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アニメ『君は放課後インソムニア』第12話「迷い星」星の名を読み解く

この記事の趣旨
アニメ『君は放課後インソムニア』のサブタイトルの星を読み解く|ゆえ|note


アニメ『君は放課後インソムニア』第12話のサブタイトルは「迷い星 惑星」だった。
印象的だった、曲伊咲の「迷っちゃおっか」という台詞に由来すると思われる。


迷い星とは

私が所持している書籍『星の文化史事典』『日本の星名事典』『日本星名辞典』には「迷い星」という項目はなかった。
小学館の『デジタル大辞泉』では、「迷い星」の項目には「惑星のこと。」と書かれているだけだ。
おそらくこれは日本で成立した呼び方というより、ギリシャ語「プラネテス」の語源からきている言葉だろう。

天文学辞典 > 太陽系 > 惑星 > 惑星

天球上でお互いの位置を変えない恒星の間を動くように見える明るい星があることは古くから知られており、それらはギリシャ語では「迷う人」を意味するプラネーテスと呼ばれていた。これをもとに英語ではプラネット(planet)と呼ばれ、日本語では「惑星」と訳された(「遊星」と呼ばれたこともある)。

出典:『天文学事典』 日本天文学会


惑星について

古代から、天空において、恒星(自分で輝いている星・星座を形作る星)とは違う不規則な動きをする天体の存在が知られていた。
それらを惑星と呼び、凶兆や吉兆といった天からのメッセージであるとも捉えられていた。
惑星の動きを説明するための仮説として、動かぬ地球の周囲を太陽・月・惑星などが公転しているとする「天動説」が発展し、その後、地球も太陽の周りを公転する惑星の一つであるとする「地動説」が正しさを認められてきた。
望遠鏡の登場以前から知られていた惑星は、水星・金星・火星・木星・土星の5つで、この呼び方は中国の陰陽五行説の五行(木火土金水)と対応している。
水星は「辰星」、金星は「太白」、火星は「螢惑」、木星は「歳星」、土星は「鎮星」とも呼ばれていた。
現代で一般的に使われている英語名は、それぞれローマ神話の神の名に由来している。

現代天文学的には、我々の太陽系では8つの惑星が発見されている。
天王星と海王星は、望遠鏡によって発見された惑星だ。
発見当初は惑星とされていた天体としては、冥王星やケレスなど、現在では「準惑星」に分類されているものもある。
「冥王星は"降格"させられた」と記憶している方も多いかもしれない。
2006年の国際天文学連合総会で採択された「惑星(planet)」の定義は、「①太陽の周囲を回り、②質量が十分大きいために自身の重力でほぼ球形で、③その軌道の範囲で他の天体を一掃している」というものである。
冥王星の軌道周辺には太陽系外縁天体が多くあり、ケレスの軌道周辺には小惑星が多くあり、どちらも惑星の定義の要件③を満たさないため、「準惑星(dwarf planet)」に分類された。


空に迷い星を見てみよう

肉眼で見られる5つの惑星の見つけ方を案内しよう。

水星
2023年7月1日現在、水星は太陽に近い方向にあり、見つけるのは難しい。
太陽からの見かけの位置が離れる「最大離角」前後の時期に探してみることをおすすめする。
直近だと、2023年9月22日に水星は西方最大離角を迎える。
9月下旬になったら、日の出前、東の空の低いところを見てみよう。
双眼鏡を使うと探しやすいが、双眼鏡で太陽を見てしまうと目に障害を負う危険があるので、日の出までに観察を終えるようにしよう。

2023年9月22日5時の東の空(石川県七尾市)


金星・火星

2023年7月1日現在、金星と火星は宵の西の空に見えている。
まだ明るさが残っているうちから金星が目立つようになり、さらに暗くなれば、金星の左上に火星が見えてくる。
どちらも22時には沈んでしまうので、日没から21時頃までに探してみよう。
西の低空が開けたところで、一番星を見つける感覚で楽しんでもいいかもしれない。

2023年7月1日21時の西の空(石川県七尾市)


木星・土星

2023年7月、木星と土星は夜間に見ることができる。
3時頃になれば、木星も見やすい高さに上がってくるし、その時には土星は既に南東の高いところに上っている。
土星は0時頃には東の空に出ているので、インソムニアではない人も土星を待ってもいいかもしれない。

2023年7月2日3時の南東の空(石川県七尾市)


参考文献

『デジタル大辞泉』 小学館
天文学事典』 日本天文学会

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