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VRライブを企画した。

メタバースとは、あり得ない自分があり得る空間である。

ゲーム然り、コミュニケーションプラットフォーム然り、およそメタバースと総称されるそれには現実とは違う、しかし確かにありのままな自分自身が存在する。

そんな空間で、2024年5月18日。私達は、まさに現実では成し得ない試みに挑戦し、成功した。

今回は、そのきっかけから結末まで、忘備録というほどのものでもないけれども、一つの成果報告として企画担当の目線から綴っていく。

1.なぜVRライブを企画したのか

大前提、本企画について語る上で、この話は欠かせないだろう。
なぜ、私達学生がVRライブを企画しようと思ったのか。どのような経緯があったのか。

それに対する答えは一つしかない。ノリである。

正直なところ、昨年末まで私たちの頭の中にはVRライブのVの字もなかった。
学園祭でVR Chatを用いたライブハウス型脱出ゲームを作ったはいいものの、その先どうしたものか。悩み、会議し、ふわっと決まった。

だからといって、VRライブへの取り組み自体もふわっとしていたかといえばそんなことはなく、寧ろ脱出ゲーム制作以上に各々が全力で取り組んでいた。

ともあれ、Meta Voyage Project(厳密にはその前身プロジェクト)が生まれたきっかけは、寧ろ大学生らしいとも言える、特別でもなんでもないものだった。

2.オファーを出すということ

そんな訳で、完全に流れで決まったVRライブ企画は、ひとまず"Vtuberの方にオファーを出す"というところから始まった。

しかし、我々は一介の学生に過ぎず、資金力があるわけでも、知名度があるわけでも、目に見えた実績があるわけでもない。

それ故、出演いただくVtuberの方を探すのはとても難しいことだった。

ーーと、言いたいところなのだが。

蓋を開けてみるとどうだろう、とても有難いことに、1度目のオファーで前向きな返信を頂くことができた。しかも、Youtube ShortsやTiktokで絶大な人気を誇るVtuberの方に。

それこそが他ならぬ、奏みみさん(今回は敢えて敬称をさんにさせていただきます)である。

ここから学んだことは、とにかく声をかけることの重要性、端から限界を決めないことの重要性である。

正直なところ、私はこの企画が立ち上がった当初、出演いただけるVtuberの方の規模にはあまり期待していなかった。

勿論、イベントを実施する以上、規模の大きい方に出演いただきたいという気持ちはあった。しかしそれ以上に、これ程にないもの尽くしのイベントに出演していただけるVtuberの方などそういないだろう、という想いの方が強かったのである。

しかし、結果としては奏さん程の人気Vtuberに出演いただくことができた。

これは最初から諦めることなく声をかけた企画班のmori氏の生み出した成果であるし、奏さんと鬼教官さんの寛大かつ暖かな御心によるものである。

特に、オファーを送るにあたり、私が企画書とミーティング時の説明・進行を務めたのだが、私は社会的コミュニケーション能力に明確な弱みをかかえている自覚がある。

それ故、至らぬ点も数多くあったであろうに、今回出演に承諾いただけたことには、心から感謝したい。

3.実施環境について

奏さんに出演を承諾いただき、演出班が演出の制作を始めた頃、並行してVRライブを行う上での機材検証会が行われていた。

今回、私達は様々な選択肢がある中で、敢えてリアルタイムライブという最も難しい形でのライブを企画した。

理由としては主に2つ。
1つ目は、ライブだからこそのインタラクティブ感を重視したかったから。
2つ目が、我々が奏さんの生歌に魅了されたからだ。

結果的には、リアルタイムライブを選択して本当に良かったと思う。
mocopiを使用したライブ配信だったため、細かなカクつき等は勿論あったが、それ以上に"同じ時間を共有している"という感覚を生み出せたことは大きかったのではないだろうか。

そして、何よりも自由が少ないトラッキング環境を逆手に取り、最高の演出と空間を作り出したUnity班・blender班。

我々企画班のミスにより生じた急なワールド変更(後述)に対しても、決してめげることなく対応した彼ら彼女らがいなければ、この企画は成り立たなかった。盛大な賛辞を送りたい。

4.プラットフォームと利用規約

さて、ライブの実施環境も決まったところで、いよいよライブ開催へ向けて動きだした訳だが、しかし私達は一つ重大なミスを犯していた。

それは、プラットフォームの利用規約を誤認していたこと。
勿論、大学教員による監修もあり、当初は問題ないものとして準備は着々と進められていた。

しかし、いざプレスリリースが完成し、公表しようというところで、念の為プラットフォームに問い合わせたところ、規約に抵触する内容が複数発覚したのだ。

当然、大焦りである。

最も、教員や企画班・演出班と相談し、最終的にはワールドを作り直し、その他抵触した内容を修正する、という形で片がついたのだが。

ともあれ、今後は必ず先に確認することを怠らないようにしよう、心からそう思わされた。

また、この出来事について、一般的には非常に初歩的かつ失礼で常識に欠けるところ、私の拙い説明を聞き、了解して下さった奏さんと鬼教官さんには本当に感謝している。

5.本番にむけた最後の準備


プラットフォーム問題も解決し、ついに本番にむけた準備も佳境へ入った。

香盤表の制作をはじめとして、プレスリリースの発表、部屋の配置確認、ライブ中止迄の判断基準の策定等、最も忙しい2週間だったのではないかと思う。

鬼教官やもう1人の奏さん運営の方にさまざまなアドバイスを頂き、それを元に準備を進めていった。その道のプロからアドバイスを頂けることが、どれほどありがたいことか。

私達は試行錯誤を繰り返しながら、着々と準備を進めた。

最も、この辺りで私は風邪をひき、多くを他の人達に頼ることになった訳だが、その件については非常に反省している。
色々とカバーしてくれた教員や企画班の人達、そして本来企画班がやるべきタスクを担当してくれた人達に、盛大な感謝を。

同じ轍は2度と踏まない。猛省である。

前日には、奏さんの生配信でプロジェクトについて取り上げて頂いた。
公開した事前体験ワールドには多くのみみっ子の方々が来訪し、大いに盛り上がっていた。

6.いざ本番当日へ

5月18日。遂にその日は訪れた。本番当日。X Dayである。

実のところ、私達は本番当日まで、完璧な状態でのリハーサルを行うことができていなかった。
だからこそ、当日は入念に最後のリハーサルを行った。

本番同様、問題が生じれば私がオペレーションを行い、緊急時の対応を行う。
細かい演出の修正はあれど、直前のリハーサルで完璧に近い成果が出た際には、チーム全体で喜んだ。

そして、迎えた18時。遂に、ワールドが開場する。針が1つ進む度に、ユーザーが1人、また1人と増えてゆく。

18:45分。配信が開始され、100人弱の視聴者が待機をはじめた。
そこから、50分。55分。と時間は刻々と過ぎてゆきーー57分に差し掛かった頃だったろうか。

「配信内の画面がついてない」

そう口にした私が目にしていたのは、撮影担当の画面に映る真っ黒な垂れ幕だった。
本来、そこにはオープニング用の蓋絵が映っているはずである。

とくりと心臓が鼓動し、首筋を汗が伝う。

「一旦蓋絵して。画面が映ってない」

撮影班に指示を出し、直ぐに全体に情報を共有した。しかし、更なる問題が訪れる。
カメラ用のアカウントに、何故かログインできなくなったのだ。

そうこうしているうちに開始時刻を迎え、ライブ開始時刻が遅れる旨が各コメント欄で伝えられる。

結局、問題が解決したが頃には、既に時刻は19時7分を過ぎていた。
およそ7分の遅れである。
しかし、そこで機材室にやってきた鬼教官さんの一言で、私は落ち着きを取り戻した。

「落ち着いた方がいいんで、10分からオンタイムでいきましょう」

正確な言い回しまでは覚えていないが、こんなところだったと思う。
そして、19時10分。万全の状態で遂に迎えたVRライブは、言わずもがな大成功だった。

途中、予定外に再キャリブレーションを行うタイミングがあったが、問題なく対応。
事前に気にしていた音声の途切れも奇跡的に最小限で済み、結果として最高のライブとなった。

この成功は、演出を作ったunity班、ワールドを作ったblender班は勿論のこと、本番で不測の事態にも対応してくれた撮影班、音響班、サポート担当、カンペ担当、X担当、コメント担当の皆が掴み取ったものである。

本当に、お疲れ様でした。

そして、奏さん、鬼教官さん、運営さん、本当にありがとうございました。
第一回を奏さんに出演いただけて本当に良かったです。

7.今後へ向けて

正直に言って、メタバース空間におけるパーティクルライブは世間の注目以上に大きな可能性を秘めていると私は考えている。

事実、最近ではTBS主催で"META=KNOT"というVRフェスが行われてもいる。
だが、業界としてはおそらくまだまだ黎明期。これからのコンテンツだ。

だからこそ、私はこのMeta Voyage Projectがいつか学生の域を脱して、一つの大きなイベントのようにならないものかと夢想している。

最も、企画の初期メンバーである私ですら、このプロジェクトがどこまでいけるのか、どこで立ち止まってしまうのか、不確かではあるけれど。

それでも、きっとこのライブで生み出した感動はーー突き動かした感情は、誰かの記憶に刻み込まれていることだろう。

その風に押されて、船旅はまだまだ続く。


長ったらしくなったが、結局のところ話は単純だ。


この先も頑張るので応援よろしくお願いします!!!!!!!!!

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