キングオブコント2021 勝手に考察:「漫才でもできること」「コロナ禍だからこそ我々がコントに求めたこと」

大前提、マヂラブもニューヨークも大好きです。
去年マヂラブがM-1優勝した時は泣いたし、ニューヨークのニューラジオも聞いています。(ニューヨークのコントだとシェアハウスが大好きです)
好き嫌いの話ではなく、「分類するとしたら」という観点で見てもらえればと思います。

松本さんがニューヨークに言った「漫才でもできる」について勝手に考察。
(ちなみに、屋敷さんが「M-1でこのネタやったら100点くれるんですか」といったのはお門違い。松本さんは「漫才でもできる」といっただけで、「漫才でやったほうがおもしろい」とは言っていない)

漫才でもできる、とは、言い換えると、「コントじゃないとできないことがある」ということだ。
今回、くしくもM-1ファイナル歴のあるマヂカルラブリーとニューヨークが下位という結果になった。彼らがやらなかった(やれなかった?)「コントでないとできないこと」とは何なのか。

コントの登場人物の関係は大きく分けると二つに分かれる。
「もともと知り合いである登場人物のとあるシーンに我々観客が途中から参加する」のか「誰かと誰かの出会いに立ち会う」のか、だ。
たまたまかもしれないが、キングオブコント2021の決勝ファーストステージは、10チーム中上記漫才巧者の二組が「もともと知っている二人」でほか8チームが「出会いに立ち会う」スタイルだった(そいつどいつは、知っている二人ではあるもののパックをしている彼女(だと思われる人)に「お前誰?」というスタンスをとるので後者だと判断)。
誰かとの出会い系のコントは多い。
観客は瞬時にその出会いのシーン(研究所とかボトルメールとか迷子センターとか火事場のSMクラブとか)を理解し、メタルモンスターが現れる理由を理解する。
そのうえで、現れたモンスターの性能・能力・特徴・性格を主人公と同じ目線で丁寧に理解をしていく。
その理解が進むことによって、登場人物の関係が変わっていく。
「変な奴が出てきたぞ」で笑わすのではない。変な奴、面白いやつが出てくるのだが、それがどう変なのか、逆に言うとどういとおしいのかが徐々に垣間見え、その「種明かし感」が楽しいのだ。
反対に、マヂカルラブリーとニューヨークが表現したものは、「俺ウェディングプランナーやりたいんだよね」「こっくりさんにかかったことある?」と始める漫才と確かにスタイルは近い。「俺、今から変なことやります」と宣言し、「いーや、そんなことあるかいっ」と突っ込むスタイルだ。
今回のキングオブコントにおいても、屋敷さんも村上さんも、嶋佐さん・野田さんのことを最初から最後まで「変な人」と扱う。その扱いは変わらないまま「変」の種類だけが変わる。大喜利好きの私は感心しつつも笑ってしまったのだが「変な人ショー」だったのかもしれない。
漫才にそういうルールがあるわけではないと思うが、漫才の登場人物は、最初から最後まで同じ関係性であることが多い。時間の問題もあると思うが、上下で始まった立場は上下のままだし、「見下す」「馬鹿にする」「穏やかに否定する」「間違いを指摘する」「ボケあう(笑)」など、立ち位置は違えど、二人の関係は変わらない。
松本さんの代弁なんて大それたことを言うつもりはないが「漫才でもできる」けれど「コントじゃないとできない」ことというのは、こういう「視点の変化」だったのではと思う。そして、私の勝手な考察だと、視点を変えるための一番大事なファクターは、「愛」だ。
時世を現したのか、特に今年は「変な人」に対しての愛情が深いものが多かった。5分のコントを通じ、客席は「変な人」をどんどん好きになった。蛙亭の中野君を筆頭に、ファイナルに進んだ男性ブランコの酒焼けの彼女のことも、ザ・マミィの酒井のおっちゃんも、空気階段の消防士の山崎さんも。
変な人を、「こいつ変な人でしょ」と見せるのではなく、変な人の人となりや人としてのいじらしさを見せ、その機微を描く。
それでいうと、ファーストステージのこの順位は、我々観客が「変な人」を好きになれた順なのかもしれない。
(個人的に、それであればやはり蛙亭が一番手だったこと非常に悔やまれる)
朝礼ネタ的に言うのであれば、「この人はこんな人」と決めつけず、そのいろいろな側面を見ることこそが「愛」なのかな、と。

()内は出番順
1:空気階段(9) 486点
2:ザ・マミィ(8) 476点
3:男性ブランコ(3) 472点
4:ニッポンの社長(5) 463点
5:ジェラードン(2) 462点
6:蛙亭(1) 461点
7:うるとらブギーズ(4) 460点
4:そいつどいつ(6) 456点
8:マヂカルラブリー(10) 455点
9:ニューヨーク(7) 453点

もちろん、「もともと知っている登場人物」でも優勝例はあり、コロチキの卓球とかハナコの私を捕まえてとか、あれはあれでまた別の面白さがあるのですが、それはまた別のお話で。


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