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とんでいったふうせんは〜息子がくれた出会い〜

4歳の息子と2人、幼稚園の施設開放日に入ったカフェルーム。
この日おやつを済ました息子が本棚から「読んで」と持ってきたのは、沢山の風船に鮮やかな色がつけられた表紙の絵本だった。
その風船を持つのは、少年と、お爺さんと、犬。

座敷作りのカフェルームで、私が揃えて伸ばした程よい長さの足の上。
私のお腹を背もたれにして息子はいつもの様に腰掛ける。
私は、両手を伸ばして顔の前に広げてあげた 絵本を読んでゆく。
座ったときの高さには自身があり、まだ息子の頭を邪魔には感じない。

風船は、その一つ一つが僕とお爺さんの思い出らしい。
お爺さんと孫の温かい時間が絵本の中で流れていく。


少し4歳児には難しい気がするけれど、他に興味を移すことなく絵本を見続ける息子。

読み進めるとお爺さんの手から風船の紐がスルスルと抜けて飛んで行く、思い出でがスルスルと。

あぁ、そういう絵本なんだね。

自分との風船を飛ばすお爺さんに苛立ち感情をぶつける僕。
どんなお爺さんでも受け止めてほしいと伝える両親。
僕を孫を見る目では見なくななるお爺さん。
孫の手の中に握られた沢山の風船の紐。

何も珍しくない自然なこととして書かれた時間の経過。

声がかすれてうまく読めなかった気がするけれど。最後まで真剣に聞いていた息子は読み終わった本を本棚に戻し、外に遊びに行こうとせがむ。

その日はいつも通りの休日として過ごしたけれど。こんな素敵な本を愛息から教えてもらって、ただそのままにはしたくないと思った。
そして私の仕事は認知症地域支援推進委員で、来月には市役所1階ロビーを会場に借りたオレンジウィークと言う認知症支援啓発イベントへ関わることも決まっている。

その会場にこの本を置きたい。

イベントは、1人の仕事では無いし来月の事。
決まった展示もあればそもそも本も持っていない。
しかも今日まで私はやる気のあるメンバーの案に同意して、当日の役割をもらってソレをこなせば良いだろうと思っていた程度。

ほぼ無理なのでは?
そうも思ったのだけれど何故か今回はブレーキが掛からなかった。

市の図書館在庫にある本は1冊で予約が数件入っておりイベント期間に借りること出来なそう。

翌日の昼休みに本屋2件を回っても在庫が無いので注文。
問屋に無いからメーカー発注の返事も仕方ない。

そこではたと気づく、そもそも出版社に黙って公に展示しても良いのだろうか?イベントでの曲の使用等は許可制だよね?
イベント会場が会場だけに、思いついた不安は解消すべく出版社である絵本塾出版に電話してお願いをする。

できる限り断られないように。

展示を決めたのだけれど、できるだけ多くの人に見てほしいのでこの本を紹介するポスターをデータでも良いので頂けませんか?と

この聞き方ならポスターを断られても展示する事は出版社に伝えて止められなかったことになるはず。
もう必死。ズボラな私らしくない。

結果は丁寧にご対応頂き3パターンものデータをメールして頂けました。
おかげでそのポスターを使って市役所担当への交渉はスムーズに。

でも緊張するのはイベントを中心で引っ張る認知症地域支援推進委員の女性への提案。
もう、緊張で何を言ったのか思えていない。

それこそ、息子がくれた素晴らしい絵本との出会いから話て。
彼女が手配した花や絵や直筆の言葉などイベント会場には色々なものがあってその一つ一つが誰かの気持ちをイベントに引き込む様に、絵本だから興味を持ってくれる人も100人会場の脇を通れば1人位いると思うとか何とか、話した気がする。

私の緊張を知ってか知らずか即答で、ぜひ飾りましょうと同意してくれました。とても、素敵な良い人です。

ここまで数日掛けてしまったので開催日までもう指折り、でも本屋からの着信が携帯に会ったので安心です。
一応折り返してから取りに行こうと掛けた電話の答えは。
「届いた本に破損が見られたので再度メーカーに発送を依頼しました、重ねてお待たせしてしまう事となり申し訳ありません。」

イベント開催日2020.11.16〜11.20

11.16月曜日。
オレンジのテーマカラーに装飾されたイベント会場の一角に、送ってもらったポスターが貼られ。
その下に置いたテーブルの上には。
沢山の風船に鮮やかな色が付けられた表紙の絵本が置かれました。

私が会場にいた限られた時間の中でも読んでくれる来場者がチラホラ。
これで何かが変わるかは分かりませんが、まだ私の仕事を何だか理解していないであろう息子がくれたこの絵本との出会いを意味のあるものにできた気がします。

「とんでいったふうせんは」
ジェシー・オリベロス 文
ダナ・ウルエコッテ 絵
落合恵子 訳
絵本塾出版

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