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年に一度の先着15食限定特別シークレットラーメンとラーメン大好き細屋さん

「きたぁ!今年もあの限定ラーメンがきたあ!」
私はラーメン大好きOLの細屋さん。お気に入りのお店の限定メニューのお知らせを読んで小躍りしてる。

そのラーメンは煮干し出汁にさらに干しアジを加え、スダチのスライスを添えた、濃くも後味さっぱりおいしいラーメン。その旨味深い味を思い出すだけで私はヘヴンナウ!
但し限定ものだけあって、今夜先着15名様までというシビアな数だ。これを食べるには定時で仕事を終わらせるしかない。

私は脳みそをフル回転し超高速で仕事を進めた。
そして定時きっかり仕事を終え外に出ようとした時、私を呼び止める声がした。
その声の主はベテランOL若槻院さんだった。
「細屋さんもお仕事終わりましたの?もしよろしければ私たちとこれから女子会をしませんこと」
げぇっ!女子会という名の愚痴と同僚の悪口大会のお誘い!そんなものに出たら帰りは深夜になってしまう。
「ごめんなさい、今夜は用事があるんです」
「あら、残念。また今度いらしてね」
若槻院さんはあっさり解放してくれた。今思えば私はこの時の若槻院さんの表情の変化に気を付けるべきだったんだ。



私は近道の路地裏を早足で歩く。日は暮れて空は紺色だ。
「これなら間に合うかな」
その時私の耳元で空気が裂ける音がした。恐る恐る後ろを振り向くと壁に矢が刺さっている。
路地裏の出口に弓を構えた若槻院さん立ちふさがっていた。
「いけませんわ、細屋さん!男と乳繰り合う為に女子会を断るだなんて不純ですわ!」
「はァ?」
どうやら若槻院さんは私がいそいそと帰ったのは男がいるからと誤解したようだ。
冷酷な笑みを浮かべ若槻院さんは再び矢を放つ。
鋭い金属音と火花が路地裏に響き、彼女の足元へ矢がはじき返される。
若槻院さんは目を見開いた。

「私の邪魔をするんですね。…覚悟はいいか?」
私は矢を弾いた金属製トンファーを構え跳躍した。
私はラーメン大好きOLの細屋さん。私の楽しみを奪うものは許さない。


【続く】

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