記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「N号棟」ネタバレ有り感想

主人公・史織は死に対する重度の恐怖症(タナトフォビア)に苦しむ女子大生。元彼の啓太とは恋愛関係が一応破綻した後もずるずる関係が続いており、啓太が現在の恋人である真帆とともに卒業制作として心霊スポットとして有名な廃団地を舞台にホラー映画を作成する計画に同行したところ、無人である筈の廃団地には居住者の一団がおり、ホラー映画の撮影と言い出し難く啓太達が対応に窮したところで史織が入居希望と言い出したことから廃団地に滞在する事になるというのがあらすじで「考察型ホラー映画」と銘打って広報された作品です。

あらすじからもお察し頂けるかと思いますが主人公史織はドメンヘラで彼女の奇行のおかげで元彼啓太と啓太の彼女真帆はエラい目に遭います。そもそも元彼とその恋人の卒業制作に誘われてもいないのについて行く時点で相当ですが奇人ヒロインを主演の萩原みのりさんが好演されています。

件の廃団地に住む住民達は外界との接触を拒絶した閉鎖的なコミュニティを形成されており明らかに異質な空気を形成しており、そのカルト集団的な在り方がネット上では日本版「ミッドサマー」と評する人も多かった感が有りますが個人的にはカルト集団要素以外の同作っぽさは感じませんでした。
考察型ホラーと謳う通り、本作は多くの不確定要素に対して作中で明確な解答を提示せずに終わります。本当に心霊現象が起きたのか?廃団地の住民達は死者なのか生者なのか彼等が言う通り死者と生者が共存しているのか?物語の終盤に史織は刺殺されますが、その後に廃団地の住民達と儀式に参加する描写を経て、ラストは廃団地の一室で目覚めた彼女がそれまでの鬱屈した様子から一転して清々しい様子でベランダに出て朝日を浴びる描写から廃団地全体を映す描写で終わりますが廃団地には史織以外の住民が存在する様子はありません。これらの諸々の要素に対して完全に投げっ放しです。スタイナー兄弟やスティーブ・ウィリアムスをリスペクトしているのかも知れませんが、個人的にはこの投げっ放しぶりは「ミッドサマー」というより初期の「ひぐらしのなく頃に」っぽいなあと感じました。怪異のネタバレがロリ女神というネタバレを初めて見た時に舌打ちしたあのイラつきを思い出しましたこんちくしょう(# ゚Д゚)

ヒロインは癖強いし、謎はそんなわけで全く解明されずに終わりますので賛否は大きく分かれる作品だと思いますが、昨年頃までの所謂Jホラーで終盤になんのカタルシスも無いモンスターバトルが入りなんやかんやで主人公は生き残りハッピーエンドっぽくエンディングに入りますが、最後にどんでん返し的にやっぱり怪異は終わってませんでした!という作品が粗製濫造されたのに毎回毎回映画館でエンディングテロップ観ながら「今回もクソ映画だったよ……」と涙で頬を濡らした身としては、直接的な描写を避け、得体が知れない恐怖を主幹に置いた本作はホラー映画好きなら一見の価値有りな良作だと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?