもあっさり忘れてしまう。
そうすると、次の楽しみを見つけて、過去はどんどん過去になり、気付くと、見知らぬ遠い所を旅している。

明日は、一体何処へ行こう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?