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アニメ『君は放課後インソムニア』第7話「花火星」・第8話「集まり星」星の名を読み解く

この記事の趣旨
アニメ『君は放課後インソムニア』のサブタイトルの星を読み解く|ゆえ|note


アニメ『君は放課後インソムニア』のサブタイトル解説、今回は2回分まとめて。
第7話の「花火星」で、花火大会の様子が描写されたので、それに由来すると思われる。
第8話は「集まり星」で、ペルセウス座流星群観測会のために人が集まるのかと思いきや、雨天で中止。しかし、打ち上げでメンバーが集まっていた。
「花火星」も「集まり星」も、プレアデス星団の呼び名なので、まとめて1つの記事にすることにした。


プレアデス星団とは

プレアデス星団とは、おうし座にある星の集まりで、比較的若い星の集団である「散開星団」の一つだ。
青白い星がいくつも集まっていて、ぱっと見ではぼんやりとした光の塊のように見えるが、よく見ると中に数個の星を数えることができ、双眼鏡や望遠鏡で見ると、さらに多くの星を見ることができる。
「プレアデス」というのはギリシャ神話に出てくる七人姉妹のことで、西洋から入ってきた呼び名である。

「M45」と表記されることもあるが、これは「メシエカタログ」の45番という意味だ。
メシエカタログは、彗星を探していたシャルル・メシエ氏が「彗星と見間違いやすい紛らわしい天体の一覧」として作ったものだ。
しかし、実際のところプレアデス星団は彗星と見間違えるような天体ではなく、カタログ発表時に区切りのいい数にしたくて追加されたとも言われている。


花火星とは

第1節 おうし座
01 プレアデス星団

その他
◎ハナビボシ(花火星)
 花火に見立てた。千田守康氏が宮城県牡鹿郡牡鹿町字祝浜(現・石巻市)にて記録[千田C]。

出典:北尾浩一 (2018) 『日本の星名事典』 原書房

光る点でしかない恒星と比べると、複数の星が集まってひとかたまりになっている様子は、夜空に咲く花火と通じるかもしれない。


集まり星とは

第1節 おうし座
01 プレアデス星団

固まって(集まって)いる様子
◎アツマリボシ(集まり星)
 文字通り、多数の星が集まっていることからアツマリボシと呼ぶ。静岡県志太郡稻葉村助宗(現・藤枝市)等に伝えられている[内田1949]。

出典:北尾浩一 (2018) 『日本の星名事典』 原書房

星の集まりである「星団」は他にも多数あるが、肉眼で個々の星を判別できるような見え方ではないものも多いので、「集まり星」は目で見える特徴を捉えた呼び名だと感じる。


その他の有名な日本での呼び名

他にも多くの呼び名があるが、その中でも類例が多い3系統を紹介しよう。
・スバル・スマル(昴)
・ムツラ(六連)
・群れ星

「昴」という漢字表記自体は、中国由来の二十八宿(星座のようなもの)の一つ「昴宿」のことである。
「スバル」といえば、枕草子にも「星はすばる」と出てくるし、自動車メーカーの名前にもなっているし、プレアデス星団の呼び名としては日本で最も広く知られているものだろう。
語源は「集まってひとつになる」という意味の「統ばる」だという。
「スマル」も同語源だが、瀬戸内を中心に、漁具の名称としても知られ、プレアデス星団を漁具のスマルに見立てた考え方もあるとのことだ。
このスバル・スマル系の転訛した呼び名が全国に多く伝わっており、方言の多様性を感じる。

その次に多い「ムツラ」は「六連」、つまり六つの星が連なっている、という意味で、これも転訛した例が多数あるようだ。
「六連」ではなく「六面」すなわち六つの顔をイメージしている場合もあるという。

奄美大島・喜界島より南では「群れ星」系の呼び名が多く伝えられているという。「ムリブシ」「ムリプシ」「ブリブシ」「ブリムン」「ムニブス」など多様な転訛がある。


空に花火星・集まり星を見てみよう

6月はプレアデス星団が太陽の方向に近いため、見ることはできない。
7月以降、明け方に見えるようになり、現実的に夜に見やすいのは9月頃からだろう。
2023年9月なら、近くに木星が明るく輝いているため、見つけるための目印になるだろう。
おうし座のα星アルデバランや、その近くのヒアデス星団のV字の星の並びを見つけたら、その右上、牡牛の肩のあたりにプレアデス星団を見つけられる。

2023年9月1日0時の東の空(石川県七尾市)


参考文献

北尾浩一 (2018) 『日本の星名事典』 原書房
野尻抱影 (1973) 『日本星名辞典』 東京堂出版

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