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「ガルパンはいいぞ」

「ガルパンはいいぞ」

 ……という身内による凄惨なリンチ死が横行した浅間山荘事件ですが、物語が西住みほの成長に主眼を置く限りにおいてはそのような牧歌的な話で済んだのです。この記事には激しいスポイラーが含まれています。

 西住みほ率いる大洗女子を思い出してみましょう。戦車でドリフト、戦車に戦車を乗せる、戦車を飛ばす、戦車を橋にする……などなどなどなど、敵として戦うにおいて、その発想は狂人のそれであり、「みほは柔軟に事態に対応出来る」などという生易しいものではない戦闘行為の悪魔です。

 あいつら、何をやらかすかわからん。 

 更にはかなり自走的なチームを編成しているというところも厄介です。バレー部(アヒルさんチーム)は作中、あんこうチームの次に奇策をやらかしますし(「要するに根性!」じゃあないんだよ)、歴女チーム(カバさんチーム)は堅実に固める役目を負うことが多いけれど、あのチームとバレー部は全く別の言語を使うので、実のところ、通信手の武部殿が西住みほの作戦意図を超人な翻訳能力を駆使して伝達していることが伺えます。

 史上最古の炎上プロジェクトをご存知ですか? バベルの塔建設計画です。あれは言語が通じなくなったため、頓挫しましたね。

 狂人集団大洗女子と大学選抜が闘う作品。あれは本当に僅差で「砲手と車首がツーカーの息の領域にあった」、「冷泉殿が指示を待たずにアクセルを踏んだ」等、傑出したチーム力において、あの化物のような島田流に(敵陣到着までに何両撃破したっけ?)勝つわけです。

 そして最終章2話。フラッグ戦なのに黒森峰に一機残らずの殲滅をされた知波単高校(まほお姉ちゃん無惨すぎる)を前に西住みほは言うわけです、「散開」。まさに絵に描いたような包囲殲滅。『失敗の本質』を読んでいて胸が悪くなるような日本軍の愚策、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ作戦(これら作戦は餓死者を多く出しております)。その再演を許して良いものか。

 いいえ。知波単高校が単なるコメディ・リリーフであれば、狂人集団大洗女子とぶつけない訳で、どう決着するのかわたしたちはまた1年待たなければならない訳ですが、西絹代隊長は包囲網が完成する前に凛然と告げます、「撤退」。「後方へ前進」ではありません。

 バレー部と何故か馬が合う福田(福田ァ!)、というのが何だか象徴的。

 日本軍の基本姿勢は短期決戦(そのため、兵站、情報というものが疎かであった)、戦闘におけるEthicとは主力艦隊の砲撃戦、陸においては銃剣による突撃であったそうです。英雄の存在を前提とされており、確かに消耗戦を戦ってこなかったロマンティシズムを感じます(戦術的に説明のつかない戦果を挙げる「銀輪部隊」等の例外もあったようですが)。

 知波単高校には、なんとかそこを乗り越えて行って欲しいものです。

なんかくれ 文明とか https://www.amazon.jp/gp/registry/wishlist/Z4F2O05F23WJ