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豆腐怪談 36話:雨上がりの跡
「やあっと、雨やんだかあ」
ここ数日間にわたり降り続けていた重苦しい雨が、今日の夜明け頃に明けた。
早速、雨で中止していた日課のウォーキングを再開することにした。
雨上がりはまだ朝の風が湿気を含んでいて重い。道路は乾いた箇所とまだ濡れている箇所でマーブル模様を描いていた。
いつものコースの終盤、自宅近くの歩道を歩いていると、車道の真ん中に奇妙な雨跡を見つけた。
「何だこれ?!これは…人間の足跡かな?」
30センチほどだろうか、男の大きな裸足の足跡があった。それも車道の真ん中に急に現れ、数歩ほど歩いたらその場から消えたかのように、途切れている。
「酔っ払いが急に裸足で歩いたんかな?で、連れの人が慌てて擦れ戻したとか?」
不気味に思いながらも、勝手に憶測を立てて、とりあえず自分を納得付けて安心させた。
そして、その時はすぐに忘れてしまった。
しかし数日後、また雨上がりの後に同じ場所で濡れた裸足の足跡を見つけた。足跡は前見た場所から歩道側へまた数歩ほど歩いて消えていた。
「移動してるように見えちゃうなあ。ちょっと気味が悪いなあ」
また次の雨上がりの朝にも裸足の足跡を見つけてしまった。足跡は斜め北方向へ方向転換していた。
そして雨上がりのたびに、濡れた裸足の足跡を見るようになってしまった。
いま目の前に残っている裸足の足跡は、車道を渡りきり、歩道を横切り、ついにある建物の前で消えている。
その建物は自分が住んでいるアパートだ。
「うわ…怖ッ…」
さすがに怖くなってきた。得体のしれないものが雨の中を歩いてこちらに向かっているのだろうか。
4日後に雨上がりの朝を迎えた。足跡はアパートのエントランスを濡らし、階段を一段踏み出したところで消えていた。
「怖っ!こいつは絶対ウチに向かってるよね…。勘弁してよもう」
そう確信してしまった。
その2日後の雨上がりの朝、恐る恐る玄関を開け外に出てみる。階段にあったものを見て悲鳴が口からでた。
足跡は階段を上り2階に入ったところで消えていた。
自宅は、2階にある。
「うわあ…ついに来やがりましたよう」
背中にぶるぶると震えと嫌な汗がつたう。しかしどうしようもなかった。
ついに雨が降る夜がまた訪れてしまった。
いま、窓の外では雨がさあさあと静かに音を立てながら降り続いている。
布団を頭からかぶっていても、雨が降る音に紛れて別の音が聞こえてきてしまう。
びちゃり、びちゃり…
ずぶ濡れのヒトが裸足で歩くような音が、嫌でも耳に入ってくる。
びちゃり、びちゃり、びちゃり…
歩く音は段々大きくなっていく。
びちゃ。
自宅のドアの前で足音が止まった。
【終】
※豆腐怪談シリーズはTwitter上でアップしたものを訂正&一部加筆修正などをしたものです。
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フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
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