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ヤヤ姫!ビュートの!楽しい学園生活【幼少期篇】

先ずは始めのご挨拶


 この度Twitterフォロワー間の企画で、パルセットさんの『ガールズ!リトルリトル神話』 #ガルリト スピンオフリレー小説 #ヤヤビュート を始めました。パルセットさんのフォロワーさんであるきゃすぃーさん(@sprinter_doll)と蒼月(@yue_aotsuki)による交互執筆です。こちらではそれらのログをまとめ掲載をしていきますので、リアルタイムバトル(いつからバトルに?)をご覧になりたい方はTwitterにて #ヤヤビュート で検索してください。腐れヲタクとしてはビュート×ヤヤ表記なんですが(笑)、ヤヤ姫はお姫様なのでビュートくんは後ろに周りました(どんな理由)

 それではオープニングのパルセットさんのコメントから。

はしがき


『ヤヤ姫!ビュートの!楽しい学園生活』
ヤヤ姫は以前ゲスト出演したこの国のお姫様でリューズを陰で助けています
ビュートとは都で学友という設定ですが、それぞれのオーナーさん方がその頃の話を自分達でリレー小説風に遊びたいと🤣
なのでスピンオフを💦
最初だけ私が書きます😅

ヤヤ姫!ビュートの!楽しい学園生活【幼少期篇】

 頃は春。ここデンス王国王立学園初等部にも新入生が
 今年は現女王の一人娘ヤヤ姫も入学しているはず、なのだが…
ビュート『お前生意気だな!教えとくけど僕のパパは特区の市長だからな?』
ヤヤ「あらそう。じゃあこっちも教えとくけど私のママはこの国の女王だからね?」
『「…」』
『「フン❗️」 
  
  ↓

(面白そうな奴いるんじゃん)
 ビュートは胸中に呟く。権力者の長男として育つ彼に反駁するものなどなかったのに、初等部入学して早速これだ。 ヤヤ姫が聡明な少女だとは聞いたことがある。
『教えてやらなきゃな、色々と』
 ビュートは小さく独りごちた。

     ↓


(初日から失敗しましたわ。)
 王女だと公言してしまった事に頭を抱える。
「お母様の事は言わないつもりだったんだけどな。」
"王女"と言う立場は隠すつもりだった。それが、どうしてこうなった?
「そう、全てはあの特区の…」

 特区、その言葉は彼に興味を持つのに十分な理由だった。

     ↓

 ビュートはデンス王国でも『特区』として扱われる街を治める家の嫡子だ。何故その街が『特別』とされるのかは、まだ幼いライト・ビュートには理解出来ずにいる。ただ、異質なものとして扱われる、彼よりは幾らか年嵩の少女が存在する事までは知らされていた。
(だから僕は特別なんだ)

     ↓

 特区には特別な女の子がいて、お母様もその子のために菓子や服を用意している。

 許せなかった。
 見つけ出して「私だけのお母様だ」と言ってやらなければならない。

 でも、特区については誰も教えてくれない。
 自分で調べるにも限界があって、何も進展のないまま私は学園を訪れた。

 学園で特区の関係者に出逢えたのは幸運だった。
 少し無礼なのは気になるけど、そこは我慢してあげる事にする。だって私は王女だから。

 ある日の授業後、私は彼に声をかける。

「私は特区の秘密について調べないといけないの。貴方にはその手伝いをさせてあげる。はい、決まり。😤」

     ↓

「させてあげるとはまた生意気だな、君って。王族ならガイコウ? 知りなよ」
 外交等と云う言葉を知っている事を自慢げに云うが、勿論ビュートにそんな知識などある筈がない。
「て云っても」
 ちらと視線を上げてビュートは云った。
「僕の街に何があるのかな?」

     ↓

「外交は大人の仕事なので子供はしてはいけないのですよ。」
"外交とは"と意味を教えてやる理由はない。

「あと、今回は大目に見ますが王族に対して生意気とは良い度胸をしていますね。」
 一応、釘もさしておく。

「で、"何があるのか"だけど、特区に特別な女の子が居たりしない?」

     ↓

「……ッ!」
 言葉に詰まる 。子供なのは同じだと思うが飲み込む。それは幼稚だ……事実子供だが。
「王族なのは学園じゃ内緒とか云わなかったか? まあいいや。特区の『特別』? ……あ!」
 ふと思い出す事がある。父が時折訪う『塔』だ。
(アレのことか……?)
 思案の中再びちらとヤヤ姫を見た。

     ↓

「既に知られた相手に隠す必要もないでしょ?それに…、」
「貴方、全く態度を改める気がなさそうだから忠告したげたのよ。"私は別に構わないけど、周りには注意しなさいよ"って。」
 そう、こういう事に拘るのはむしろ周囲の人間達だ。

「それよりも…、思い当たる節があるようね?」

     ↓

「忠告とは穏やかじゃないね。僕が敬う相手は僕が決めるだけさ」
 楯突く者のなかったビュートにはヤヤ姫が新鮮に映る。
「パパが人目を忍ぶように出掛ける場所はある。それが君の云う『特別』なのか、話してはくれないけどね」
 今より幼い時分を思い起こすようにビュートは応じた。

     ↓

「別に敬わなくても良いわよ。」
「そのほうが気が楽なくらいだし。ただ、そんな事で貴重な協力者を失いたくないだけ。」

「居たのよ。少し言葉使いがラフなだで、"不敬だ"って言われて居なくなった子が…。」
 嫌な記憶が蘇る。
「ごめん、関係なかったわね。うん、それは怪しい。」

     ↓

「ふふ。僕も愚かでないからね。人目につく危険があれば敬意も演じてやるさ。それに僕だって敬意を払われる立場だよ」
 社交場の片隅に立つ位の経験はある。その折の父の振舞いも。
「パパが訪ねるのは『塔』だけど、特別な少女より『化け物』と聞いたよ。少し年長の女子みたいだね」

     ↓

(大丈夫かしら…?)
 模範的な王女を演じ続ける事で"人目を気にして何かを演じ続けるのは想像以上に難しい"と痛感しているヤヤは、少し不安を覚えた。

 が、

「"年長の女の子"ですって‼︎」

 求めていた答えが出てきた事で、その不安も"化け物"と言う単語も頭には残らなかった。

     ↓

 ヤヤ姫の衝撃に気づく様子もなくビュートは続けた。
「うん。けど別に『特別』とは思ってなかったな。普通に街を歩いてたし。まあいつもひとりぼっちで友達いない子みたいだったけど」
 父の云う『化け物』を、この時のビュートには理解出来ずにいた。
『老いることのない少女』を――。

     ↓

(なんだろう?何かおかしい。)

 誰かのための服が用意されるのはもう何年も続いている。
 そして、それは毎年1人分だ。
 ここまで、変なところはない。
 後は…、そう、サイズだ。
"何年経っても同じサイズ"だったのだ。

「それ、本当にひとり?」
 我ながら、何を聞いているのかと思う。

     ↓

「……? 一人だよだよ? パパやママも街の人も『化け物だから関わるな』とか云ってたけど、僕はそんなの怖くないし、話しかけたりもしたな」
 ヤヤ姫が何故あの孤独な少女を気にかけるのか、ビュートには判らない。ただいつもひとりぼっちの『特別な』少女としか知らぬからだ。

     ↓

「"化け物"…ねぇ。そういえば、さっきもそう言ってたわよね、貴方。」
 少し冷静になったのか、これまでの会話を思い出す余裕が出てきた。
「1人で塔に住んでるくらいなら"化け物"なんて言われないでしょうに。何かある訳?」

 彼女の中で「誰か」を調べる理由が少し変わってきていた。

     ↓

「それは……」
 云いかけたところで休み時間の終わるチャイムと共に教師が入室する。
「昼休みにでも少し話そうか。どうやら長くなりそうだ」
『化け物』とされるのを当たり前に育ったビュートにも、それはずっと疑問だった事だ。これは何かの契機かも知れない。そう思った。


***


 午前の授業終了を告げるチャイ厶で子供達はそわそわと教科書を片付け始める。教師が教壇から去るのを待ってビュートが席を立つと、クラスメイトは訝しむ様に声をかけてくる。
「ビュートくん、ランチは?」
「ごめん、今日は約束してるんだ」
 云い置いてヤヤ姫の席へ爪先を向ける。
「約束だ。食事に行こうか」
 期待の眼差しでヤヤ姫を見てビュートは云った。

     ↓

 飛び級のヤヤは同級生よりも一回りは小さい。
 同級生、特に男子が前に立つと、本人にその気がなくても威圧しているように見えてしまう事もある。
(まずい…。)
 学園内とは言え、当然、護衛は配備されている。
(面倒くさい事になるわね。)
 瞬間、護衛の気配が露わになる。
「こっちへきなさいっ‼︎」
 慌ただしく席を立ち、目の前に立つビュートの手を掴んで部屋を出る。

 そのまま廊下を進み、人目のない場所へとビュートを引き摺り込む。

「何やってるのよ、貴方。あれだと、私を威圧してるようにとられても仕方ないわよ。」

 掴んだ手の事も忘れて捲し立てる。

      ↓

(ちょっと待て)
 ビュートは思う。
 何故だか怒られてるらしい展開に呆気に取られるも、どさくさに紛れ少女が彼の手首を掴んでいる。小さな手は柔らかで振り解くのは容易いのだが、暫く怒らせておいていい気がした。
(僕にこんな事する女子なんか、見たことなかったな。パパに取り入ろうとして僕に近づく大人に、怯える女の子ばかりだった)
 それはひどく新鮮な気持ちで、ビュートは何処か心地よい思いがした。
「どうやら姫君には無礼だったらしいね。ああ、もう少し上手く立ち回れるつもりだったけどな」
 くす、と彼は微笑みを返した。掴まれた手はそのままに。

      ↓

「いえ、こちらこそごめんなさい。」
 今のは私が飛び級で割り込んだから起きた事だ。彼に非はない。

「あと、こっちもごめんなさい。」
 握っていた手を放す。
「そろそろ食堂に行かないとね。」
 先立って食堂へ向かって歩き出す。

「あ、今後"姫君"は禁止ね。流石に堅苦しすぎる。」

      ↓

 掴まれていた温もりを確かめるように軽く己の手首を撫で、ビュートは悪巫山戯が過ぎたかと少し反省する。
「では君の事はヤヤ様と呼べばいいかな? 君、飛び級だろ? 歳下でも少しは敬意を払おう。それと」
 ビュートは続けた。
「僕の事はビュートと呼んでくれるかな?」

      ↓

「ヤヤ様…か。うん、まずはそれで良い。」
 足を止めて振り返る。
「それでは改めて。よろしくねビュート。」

 もうすぐ食堂に着くという頃、初めて自分の失敗に気がついた。
「ごめんなさい。これ、完全に私が悪いんだけど…。このまま2人並んで食堂に入るのって非常にマズくない?」

     ↓

「男女七歳にして席を同じうせず、かい? 『立場ある者』の不遇だね。ではレディファーストだ。偶然のフリで相席しようか。話があるのは君だろ?」
 どうも他の少女とは勝手が違うらしいヤヤ姫に些か困惑するも、ビュートはそんな提案をしてみる。
(僕と『並びたくない』のは面白いね)

     ↓

「そんなに大それた話しじゃないわ。」
 厳密には同じなのかもしれないが。
「有る事無い事言われるのも面倒でしょ?」
 王城でよく見た風景だ。男女が2人でいると関係ないところが勝手に騒ぎ出す。

「そもそも、私まだ7歳じゃないし。」
 言いつつ、彼の提案通り私が先に食堂に入る。

      ↓

「ご随意に、ヤヤ様」
 小さな背に呼びかけ、ビュートは苦笑する。七歳とは喩えであり実年齢ではないのだが、そこには気づかなかったのだろう。
 この広い食堂で偶然を装うより共に行く方が容易と判断しての事だったが、周囲より一際幼く、そして『姫』の気品を見分けられないこともないだろう。暫しの間を取って食堂へ踏み入れ辺りを見回すと、果たして姫は際立つ愛らしさで、ちょこんと彼女には大き過ぎる椅子に腰掛けている。
(お忍びにはなれないみたいだね)
 ビュートは躊躇うことなく彼女の向かいにストンと腰を落とす。
「さて」
 ビュートは云う。
「食事中のマナーは兎も角、話をしようか」

      ↓

「話しと言っても、私から言える事は限られているのだけど。」
 ここはもう、駆け引きはなしだ。

「とても個人的で…下らない理由だけど、私は貴方の言う"特区の年長の女の子"について知りたい。」
「でも、その人についても特区についても十分な情報がない、それが今の私の状況。」
「信じるか信じないかは貴方次第だけど、この件に関する私の側の情報と言い分はこれで全て。」

「要するに…、"貴方が居ないとどうにもならない"ってことよ、ビュート。」

      ↓

「へえ……『塔』の女の子が訳ありなのかについては、僕もちょっと気にはなってた。そして『特区』の僕ぐらいしか多分君へあの子について教えられそうな者はないんだろうね」
 ビュートは口許に片手を添えて思案する。知っている事。何がある? 『成長しない化け物』と呼ばれている事実。そして大人達は誰一人味方にはならない。子供らも同じだ。忌避すべき者として遠巻きに扱い、時として石を投げるような者も居た。
 そんな中でもビュートはと云えば好奇心を抱くものの迫害に加わる側ではなかった。何しろ『特区市長の嫡子』だ。後に街を治めるのは彼となる将来が定まっている。
「そうだね、先ず云えるのは――」
 上目遣いに覗き込んでくる姫に眼差しを合わせ応える。
「特区では彼女を『成長しない化け物』と呼んで疎んでいること、これがなにより大きい」

      ↓


"何年も同じサイズが用意される服"と"成長しない少女"、この2つが繋がっている事は確定でいいだろう。

"名前も知らない誰か"の想像もしていなかった悲惨な境遇。そして、事情を知らないとは言え、そんな相手に下らない嫉妬心を抱いた自分の浅はかさ。

「まだまだだなぁ、私…。」

 それにしても…だ。
"秘匿された地の歳を取らない少女"に何か覚えがあると思ったら、ずっと聞かされていた御伽噺だ。
 ただしそれは、"この国には少女の姿の天使がいて、ずっと国を護ってくれている。天使は幸せに暮らしている"と言う内容だ。

 恐らく、御伽噺の天使はこの人の事だろう。


「何よそれ…。」
 都合よく美化するにもほどがある。

 嫉妬心は消えた。
 ただ、王家の自分は向き合わないといけない事だと言う確信はある。

 圧倒的に情報が足りないが、目の前の彼が全てを知っているとは思えない。

 そうなると、やる事は一つだ。
「詳しくは追々話すけど、その人に会えないかな?」

      ↓

「会いたいんだ?」
 きょとんとした様子でビュートは云う。特区の街では疎まれる少女に、この国の姫君が? それは好奇心をくすぐられるものを感じるし、禁忌に踏み入れるスリルもありそうだ。
「うーん、会えない訳じゃない筈だよ。街を普通に歩いてる姿は何度でも見たことあるし。住処にしてる『塔』の場所も知ってる。難しいのはこの学園を抜け出してベルソゥ・リンに忍び込む事だね。あの街は酷く閉鎖的で『外』を拒むところがある。僕でさえ卒業まで帰省出来るのかさえ危ういんだから」
 父には勉学を修めるまで帰省は認めないと云われている。『外』を拒むにも限度があるのではないか。しかし『塔の少女』に何らかの秘密があると云うのならば――それは随分と楽しそうな話ではないか。
「うん、あの子に会いに行きたいのなら、僕が手伝おう。流石に今日明日と急には叶わないから、ここを脱走する方法を掴んでからになるけどね」
 父の鉄面皮を崩す悪戯が出来るのでは、などと不届きな事を想像すると、それはひどく楽しそうで仕方なかった。ビュートはヤヤ姫を見て云った。
「手、貸して」
「?」
 云われるまま差し出された手の甲にビュートは唇を落とした。
「貴女を守りましょう。これは誓いだよ」
 悪戯な目でヤヤ姫を見て、ビュートは微笑した。

【幼年期編・fin】

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